2話 不破さん
キラーからもらった白い封筒の中には地図が入っており地図のある場所には赤いマークだけが記されていた。
少年はその地図を頼りに進みある扉の前にたどり着いていた。
少年の名は真道進、ヒーローに憧れる少年。少し気弱で臆病な所があるが正義感が強く間違ったことは何があってもしない。
そんな彼であるが、青年に襲われているところを救ってくれた凶悪犯罪者ジャステイスキラーの言葉に感銘を受け強い恐怖を感じたものの地図に記されていた場所に向かう決心をした。
周りには見たところ何もなく強いて言うなら他の建物の裏口だけがあり、そんな人目のつかない場所に建物は存在していた。目の前の扉もおそらく表口ではなく裏口の方だろう。
そして、進は強くその扉を叩いた。
何秒かの間の後、扉がギーッと軋む音をたてゆっくり開き中からひとりの青年が出てきた。
髪の毛は白く顔立ちは少し眠そうでそれでいて無気力な感じで進を見つめていた。
歳はおそらく高校生くらいだろう。
「…あの…その」
「…お前名前は?なんでここがわかった?」
急な青年の問いかけに進はすぐに答えられずただ黙って俯くことしかできなかった。
「そうか、迷子かここは入り組んでるからなお前みたいに迷い込んでくるやつは結構いるんだ。仕方ないから案内してやるよついてこい」
そう言うと、青年は歩き出した。
「気をつけろよ。ここら辺は物騒なんだお前みたいなガキのくるところじゃ...」
青年は後ろを振り返った。しかし、そこには扉の前から一歩も動いてない進の姿があった。
青年は急いで進の方に駆け寄る。
「おいおい、なんでついてこないんだよ」
「..すむ、しんどーすすむ」
「え?」
進は小さい声でそう言うと、キラーからもらった封筒を青年に渡した。
青年はすぐに全てを悟った。
そして、表情を少し曇らせた。
「お前がか?」
青年は、先ほどとは違い鋭い目つきで進を見つめた。
「あの人が認めても俺はお前を認めない。俺たちは遊びでこんな事やっているんじゃない!お前みたいな甘ちゃんが見てて一番むかつく。わかったらとっとと帰ってくれ!いいな!」
バンッ
強く扉は閉まり進はひとり扉の前に立ち尽くすしかなかったのだ。
殺しとくべきだったか?この場所をあのガキがヒーロー達にチンコロしたら一発でアウトだ。いや、でも、あの人がよこしたんだからその辺は大丈夫だろう。まぁ、仮にそうなりゃすぐ逃げて雲隠れすれば問題ないか。あのガキの事は後であの人に伝えておこう
それから一週間が過ぎた。その日、外は久々に大雨が降り注いでいた。
そんなある日、青年の頭にふと進の顔がよぎった。
まさかな
青年は裏口に向かい、扉を開ける。
ギー
「まじかよ」
驚くことに、青年の目の前には手足はやせ細り中の骨は、はっきり見え今にも死にそうになっている進の姿が大雨の中にあったのだ。
「お前、馬鹿か!まさかあれからずっとここにいたのか!」
青年は進を抱き抱え建物の中に入った。
冷たい。完全に体が冷え切ってるこいつ一週間飲まず食わずでいたのか。なんでそこまで。
建物の中はカーテンやブラインドで覆われ外からは完全に見えないように遮断されていた。
青年は中に置いてあったソファーに進を座らせタオルで包んだ。そして、冷蔵庫から三つのおにぎりを取り出し進に与えた。
青年はそばにあった椅子に腰をかける。
「食えるか?」
グゥー
進の腹が返事をする。
進は出されたおにぎりを手に取り口に放り込む。
それを皮切りに食べるスピードは上がりすぐに目の前からおにぎりは消えた。
「お前、両親はいないのか」
口の中の食べ物を完全に飲み込んだあと進は答えた。
「…うん、5年前の事件で死んじゃった。」
「そうか、…なぁその事件なんだけどよ「でもヒーローが助けてくれたんだ。人々をあの惨劇から救ってくれた本当にカッコよかったんだ!だから僕もセイバーズのようなカッコいいヒーローになりたいんだ!」
進は満面の笑みを浮かべ語った。
「そうか」
だが、それとは対照的に青年の表情はとても暗く心は強く締め付けられていた。
「でも、じゃあなんでここに来たんだ?お前も知ってると思うがキラーさんは何人もヒーローを殺している犯罪者だぞお前の求めるヒーローと程遠いと思わないか。」
数秒間を置いた後、進はこたえる。
「助けてくれたんだ。僕がお金を取られそうになっている所をキラーは助けてくれたんだ。最初は怖かったけどキラーは優しく僕の頭を撫でてくれた。そして思ったんだあんな人が無意味に人を殺すはずがないって。キラーが言ってた言葉の真意は分からないけど、ここに来れば本物のヒーローになれる気がしたんだ!」
進は先ほどまでのオドオドした口調と違い声を大にしハキハキと語った。
スッ
それを聞いていた青年は突然立ち上がり進を見下ろした。
「俺の名前は不破秋人。進、俺がお前を本物のヒーローにしてやる!お前の体調が回復したら早速特訓だ。覚悟はいいな」
「うん!」
進の真のヒーローとしての第一歩は今この瞬間踏み出されたのである。