第2次オペレーションオレンジエンジェル
ノリで書いた反省はしていない。執筆意欲が沸いた
翌朝、芽衣は作戦に取り掛かった。いつもの様に六花の布団に近づき、起床を促すため揺らす。
「りっちゃん!起きるのです!」
「う〜ん…メイちゃんが愛してるとか言ってくれたら起きる気がする…」
芽衣は迷わず六花の唇へキスをすると、
「ずっと愛してるのです。りっちゃん」
と一言言い、唇を舐める。
六花はその後飛び起き、呼気のアルコールの有無を確認するも感知せず、戸惑っていた。先輩2人も本当に知らないようで、さらに戸惑うが、気を取り直し3人は朝食の席に着いた。
「メイちゃんの為にこの世で2番目に好きなプリンを用意しておいたよ」
「あら、良かったじゃない?」
「六花もやめなよ〜…芽衣ちゃんいじめるの」
その発言に芽衣は少し笑い、六花の方を向き、両手で頬杖をついて、
「よく分かってるのです。確かに私の2番目に好きな物なのです」
そういうと六花に向けてニコリと笑った。
それを見た3人は隅の方で
「明らかに様子がおかしいわね…」
「う〜ん…好き好きオーラがすごいというかぁ…」
「昨日本当に何もしてないんですよね…?!」
芽衣が目に見えてしょんぼりとし始めたので3人は急いで食席についた。涼花にアドバイスされたのは、【茶化したり、ふざけて言ってきた事に本気で返して…あと、考えたことを気にせず言って…】とだけである。
「りっちゃん?何か私には聞かせられないお話でもあるのです?私はそんなに信用を失っちゃったのです…?」
そう言いながら目を潤ませる芽衣を3人は宥め、いつもと芽衣の様子が違う気がしたからどうするか相談しただけだと伝える。すると「なら、私はいつも通りなのです!元気なのです」と微笑み、食事を進める。
「そうは言うけどやっぱり違う気がする…」
「いつも通りのりっちゃんが好きな私なのですよ?」
「「うーん…」」
日穂と小梅はそれぞれ能力込で調査するも異常は見られず、何かあったことは確かでも原因を突き止められなかった。演技も嘘も感情を押し殺す様子も無し。自然体で接しているようだった。
「今日一日予定無いからメイちゃん何処か行かない?」
「フフッ、りっちゃんとデート楽しみなのです」
「あー…基地内の施設にはなるけどね…」
動揺を隠そうとした六花に芽衣は「エスコートは頼むのです。りっちゃん」と言うと、六花は少し固まるが了承しキッチンに向かう。それを先輩2人は訝しそうに見ていた。
ヒッカム空軍基地 メインストリート
「さて何処行こうか、メイちゃん」
「どこでもりっちゃんがいれば楽しいのです。強いて言えば小物とかが欲しいのです」
そういうと芽衣は六花に手を差し伸べる。
「今日は人も少ないし繋がなくていいと思うけど、繋ぐの好きなの?」
「好きなのです。りっちゃんが隣にいてくれるのを実感するのです」
六花は固まり、芽衣は気にせずに六花の指と指の間に隙間を作り、そこに自身の指を差し込む。
「ねぇりっちゃん」
「え?何?」
「こんな事で幸せだなって感じるなんて魔法みたい…なのです」
恋人繋ぎで繋いだ手を持ち上げて、芽衣は微笑みを浮かべて呟いた。
「どうしてかなぁ?りっちゃん」
「っ!…あ〜!可愛いなぁ!」
「当たり前なのです」
「……」
上機嫌な芽衣を後目に六花はこの夢のような時間を色々な意味で堪能していた。今日のメイちゃんは3割増しで可愛く、目が合うといつもと違い、ニコリと笑う。繋いだ手からは小さな脈が触れ、そのリズムは心地良い。手から全身に回る幸福はきっとメイちゃんが送り込んでいると錯覚する程に強くなってゆく。六花はさらに強く夢を意識するのであった。そして夢なら良いかと芽衣の頬をつつく。くすぐったそうに目を細めた芽衣から手を離そうとするとその手を掴まれる。
