第1章14話:別視点2
「男のルーカー、名前なんだったかしら?」
と、そのとき銀髪ポニーテールの女性衛兵が言った。
彼女の名前はアンナである。
身長は189センチ。
瞳の色は緑色。
長い槍を持っている。
衛兵隊長が答えた。
「ロッシュだ」
「ロッシュ……ね。あたし、そいつに鼻面をぶん殴られてるのよね。ほら、あの崖の上であいつらが暴れたときにさ」
ロッシュは、衛兵を何人か殴りつけてから崖を飛び降りていった。
殴られたうちの一人がアンナであった。
「ルーカーごときがあたしを殴るなんて、絶対に許さない。ロッシュを見つけたら、絶対ボコボコにしてやる。ただ殺すだけじゃなく、痛めつけてから殺してやる」
あのとき殴られたことを、アンナは強く根に持っていた。
ルーカーという格下の存在にやられたことが、なおさら腹立たしいと感じていた。
深いいきどおりをあらわにしている。
そのとき男性衛兵の一人が疑問を口にした。
「でも、そのルーカー2人は本当にまだ生きているんですか?」
クレオンが同調する。
「そうだぜ。むしろ、ルーカーたちがとっくに野垂れ死んでる可能性のほうが高いよな。山や森に入ったら死ぬ理由なんていくらでもあるからな。獣に食われたとか、魔物に殺られたとか」
「そもそも、崖から飛び降りておいて、本当に生きてるのかという問題もあるわね」
と女性衛兵の一人が応じた。
衛兵隊長が告げる。
「下に川があっただろ。崖を飛び降りたあと、あそこに着水したなら、死んでないはずだ」
するとクレオンが言う。
「ははは。川に落ちただけでも死んでるかもしれねえぜ? なんたってルーカーはヤワだからよぉ。俺も以前、ルーカーをほんの2、3発殴っただけで死んじまったぐらいだからなぁ」
クレオンは、ルーカーを迫害することに、何らためらいのない性格をしていた。
衛兵隊長が提案した。
「捜索をするんだから、ルーカーたちが生きている前提で行動するさ。……とりあえず12名を班分けする。二人組、もしくは三人組の班を5つ作ろう」
二人組の班を3つ。
三人組の班を2つ。
計5つの班に、12人の衛兵を分けた。
「では、捜索を開始しよう。見つけたら、なるべく生け捕りにするように」
「「「「――――――了解!」」」」
かくして、12人の衛兵がシフォンド森林へと足を踏み入れる。




