アルラセナの塔★第一階層《物色と寿命》
真生はスキルを使い片付けを終えるが……。
目の前に散乱していた物は元の位置に戻り片付いた。
だが、それでもホコリや蜘蛛の巣などは綺麗に除去できていないようだ。
「やっぱり片付けだけじゃ綺麗にならない」
「そうですわね。ですが、あとは塔に居る者たちに任せて上にまいりましょう」
「そうだな……」
そう言いながら真生は階段の方へ視線を向ける。
「只、階段が壊れてるんだよなぁ」
「これわざとよ」
「もしかしてアルラセナがやったのか?」
そう問われポメルは、コクッと頷いた。
「確か侵入者避けとか言ってましたわ」
「そういう事か……それだけ誰も近づけたくないという訳だな」
二階へ視線を向けると真生は、フゥーっと一息だけ吐く。
「最上階まで行くのですよね?」
「ああ、そこにアルラセナが居るからな」
「それなら各階ごとに罠が仕掛けられてますわ。それをクリアしなければアルラセナ様の所には辿り着けません」
そう言いポメルは眉をハの字にし心配に思い真生をみつめる。
「罠のことは聞いている。だが階段の破損は聞いてなかったからな」
「そうでしょうねえ。この塔に居る者以外は知らないはずですもの」
「なるほど……ここだけ、あとから破壊したってことか?」
コクッと頷きポメルは真生をみつめた。
「なんで壊したんだ? 侵入者を寄せ付けないためだけなら各階に仕掛けられた罠だけで十分じゃないのか?」
「念には念をらしいわよ」
「それだけ自分の所に誰も近づけたくないってことか」
そこまでするアルラセナのことを真生は不思議に思い余計に逢いたいと思い始める。
「そうでしょうねえ。みんなから魔王になることを反対されたのですもの」
「それって全ての者にか?」
「そうよ。だからみんなに認めてもらうため強くなるべく塔に籠って修行しているのですわ」
それを聞き真生は、なるほどと納得した。
「ダランカルから、ある程度は聞いてたが……みんなからか。それじゃ、かなりツラかっただろうな」
「ええ……ですが、ツラいと云うよりも……かなり怒っていたわね」
「……アルラセナは気が強い者のようだな」
綺麗な声、歌が上手、用心深い、気が強い……どんな女性なのかと真生は余計に気になってくる。
「気が強いというよりも……只単に意地を張っているだけよ」
「それでも気が強いのにはかわりない」
「まあ……そうね。それはそうと階段をどうするつもりなの?」
そう問われ真生は階段があっただろう方を向き下から上をみた。
「壊れている物を修理するスキルがあればいいんだが……流石に無理か……」
「物を組み立てては、どうかしら?」
「ここにあるものでか?」
そう真生が問いかけるとポメルは、コクッと頷き周囲を見回す。
「ここには、こんなにも物があるのですもの。何か使える物があると思うけど」
「そうだな……色々試してみるか」
そう言い真生は周囲に置いてある物をみて歩いた。
先ずは階段の近くに置いてある壊れた食器棚。先程は床に倒れていたが元の位置に戻っている。
流石に壊れている部分は元に戻っていないらしい。
「食器棚か……なんで、こんな所にあるんだ? それに……テーブルや椅子まであるぞ」
「ここって以前は、みんなでお茶会などしていた場所なのよね。ああ~……ここでデートをしていたことを思い出すわ~」
「以前……これだけ汚れて壊れているってことは相当、昔なんだろうな」
どれだけの年月、掃除も何もしなかったのかと真生は思うも考えがおよばずに悩むのをやめる。
「そうねえ……ワタクシが生きていた頃なので約一千年以上前だと思いますわ」
「そんなにかぁ。まあ……人間よりも寿命が長いから、その一千年も長くないんだろうな」
「その通りね。そうかぁ……今の魔王さまは、まだ覚醒していない人間なので寿命が短いのよね」
そう言われ真生は、ハァーと息を漏らしポメルから目線を逸らした。
「覚醒すれば……寿命が延びるのか? それも分からないんだよな? 調べたけど……何も分からなかった」
「確か……アルラセナ様が読んでいた本には書いてあったはずよ。人間から覚醒した魔王は寿命が延びるって」
「それが本当なら……覚醒を急いだ方がいいな。だが……その方法をみつける前に先ずは、アルラセナの所に行かないとか」
天井を見上げると真生は、キッと睨みつける。
「それをするのに先ずは、ここにある物で階段をつくらなきゃな」
そう言うと再び使えそうな物を探し始めた。
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