「もう少し…お願い」
「……?」
要望通り撫でていると、芽衣からしゃがむ様に言われる。とりあえずしゃがむと芽衣も同じ様に六花の頬をつつく。しかしこちらはいきなり顔を掴むと唇にキスをする。驚いて目をつぶると次は左の首に鋭い痛みが走った。
「これでよし!なのです」
首に手を伸ばすと仄かに血が付いていたが、特に以上は無かった。芽衣はポケットミラーを取り出すと六花に首筋を見せる。そこには治っていない小さな傷があり、芽衣の口には少量の血液が付いていた。
「りっちゃんの細胞が私の遺伝子情報に反応するなら出来ると思ったのです。特別なマーキングなのですよ♪」
朝から戸惑う六花に対し、平然と振る舞う芽衣。そんな朝からの違和感を六花は夢だと仮定し、楽しむ事にした。そのまま抱きしめると
「メイちゃんにようやくこの思いが伝わったんだ!」
「何言ってるのです…前から伝わってはいたのです」
呆れた様な声だが優しく芽衣が答える。そして
「言葉にして改めて言うのです。ずーっとりっちゃんの横は私のモノなのです。覚悟してね?」
そういう芽衣は何か振り切れたような笑顔だった。
小物類が並ぶ購買部のモールに2人が着くと、周りはかなりざわついた。あの芽衣ちゃんから可視化しそうな程の幸せオーラが出ていたからだった。恋人繋ぎをし、六花を見つめ、目が合うと微笑む。
「このコーヒーカップ可愛いのです!」
いつもは周りはお前が一番可愛いよと言いたいのを我慢できず小声で言う位なのが、今日は違った。
「りっちゃんにはこちらをあげるのです」
「なにこれ?ピアス?」
六花がブレゼントされたのはマグネットピアスだった。衣装としてピンクで5枚の花弁が大きく広がった花が採用されており。芽衣はこれを自分につけて欲しいとマグネットピアスを差し出す。それは雪の結晶を模していた。よく分からないがメイちゃんがつけろと言うならとつけた六花だが、とあるスナイパー達は気がついた。
「サツキの花に雪ねぇ…」
「日穂さん、雪の結晶って別名【六花】なんて呼ぶらしいじゃん?」
「「芽衣ちゃんらしいアプローチ…」」
「首筋にキスマーク…よね?」
「襟で見えずらいけどよく見るとある位置につけたみたいだねえ」
「「やっぱり芽衣ちゃんらしい」」
「髪につけてるあのバレッタに何か花がついてない?」
「…芽衣ちゃんらしくないおまじないだね」
「買いたいものは買えたのですー!」
「それなら良かった」
芽衣は六花の耳元を見て微笑むと、自分の耳たぶを触る。ピアスがあることを確認するように、大事に触る。六花の耳に光るサツキの花を目を細めて満足そうに眺めては繰り返す。
時間もあるからと芽衣が粘り、2人は海岸線沿いの公園へと歩いて行った。
「よく分からないけど楽しそうでなによりだよ」
「…涼花ちゃんには感謝なのです…」
「なんか言った?」
「別にー?」
鼻歌交じりに歩く芽衣を見て、六花は幸せだった。そうこれが夢であることを除いて。勿論現実だがそれまでの芽衣の言動は余りにも可愛い過ぎた。そうこうしていると公園に着く。利用者が少ない公園だが、ファン曰く芽衣のお気に入りスポットだった。
「今日は楽しかったのです。終わりたくないくらいに」
「ボクもだよ」
「りっちゃん」
「何?」
「こっち来て」
そういうと六花の手を掴み、涼花と芽衣に因縁のある鐘に連れていく。
「恋人の鐘?」
「私の黒歴史の鐘なのです」
でもそれも今日で終わりにするのです。そう伝えると芽衣は鐘を鳴らし、キスをする。
「…嬉しいよ」
