第1章11話:たきび
俺は言った。
「刃物と火打石が手に入ったし、これで水と食料が集められるな」
「どうするの? あたし、こういう野山でサバイバルした経験はほとんどないから、よくわかんないわよ」
「そこは任せろ」
そう告げてから、移動を開始する。
とりあえずシフォンド森林で集められる食材を集めることにした。
森には、
野草。
山菜。
キノコなどが生えている。
どれが食べられて、食べられないのかは、俺には判別できる。
だからどんどん採取していく。
……途中。
竹が生えている場所を発見する。
俺は斧で竹を切断した。
「竹は、こんなふうに中が空洞になっていてな。水を入れたら水筒として使える」
「へえ……そういえば竹の水筒を使っている人も、見たことがあるわ」
「一般的には、水袋を使うことが多いからな」
異世界では革の水袋を水筒として使うことが普通だ。
竹筒を使った水筒はあまり一般的ではない。
「ちょっと短剣を貸してくれ」
「どうぞ」
俺は短剣の先端を竹筒に押し当て、ぐりぐりとえぐり、穴を空ける。
その穴に、ツルを通した。
「こんなふうに穴をあけて、硬いツルを通せば、紐がわりにできる。これで携帯も可能だな」
俺は自分の水筒を腰のベルトに提げた。
異世界では大工をやっていたこともあり、こういうDIYみたいな作業は得意であった。
最後にラミアリスのぶんも作って、手渡す。
ラミアリスはお礼を言ってきた。
「ありがとう。あなた、本当に頼りになるわね。一人で逃げていたら、こんなことには気づけなかっただろうし……あなたがいてくれて、本当に良かったわ」
「そうか。ほんの数時間前には、『いつかあなたをぶっ飛ばしてやる!』とか息巻いてたのに、もう気が変わったのか?」
「あ、あれはしょうがないでしょうが! もう、なによ! せっかく褒めてあげたのに、ひねくれた返事をして!」
ぷんすか怒るラミアリスに、俺は微笑みを浮かべるのだった。
そのあと。
食料も確保する。
この森にはホーンラビットがいるので、狩猟した。
こちらには武器があるので楽勝だった。
夜。
焚き火を囲んで食事をする。
竹の水筒には水を入れ、焚き火のそばに置いて沸騰させる。
二人でホーンラビットの肉を焼いて食べる。
ホーンラビットは鶏肉みたいな味であり、やわらかくて美味しい。
低ランク帯の魔物としては、倒しやすく、味も良いので人気である。
俺は、ホーンラビットの肉を食べながら告げた。
「明日は衛兵どもと戦うことになる」
「……!」
「やつらは俺たちを追って、この森に入っている。数は12人だ。基本は、盗賊を倒したときと同じような、待ち伏せと不意打ちで仕留める。細かいプランとしては――――」
俺は細かい説明をおこなう。
ゲーム知識もふんだんに混ぜて、作戦を伝える。
「わかった。あなたの言うことに従うわ」
「いいのか?」
「ここまで、あなたの言うとおりにしてて上手くいってるもの。ツッコミたい部分もないわけではないけどね。結果がともなうなら文句ないわよ」
「ありがとう。俺を信じるなら、かならず勝たせてやる」
「ふふ。大した自信家ね」
とラミアリスは笑った。
食事を終える。
焚き火を消す。
そして俺たちは、寝番を交代でおこないながら、就寝するのだった。




