第1章18話:次の標的
森林を素早く移動する。
走る。
走る。
走る。
「ここだ」
到着した。
走ってきたことで、俺とラミアリスは少し息が荒れていた。
深呼吸をして、整える。
「ここで待機する。俺は木の上に昇るから、あんたはそこの茂みに隠れてくれ」
「弓は使わないの?」
「今回は使わない」
俺はそう答える。
今回のターゲットは、女性2人の衛兵だ。
そのうち1人は、遠距離攻撃を一度だけ弾き返すユニークスキル『ロングリフレクト』を持っている。
弓矢で狙撃しても、矢が跳ね返ってきてしまうのだ。
だから近接攻撃で殺すことが重要となる。
「わかったわ。近接だけで戦うのね」
とラミアリスは了解した。
……さて、俺たちは所定の位置にスタンバイする。
俺は樹上に。
ラミアリスは茂みの陰に。
そして10分後。
足音が聞こえてくる。
ターゲットとなる2人の女性衛兵が現れたのだ。
俺は、斧に手を伸ばす。
柄を握って、眼下の女性たちを見つめる。
女性衛兵の1人は銀髪ポニーテールであり、長身であり槍を持っている。
あいつはネームドキャラクターでありアンナという名前だ。
そしてもう1人は、ダガーを持った女性衛兵である。
(ダガーの女が、ロングリフレクトの使い手だ。先に処理しよう)
と、俺は頭の中で、やるべきことを最終確認する。
そのとき女性衛兵2人の話し声が聞こえてくる。
ダガーの女が言った。
「でもさ、ちょっと可哀想だよね。スキルテイカーに襲われた被害者なのに、ルーカー認定されちゃうなんてさ」
……ふむ。
どうやら俺のことを話しているようだ。
するとアンナが告げた。
「ふん。どこが可哀想なのよ。スキルを奪われるような愚図だから悪いのよ。ルーカーに落ちるべくして落ちた人間ってことじゃない」
小馬鹿にするように、アンナは続けて言った。
「私だったら、そんな間抜けと違って、スキルテイカーに襲われても、返り討ちにしてやるわよ」
……ほう。
俺を間抜け呼ばわりか。
面白い。
思い知らせてやる必要がありそうだ。
俺は斧を持って、樹上から飛び降りた。
ダガーの女衛兵に向かって、斧を振り下ろす。
「がっ!!?」
斧が女衛兵の頭蓋にめりこんだ。
よし。
先手は決まった。
一人撃沈だ。
残るは、アンナのみである。




