第1章31話:次の目標
川が流れる場所。
そのすぐそばで、焚き火をする。
新しく倒したホッグイノシシの肉、野菜、キノコなどを焼く。
焼いているあいだに、俺はステ振りをおこなうことにした。
衛兵隊長を倒したことでレベルが1上がったからだ。
ステータスポイントが3ポイント増えている。
(全て攻撃力に振ろう)
俺は得られた3ポイントをすべて攻撃力に投入した。
結果、以下のようなステータスになる。
◆◆◆
名前:ロッシュ
年齢:37歳
適性職:剣士
階級印:第十階級
ユニークスキル:なし
レベル:11
攻撃力:18
防御力:10
敏捷力:9
魔力:5
ステータスポイント:0
装備
ショートソード:攻撃力+7
腕力のリング :攻撃力+5
◆◆◆
レベル11、攻撃力18になった。
(衛兵隊長みたいなボスを倒したら、レベルは一気に3ぐらい上がってもいいところなんだがな)
と俺はひそかに思う。
第十階級であるルーカーは、レベルアップが遅い。
他の階級に比べて、レベルアップに必要な経験値が3倍だからである。
デバフが大きすぎるが、しょうがない。
……ややあって、肉が焼けてきた。
俺たちは夕食を食べ始める。
肉を、食べる。
野草やキノコも、食べる。
木の実やイモも、糖分の補給のために食べる。
フラウも召喚して、食事を食べさせる。
フラウに口は存在しないが、身体の中に取り込んで消化する機能がある。
ゆえに、もきゅもきゅと夕食を食べていた。
「美味いか?」
「ふきゅっ!!」
肯定を示すような返事をするフラウ。
その可愛らしい返事に、俺は和む。
肉も野菜も糖類もある。
栄養は揃っている。
ホッグイノシシの肉は脂身が乗っており、なかなか柔らかいので、美味い。
「悪くない食事だ。酒があったら、なお良かったんだが」
「お酒、好きなの?」
「ああ。ひと仕事したあとの酒は最高だ」
「そうなの。あたしは飲んだことがないからわからないわ」
ラミアリスは成人式を迎えたばかりの18歳。
飲酒をしたことはないだろう。
「それで……これからどうするの?」
ラミアリスが尋ねてきた。
「まず……俺たちは衛兵を返り討ちにした。しばらくは自由だ。まあ、街で暮らすことはできないがな」
ゲームにおいて、ルーカーが負うべき制約――――【ルーカーペナルティ】。
露店の商人が物を売ってくれないとか。
宿屋を利用できないとか。
鍛冶屋で鍛冶の依頼ができないとか。
不動産商会が家を紹介してくれないとか。
いろいろ厳しい制限がついている。
なかでも一番きついのは回復ポーションを店購入できないことだ。
加えてルーカーは回復魔法を使うこともできないので、回復したければ、自然治癒を待つか、ドロップした回復ポーションでやりくりするしかない。
俺は言った。
「いろいろ制限はあれど、俺たちはシフォンド森林を出て、どこにでもいくことができる」
「そうね。……で、あなたはどこにいくつもりなの?」
ラミアリスの問いかけ。
俺は、その質問に答えるように、宣言する。
「俺はこれから、領主邸を襲撃し――――領主を殺す」
「は、はぁ!?」
とラミアリスが素っ頓狂な声を上げた。
衛兵隊長の討伐が終わったあと、次のRTAの目標となるのは『領主の討伐』だ。
正確には。
1:領主を殺す。
2:領主邸から重要アイテムを回収する。
以上の2つの目標を達成することが、最速RTAにおいて重要となる。
俺は言った。
「領主討伐は10日以内を目標にする。遅くても15日以内だ」
「いや……え、ちょっと!? ツッコミどころが多すぎるんだけど!?」
とラミアリスが困惑をあらわにしている。