芽衣から前にされた時は芽衣は自己催眠状態だった。これはそれの記憶から来る夢でそれも終わりか…と六花が思って戻ろうとしていると、
「…待って!」
「?」
芽衣は涼花の服の裾を掴んで止める。俯いて呼吸も少し荒い。そして絞り出すように言葉を紡ぐ。
「りっちゃん、好きなのです。姉妹としてでなく…女の子として…恋人として…。変なのは分かってるのです。でも…もう無理なのです。笑顔を見た時の喜びも、私以外のと仲良くしている時の怒りも、会えない寂しさも、触れ合っている時の心地良さも…我慢出来ないのです…。駄目なのにもっとりっちゃんに愛されたくなってしまったから…。……NOなら振りほどいて欲しいのです…。そうしたら…」
私は元の可愛い妹に戻るのです。
最後を固い笑顔で何でもないように言うと、手に何かを握って差し出す。それは今日一日つけていたバレッタだった。4枚の先だけピンクの花がついており、芽衣ちゃんは少し祈ると、
「私と同じ気持ちだったとしたらこれを受け取って欲しいな」
「改めて言うね、りっちゃんを愛してます!…お願い」
六花は芽衣の手を服から外す。
そしてバレッタを手に取り、芽衣を抱きしめる。芽衣は目を丸くした後、安心したようにその場に崩れ落ちる。慌てて芽衣を受け止めた六花はそのまま走って病院へ向かおうとする。しかし、
「六花ちゃん…、私の話を聞いてほしい…」
「涼花ちゃん?どうしてここに?今急いでてごめん」
涼花はその様子を見て微笑んでから
「安心して…ただ気を失っているだけだよ…?その様子なら成功かな…」
芽衣を六花から受け取り、ベンチに寝かすと六花を横に呼ぶ。
「今日の芽衣ちゃんはどうだった…?ドキドキした…?」
「それはもう、暫くは幸せかもこんな夢なら」
涼花はそれを聞いて大笑いする。ギョッとする六花に笑いが収まらない様に
「もー!現実だからね…?あれもこれも芽衣ちゃんも現実の事だよ…!なーんで夢だと…フフフ!ネタバラシするね…?」
それから六花に涼花が相談に来た芽衣に喝をいれ、アドバイスをし、今日はずっと後ろから見ていたことを伝える。そしてあのバレッタの事も。
「ハナミズキ?…全く…芽衣ちゃんは六花ちゃんが言うように随分と強欲なんだね…?」
「ハナミズキの何が悪いの?涼花ちゃん」
「ハナミズキの花言葉は【私の想いを受け止めてください】…。随分な娘に好かれたね…」
「はぁ、ということは?」
「おめでとう…最愛の妹が最愛の彼女になった…のかな?」
そうこうしていると芽衣が目を覚まして、涼花を発見して潤んだ目を大きく開く。
「涼花ちゃん!私…!私!」
「うんうん…」
一通り泣いた芽衣は六花の方を向くが、すぐ顔を反らせてしまう。
「やっぱり少しイタズラしたのがダメだった!?」
「やっ…その…りっちゃんの顔を見たら…」
芽衣は両頬に手を添えて、俯きつつ微かに見える赤い顔を隠して
だってぇ…りっちゃんの顔を見たら色々込み上げてきて…このまましんじゃいそうな位幸せになっちゃった…
「「うっ!!」」
作戦(事後)報告
作戦名 オペレーションオレンジエンジェル
作戦内容 黒井芽衣氏による攻撃にて黒井六花に動揺を起こさせる。黒井六花を総司令官令嬢黒井芽衣の伴侶とすべく令嬢のアプローチを助ける。
参加隊員 黒井日向 空軍部司令補佐 二階堂涼花隊員
結果報告 成功(以下加筆)よーやくあのすごいモヤモヤする距離感が解消したよー。早くくっ付いて欲しかったんだよねー。
以降追記 前よりも積極的になり、好意を隠さなくなったため大変甘ったるい空間が屯所内に広がり、ファンクラブは大歓喜しました。
黒井則道司令部総司令官殿宛
俺はどうすれば良いと?司令部総司令官室から声がした。