8 ドロップアイテム
炎の結界のおかげかしばらくはモンスターに出会わず、何も得られなかったが移動を続けるとちらほらとその影が現れ始める。今日始めて瑠華が会敵したのはゴブリンジェネラルとゴブリン達の群れだった。
二十七階層のボスであった個体とは違い、体の大きさは一回り小さくなってはいるがそれでも身長はおよそ二メートルを超え、物騒な剣を握り締めている。
ボスで出会ったモンスターが階層が低くなると通常のモンスターとして現れるのはよくあることだ。しかし瑠華がパーティーで挑戦したときの二十七階層のボスがそのすぐ下の二十九階で出会うというのは他の探索者たちにとっては悪夢でしかない。
その階層のボスであれば、殆どの場合は単体との戦闘となりボスだけに集中することができる。だがただのモンスターとなってしまうと、集団のモンスターの一員となったり、背後に別のモンスターが現れていないか、増援が現れないかを考える必要が出てきてしまう。その個体だけに集中できないのだ。
事実、今瑠華の目の前でゴブリンジェネラルがゴブリンたちと行動をともにしている。たかがゴブリンといえど、数が増えれば脅威となり、かつここにゴブリンたちは知恵を持っている。油断できるモンスターではない。
「あの亜種個体ほどではないが、通常のゴブリンジェネラルも相当の力を持つ。俺が前回パーティーで探索を行った際は、タンク役がゴブリンジェネラルを引き付けその間に俺がゴブリンを炎で即殲滅、一体多に持ち込むというやり方が通例だった。」
<ゴブリンジェネラルが率いているように見える>
<前にも見たけどこれまずいな、規模が大きくなれば人との戦争と変わらなくなるぞ>
<モンスターの群れ>
<ソロで倒せるのか>
<ダン省はちゃんと対策してんのかな>
「広範囲に攻撃できる探索者ならソロだろうがやることは変わらないぞ。奇襲をかけて取り巻きのゴブリンを魔法で殲滅、同時にゴブリンジェネラルとやりあう。」
<これが地上に出てきたら終わりだわ>
<日本でおきたスタンピードって規模の小さいやつだけだけ大丈夫でしょ>
<まず広範囲に攻撃できる探索者はほとんどいないんですが>
<魔法最強>
宣言どおり瑠華は高火力の炎で油断しているゴブリンたちに奇襲をかけ、ほとんどのゴブリンが煙となってい消えていく傍らゴブリンジェネラルに突撃する。ボスになるほどの強力なモンスターとあって、周囲が炎に包まれようと味方であろうゴブリンが焼死体になろうと動揺すること無く、突撃してくる瑠華に反応し迎撃の体制をとる。
幾度か切り結びつつ、ゴブリンジェネラルの体制が崩れたところを狙ってその体に傷をつけていく。初めは左腕、ついで右腕。痛みで剣の振りが鈍り、大きく体勢が崩れたら両太ももを狙い、更に動きを鈍らせる。ゴブリンジェネラルの全身から出血し、血が足りなくなり片膝をついたところで瑠華の剣がその首を飛ばす。
そうしてゴブリンジェネラルも煙となり消えていった。残ったのははじめの炎で死にきらなかったゴブリンが数体のみで、すぐに煙と消えた。
「ゴブリンジェネラルだけなら動きを鈍らせてから首を跳ねるのが一番早い。モンスターと言えど、痛覚があり流血もする。二十七階でもそうだったが、心臓を貫いても死なないが首を飛ばせば大抵死ぬ。」
<体格差すごいのになんで剣受け止めきれるんだ>
<いつのまにか満身創痍になってた>
<出血を狙うんだ>
<『王子』って見た目によらず戦い方蛮族タイプだよね>
「それよりも、良い宝飾品がないか探すぞ。ゴブリン系モンスターが宝石を落とすことがあるのは知っているが、良し悪しはよくわからない。良さそうなのがあれば教えろ。」
<『王子』って顔だけだしな>
<結構言葉も荒いし>
<それがいいんだろ>
<おk>
<ただの宝石よりも能力付きのほうが高いのは知ってる>
<昨日のドロップ品にもなんかあったんじゃね>
モンスターたちのドロップ品を確認しながら収納袋に放り込んでいく。殆どが皮や武器で目当てのものではなかったが、拾っていくうちに宝石が数個、アクセサリーが一つ見つかった。瑠華はダンジョンドローンに見せるように宝石らを持ち上げる。
「どうだ?」
<あれだけ倒してこんだけしか落ちないんだ>
<でかい方ではあるけど、能力付きはなさそう?>
<ネックレスの方は装飾すごいな>
<これは落ちてる方。むしろ雑にしまってたやつもそれなりに良いやつ>
<画面越しだけど、能力付きはなさそうだね>
「そう簡単にはドロップしないか。次だな。」
持ち上げていた宝石らがただの宝石だとわかり、収納袋にしまうと視線を背後に向ける。まだ姿は見えないが、そちらの方向にモンスターが居ることを察知して歩き出した。




