1話 出会い
「父さんと母さんが残してくれた大事なお金なんだ」
街の路地裏一人の幼い少年は若い三人の青年からお金を恐喝されていた。しかし、人一倍正義感が強かった少年はそれに屈することなく抵抗し続けた。がさすがに青年三人の容赦のない暴力に耐えきれるはずもなく少年の意識はだんだんと薄らいでいくのであった。
しかし、突如少年に光明が差した。
なんと赤いマントをつけたヒーローが少年の目先およそ50メートル、建物と建物の間を通り過ぎようとしていたのだ。
青年達はヒーローに背を向けていてその姿は少年にしか見えていない状況だった。
そして、少年は最後の力を振り絞り叫んだ。
「たすけてぇヒーロー!!」
少年の声に気づいたヒーローはすぐさまこちらに視線を向けた。
よかっ…えっ?
安心したのは束の間少年と明らかに目があったはずのヒーローはすぐさま正面を向き少年を無視し通り過ぎていこうとしていのだ。
「まって...」
そして、ヒーローは完全に視界から消えていった。
ヒーローになることを夢見ていた少年にとってこの光景は絶望的だった。
それは少年の思うヒーロー像と大きくかけ離れていた行動だったからである。
なんでたすけてくれないんだよぉ!
ヒーローだろぉがぁ!
その時だった
バシッ バシッ バシッ
謎の音が少年の耳に響いた。
足元に視線を落とすとそこには先程まで少年からお金を恐喝していた三人の青年が腹を抱きながら倒れてこんでいた。
なんで?
と同時に
少年は真横に人の気配を感じ、そちらに視線を向けた。
ゾクっ
そしてまた少年は絶望する。
そこには、ヒーローを何人も殺し今もなお指名手配されている凶悪犯罪者『ジャスティス・キラー』が立っていたのだ。
少年は一言も声を発せずにいた。
そんな少年にキラーがゆっくり歩み寄る。
そして、
少年の正面に立ったキラーは少年の頭に右手を振り下ろした。
殺される!死を覚悟した少年は目を強く瞑った。
ポンッ
「大丈夫だったか坊主」
えっ?
謎の声が少年の耳に響く、そして恐る恐る目を開ける。
するとそこには
優しく少年の頭を撫で、笑いかけるキラーの姿があった。
呆気にとられた少年はまたも声が出せずにいた。
あの凶悪犯が優しく笑いかけている。
それは不敵な笑みとかではなくただ優しく温かい心が穏やかになる程の笑顔であった。まさに少年の求める人を救う理想のヒーロー像であった。
少年は小さくうなづく。
「そうか」
返答を聞くとキラーは立ち上がり少年に背を向け言った。
「目に見えているものが全て正しいと思うな、疑え、そして真実の正義を見つけだせ」
と、
再びキラーは少年の方を向き直し少年に歩み寄り白い封筒を渡した。
「もし迷ったらここに行ってみろ」
その後、キラーは建物の壁を蹴って空へと消えていったのだった。