第1章3話:状況確認
さて、まずは状況を確認しよう。
俺は幌馬車に乗せられて、移送されている最中だ。
移送先は、ルーカーたちの集落。
街から離れた辺境にある。
現在は集落に向かう途中の山道を走っている。
幌から外をのぞくと、どうやら崖沿いの坂道を登っているところのようだ。
時間は昼である。
馬車の周囲には、俺たちを監視する衛兵たちが歩いている。
「おい、馬車から顔を出すな」
衛兵の一人が、俺に注意してきた。
「すみません」
と俺は謝罪した。
馬車の中に顔を戻す。
(俺はルーカー……か)
ゲームではさまざまなロールプレイが楽しめる。
その中でもルーカーは、最高難易度とされている。
『殺してもいい最下層民』という位置づけであり、どこにいっても迫害されるからだ。
ルーカーは普通にクリアするだけでも難しいし、RTAをやるときも、一番苦労した記憶があった。
ただ、一番やりがいがあった。
効率の良い攻略方法について、ばっちり頭に入っている。
(んで……場所は【シフォンド山】だな)
ルーカーとしてプレイを開始したとき、一番最初のスタート地点がシフォンド山である。
まさに異世界でも、シフォンド山から開始することになったようだ。
「……」
シフォンド山で得られるアイテム。
倒しておきたい敵。
回収しておきたいイベントなどなど。
俺は頭の中でゲーム知識を思い出す。
効率の良い攻略ルートを、脳裏に思い描く。
と。
そのときだった。
「あたしの人生は……まだ終わってない」
すぐ目の前で、声がした。
実は、幌馬車の中で背を預けて座る俺の前には、もう一人の同乗者がいた。
女である。
暗くて見えづらいが、さきほど、容姿は確認した。
身長160センチぐらい。
青髪のツインテール。
瞳の色は緑色。
豊満な胸。
名前はラミアリスと呼ばれていたはずだ。
服はボロを着ている。
「絶対、這い上がってやる……絶対……」
暗闇の中で、三角座りをしながら、ラミアリスはぶつぶつとつぶやいていた。
彼女も、馬車に乗せられたルーカーである。
(同乗者か……)
俺は考える。
(RTAには1人じゃなくて、仲間キャラを加えた2人のほうが攻略しやすかったんだよな)
こいつを仲間に加えてもいいかもしれない。
ルーカーは迫害される民だ。
しかし同じルーカー同士であれば、手を取り合うことができる。
というわけで声をかけることにした。