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無能力だからと追放されたオッサン、ゲーム知識で全ての敵をねじ伏せる  作者: てるゆーぬ


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第1章12話:スライム

翌日。


早朝。


まだのぼらないうちから、俺たちは起床する。


素早すばやく朝食を食べてから、出発を開始した。


森を歩く。


ひんやりとした土を踏みしめる。


衛兵との戦闘場所せんとうばしょへと向かう。


衛兵と戦う前に、行っておきたい場所が2つあった。


1つは【クラゲいし小遺跡こいせき】だ。


シフォンド森林の隠れたところにある小さな遺跡である。


大きな崖の裏にひっそりと存在するので、普通の探索ではまず気づかない。


しかし俺はRTA知識があるので、迷わず、小遺跡の場所にたどりつくことができる。


「こんな場所に遺跡が……」


とラミアリスが驚いていた。


さらにラミアリスが尋ねてくる。


「ここで何が手に入るの?」


「まあ見ていろ」


俺はそう告げてから、遺跡の中央にある石碑せきひに近づいた。


その石碑の前には、魔法文字まほうもじが刻まれた石が置かれている。


召喚石しょうかんせきだ。


この石によって、モンスターを召喚することができる。


俺はその石を手に取り、魔力を送り込む。


すると召喚石が赤く光りかがやいた。


次の瞬間。


俺の足元に一匹のスライムが出現した。


桜色さくらいろをした、美しい色合いろあいのスライムだ。


このスライムは、いつでも召喚石を使って召喚することができる。


いわばテイムした状態なのである。


「ふきゅ!」


とスライムがキュートな声を発する。


「わぁ……可愛い!」


とラミアリスが顔を紅潮こうちょうさせながら、スライムを見つめた。


たしかに可愛いスライムだ。


だから連れ歩いているだけでも楽しいんだよな。


俺はスライムには、スミスという名前をつけている。


だから言った。


「まずは名前をつけてやろう。お前の名前はスミス―――――」


そこで俺は口をつぐむ。


今回は、ゲームではなく、生きた本物のスライムだ。


だったらゲームと同じ名前にするのは良くないかもしれない。


こいつだけの名前を与えてやるべきだと思った。


「そうだな……お前の名前はフラウだ」


直感的に思いついた名前を命名めいめいする。


「ふきゅきゅ!!」


とスライム――――フラウは嬉しそうに飛び跳ねた。


「これからよろしくな、フラウ」


「ふきゅっ!!」


ぴょんぴょんとフラウが跳ねる。


挨拶あいさつが済んだので、いったん召喚石の中にフラウを戻すことにした。


召喚石に魔力を送り込むことで、フラウが戻っていく。


「……で? なんでスライムをテイムしたの?」


とラミアリスが聞いてきた。


そういえばまだ説明していなかったな。


「フラウは鍛冶かじスライムなんだ」


と俺は答える。


「鍛冶スライム?」


「ああ。武器強化ぶききょうかやアイテム調合ちょうごうなどをおこなってくれるスライムだ」


「へえ! 便利なスライムなのね! あ、じゃあ衛兵と戦うための装備を、このスライムに鍛えてもらうってこと?」


「そのつもりだ。衛兵を倒すには、一定レベルの攻撃力が必要だからな」


衛兵だけではない。


鍛冶スライムは、RTAにおいて最後まで役に立つ。


なぜならルーカーは、鍛冶屋かじやを利用できないからだ。


いわゆるルーカーペナルティと呼ばれるもので、『ルーカーは街の施設を利用できない』という制約を課せられている。


鍛冶屋も、利用できない施設の一つだ。


だからこそ俺たちには、鍛冶スライムが必要なのだ。


ちなみに鍛冶スライムもレベリングすれば戦力になるので、今後フラウの育成もしっかりおこなっていくつもりである。





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