第2章37話:ミノタウロス
<ロッシュ視点>
さて、旅を再開する。
シフォンド森林を抜けて、しばらくゆくと山がある。
山をのぼると、そこには高原が広がっていた。
やや高い標高にある高原――――【リダ高原】である。
やたら岩石がたくさん横たわる、岩の平原でもある。
「ここで弓を回収する」
と俺は目標を告げた。
ラミアリスが聞いてくる。
「どこで手に入るの?」
「弓を持っている魔物がいるんだ」
「ふうん。ゴブリンアーチャーみたいな感じ?」
「そうだな。その魔物を倒して弓を奪う」
さらに俺は注意喚起をするような、真剣な声で伝えた。
「ただし、リダ高原は全体的に魔物のレベルが高い。今の防御力で、魔物から一発でも攻撃を食らったら危険だ。だから一匹ずつ、丁寧に狩っていくぞ」
「わかったわ」
とラミアリスが承知した。
さて、俺たちは高原を歩いていく。
やがて一匹の魔物を発見した。
ターゲットとなる魔物――――ミノタウロスアーチャーである。
中堅モンスターであるミノタウロス。
その弓使いバージョンだ。
身長は2メートル近い巨躯。
茶色い体毛に包まれた、二本足で動く魔物である。
右手に大きな弓を持っており、背中には矢筒を背負っていた。
「あいつだ。ミノタウロスアーチャーだ」
と俺はミノタウロスアーチャーを見つめながら、言った。
「ミ、ミノタウロス……」
とラミアリスが恐れおののいた。
ミノタウロスは強敵であり、並みの冒険者では歯が立たないとされている。
低ランクダンジョンではボスとして出現することもあるような魔物だ。
『序盤のボスが、中盤の雑魚として出てくる』というのはゲームではありがちだが……まさにミノタウロスはそういう魔物だ。
普通に生活していては、まず遭遇することのない強敵である。
「作戦を説明するぞ」
と俺は前置きしてから言った。
「まず、あんたがゴブリンアーチャーの弓を使って、ミノタウロスアーチャーを狙撃しろ」
「え……弓で攻撃するの?」
「そうだ。今の攻撃力ならば、ミノタウロスアーチャーにもダメージが入る。急所に当てれば即殺も可能だろう」
「そ、そうなんだ」
さらに俺は告げる。
「急所に当てて瞬殺してくれてもいいが、別に外してくれても構わない」
「え? 外してもいいの?」
「ああ。少しだけ注意を引いてもらえれば、俺が不意打ちを仕掛けて殺すからな」
むしろ、それが本命である。
ミノタウロスアーチャーを狙撃で瞬殺するのはカンタンではない。
だから、本命は、俺がミノタウロスアーチャーを仕留めることだ。
ラミアリスに陽動を担当してもらって、その隙に、俺がひそかにミノタウロスアーチャーに近づき、殺す。
これが基本的なプランとなる。
「わかった。とりあえずあたしは、ひたすら弓で狙撃すればいいのね」
「ああ」
作戦の確認が終わったので、それぞれの配置につく。




