第2章40話:ラッガル視点
<ラッガル視点>
デビルイードの討伐後。
さらに近くで猛威を振るっていた水牛・オブロスを撃破したラッガルは、馬車に乗って帰路に着いていた。
馬車の中では、ラッガルの向かいの席に、兵士長が座っている。
兵士長は告げる。
「いやはや、デビルイードに引き続き、水牛オブロスまでもを退治してしまわれるとは」
兵士長はラッガルの仕事ぶりを賞賛する。
「さすが領主さまから信任の厚い、ルーカー集落の監視長さまですな。ラッガル様の有能さには、私も学ばされます」
「くく。ルーカーを使えばなんてことはない仕事だ」
とラッガルは笑った。
デビルイードはもちろん、水牛オブロスを討伐する際にも、ルーカーをおとりに使ったラッガル。
もちろん、そのルーカーはオブロスに襲われて死んだ。
兵士長は告げる。
「しかし、ルーカーの数も無限ではないでしょう? そう次々と死なせてしまって、大丈夫なのですか?」
「確かにルーカーは消耗品であるし、節約しなければならんな。最近、ルーカーに逃げられたりもしたしな」
「逃げられたのですか? 集落から?」
「いや……集落に向かう途中だ。報告によると、崖から飛び降りて逃亡したらしい」
ロッシュとラミアリスのことである。
兵士長は関心したような声を漏らした。
「なんと。崖から飛び降りるような、豪胆なルーカーもいるのですな」
「集落に送られたらどんな目に遭うか、耳にしていたのだろう。だから、いちかばちか飛び降りによって逃亡を図ったわけだ」
「で……捕まえたのですか?」
「さあな、わからん。衛兵たちに捜索を命じておいたが、捜索結果を聞く前に、俺は集落を出発して、デビルイード討伐の任についたからな」
「そうでしたか。では帰って報告を聞くのが楽しみですな」
「ああ。生け捕りに出来ていた場合は、しっかりルーカーとしての立場をわからせてやらんとな」
ラッガルはあくどい笑みを浮かべる。
彼の頭の中には、ロッシュとラミアリスを徹底的に虐め倒すプランが浮かんでいた。
特にラミアリスは、なかなか美しい女とのことらしいので、ラッガルがみずから調教してやってもいいと思っていた。
(集落に帰るのが楽しみだな。くくく)
とラッガルは腹の底で笑う。
と。
そのときだった。
「ヒヒィィインッ!!!」
と馬がわなないた。
急に馬車が止まる。
そして外が慌ただしくなった。
「て、敵襲だ!」
「盗賊か!?」
「わからん!」
「御者がやられたぞ!?」
と兵士たちが叫んでいる。
「どうやら外が騒がしいようですな。賊にでも襲撃されたのでしょうか」
「そうかもしれんな」
「少し様子を見て来ます」
と兵士長が立ち上がって、馬車を降りた。




