第1章29話:かまいたち
ルーカーが下っ端の衛兵にすら歯が立たないのは、レベリングが難しいからだ。
通常の人間よりも、レベルアップのために3倍の経験値が必要となる。
そのうえでユニークスキルも使えないのだ。
剣術がよほど得意でもないかぎり、底辺から這い上がることが難しい。
俺もRTA知識がなければ、人生終了していただろうからな。
ヴェルナンが言った。
「俺は、ルーカーごときに負けるわけにはいかない。魔物にやられるならまだしも、ルーカーに負けて殺されるなど……死んだあとも笑いものにされてしまう」
「なんだ、死んだあとの名誉を心配するのか?」
「当たり前だ! お前たちのような、恥知らずの底辺とは違うんだよ!!」
ルーカーだからといって恥知らずとは限らないだろう。
しかし、まあ、過酷な生活を強いられているため、プライドなんて捨てて生きている者のほうが多いだろうが。
「絶対に、お前ごときには破れはしない!」
そう告げた直後、ヴェルナンの雰囲気が変わる。
彼のロングソードに、旋風がまとわりついてくる。
(いよいよ使ってくるか、ユニークスキル!)
ヴェルナンのユニークスキルは【二連かまいたち】だ。
剣を振るうのと同時にかまいたちの斬風を発生させる技。
しかもただのかまいたちではなく、二連続で発生するかまいたち。
一発目を避けても、二発目のかまいたちが飛んでくるのだ。
威力もめちゃくちゃ高いので、完全な初見殺しである。
「死ね! ルーカァアアアアアッ!!」
ヴェルナンがロングソードを振るう。
次の瞬間、ロングソードから一つ目のかまいたちが発生し、高速で俺へと迫ってきた。
だが、俺は右斜め前方に移動しながら回避する。
そして、二つ目のかまいたちが遅れて飛んでくる。
俺はそのかまいたちを、やはり左斜め前方に回避し、同時に、ヴェルナンのふところへと飛び込んだ。
「なっ!?」
二連かまいたちを回避した俺に、驚愕の表情を浮かべるヴェルナン。
そんなヴェルナンの胸に、俺はショートソードを突き刺した。
「がはっ!!?」
肉を突き破った感覚。
俺のショートソードは、ヴェルナンの急所を完全に貫いている。
俺はショートソードをヴェルナンから引き抜く。
するとヴェルナンが膝をついて、力なく座り込んだ。
血を吐きながら、ヴェルナンがつぶやく。
「ありえない……俺が、ルーカーに負けるなど……ッ」
「これが現実だ。死ね」
俺はショートソードを振り上げ――――
振り下ろす。
ヴェルナンの首が両断された。
これで、衛兵の殲滅が完了だ。




