各々の思考と魔狐のナシェル
真生は寝室のベッドへ横になり自分の傍でみているライゼアに何かされないかと不安になりながら眠りにつき……。
ここはかつて前魔王が使っていた寝室だ。この部屋のベッドの上には真生が居て仮眠をしている。
ベッドの脇にはライゼアが椅子に座って真生の顔をみていた。
そしてベッドに寝ている真生は瞼を閉じ色々と考えている。
(ライゼアが俺をみている。何もしないよな? まあ……それは、それで問題ないか。
それよりも、これから大丈夫なのか? ここまでは、なんとか乗りきれた。他のヤツらを信じさせないと)
そう考えているうちに真生は眠ってしまった。
真生の寝顔をみながらライゼアは、ウットリしている。
(マオウ様が覚醒されたら今の姿から変わってしまうの? もしそうなら覚醒などしなくても。
ですが、それではマオウ様のためにもなりません。それに今すぐ覚醒する訳でもないですよねえ)
そう考えながらライゼアは何時の間にか真生の隣で寄り添うように横になっていた。
(こうしているだけならいいよね? 何もしないようにしよう……嫌われたくないもの)
そう思いながら真生の腕に顔を押し付け目を閉じる。
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ここは寝室がある通路側の扉の前だ。
腕を組みダランカルは瞼を閉じて周囲の気配を探っている。
(ここへは流石に用もねえのにこねえか。だが用心はしねえと。まあ……どのみち魔王さまの復活を知らせねえとな。
でも今は、ユックリと休んでからだ。今の姿だと、オレのように疑うヤツも出てくるだろう。
そうなると、また魔王さまが力を使わなきゃならねえ。そのためには体力を回復しておく必要がある)
そう思考を巡らせていた。
「……!?」
何者かを感知したダランカルは瞼を開き険しい表情で通路の両端をみる。
「ダランカル、ここで何をしておるのじゃ」
目の前に突如あらわれた狐のような魔族にダランカルは驚き仰け反る。
この狐のような魔族は魔狐という種族でナシェル・コンキ。幼い狐の獣人のようで可愛い容姿だ。
「ナシェル、か。相変わらず姿を消しながら出歩いてんだな」
「ダランカル、ウチが人見知りなのを知ってたはずじゃ」
「ああ、そういえば……そうだったな」
そう言いダランカルは苦笑する。
「それより……さっきも聞いたけど、ここで何しておるのじゃ?」
そう問われダランカルは、ありのまま話した方がいいのかと考えた。
(ナシェルは魔族の中でも真面だ……まあ話しても問題ないか)
そう思いダランカルはナシェルに、さっき起きたことと魔王が復活したと説明した。
「魔王さまが復活!? それも異世界で人間として……覚醒するために、この世界に転移してきた。これは一大事なのじゃ! 早く皆に教えねば」
「待て! 言ったと思うが魔王さまは疲れて仮眠中だ。下手に起こせば怒られかねねえぞ」
「そうじゃった。うむ……今すぐにでも逢ってみたいのう」
ガッカリしナシェルは俯いている。
「このあと、なんも用がねえなら……寝室で起きるまで待ってたらいいんじゃねえのか。ただ中にはライゼアもいる」
「ライゼア……怖いのじゃ」
「まあ……魔王さまが能力で性格を変えたから大丈夫だと思うぞ」
そう言われるもナシェルは今までライゼルに散々怒られていたため不安で躊躇っていた。
「それが本当なら大丈夫じゃ……信じてもよいのじゃな?」
そう問われダランカルは、コクッと頷き真剣な表情でナシェルを見据える。
それを確認するとナシェルは、ゴクリと唾をのみ込み扉を開け部屋の中に入った。その後、扉を閉める。
「行ったか……まあ何もしなきゃ大丈夫だよな」
そう思いダランカルは再び目を閉じ周囲の気配を探っていたのだった。
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