表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

~1~

面白い話ではないと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願いします。


「ティアナ。本当にすまないと思っている。でも、彼女を愛してしまったんだ。

 この想いを知ってしまったら、君を妃に迎えることはとてもできない。君との婚約を解消させてくれ」



(ああ、やっと。やっとだわ)



ベルツ王国の王子である、クリストファー・ベルツがたった今、婚約者であるスプリング侯爵家のティアナに婚約解消を告げた。

場所は王宮内の庭園。女王主催の茶会が行われている最中の出来事。


「クリストファー殿下、このような場所でお戯れはおよしください」


2人の幼馴染でもあるグレイ公爵家嫡男のアシュトンが、咄嗟に二人の間に割って入る。


「戯れなどではないよ、アシュトン。君だって僕の気持ちに気が付いているはずだ。

 もう自分の気持ちを偽ることなど出来ない。ローズを手放すことなんて、もう無理なんだ。苦しいんだよ」


クリストファーの横には今代の聖女であるローズがいた。ローズの肩に手をかけ、守るように自分に引き寄せる。クリストファーに肩を抱かれ、俯き今にも泣き出さんばかりの顔をするローズ。


「それにしたってこのような場所で。大勢の前でさらし者にする権利は君にだってないだろう?」

アシュトンがクリストファーのそばにより、耳元でささやく。


「彼女の……ティアナの為だ。僕が全ての罪を被ればいいんだろう? それなら……」


 クリストファーは顔をゆがめ、固く手を握りしめた。

もう何を言ってもダメなのかと、アシュトンは説得することを諦めた。


「だったら、俺がティアを連れ去る。婚約解消するんだから文句ないだろう?」


なにを?といった顔で驚き目を見開くクリストファーを尻目に、アシュトンはティアナの手を取ると庭園を後にしようと足を踏み出した。



「何やら穏やかではない会話が聞こえるけれど、なにごとかしら?」


今日の茶会の主催者である女王が歩を進め、四人の前に現れる。


「母上、お騒がせして申し訳ありません。勝手ながらたった今、婚約者であるティアナ嬢に婚約の解消を申し渡したところです」


「婚約を解消? 突然何を言い出すかと思えば。あなたはいつからそんなに偉くなったの? 王家と侯爵家との婚姻を、あなたの一存で解消などできるわけがないと何故わからないのです。それほどまでにあなたは愚か者だったのかしら?」


「母上それは……。しかしながら、私はここにいる聖女ローズを愛してしまったんです。もうティアナを愛することはできません。私の横にいるのはローズ以外考えられないんです」


女王は扇子で口元を隠しつつ、はぁーと小さく息を漏らした。


「それにしてもです。だからと言って婚約者に対し、このような衆人の前で恥をかかせるなど、あってはならないと何故わからないのです?」


「母上、しかし!」


「もうよい。あなたたちはすぐに下がりなさい。改めて場を設けます、後で話し合いましょう」


「はい……」


女王はそれだけを言うと茶会に戻って行った。

クリストファーはローズを庇うように肩を抱いたまま、

「ティアナ、僕の気持ちは変わらない。婚約の継続は無理だと理解してほしい」

そう言い残し、ローズとともに去って行った。


たった今婚約解消を告げられたティアナは、クリストファー達の背中を見つめながらゆっくりと息を吐いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