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騒乱の双子 日の出の木漏れ日

短いです。思ってた以上に短い

「今回のお仕事先もダメでしたかー…本格的にどうしましょうかねー」


唯華はトボトボと居候先の友人の家に俯き戻っていた。友人には就職活動以外はうちで働いてくれるなら仕事が決まるまでいいとは言われているが、申し訳ない気がして急いで探しているが軒並み不採用である。


「やっぱり傷痍軍人は駄目かなぁ」


唯華は元諜報課所属の反乱分子等の調査や排除を行う部隊だったが、訓練中に転落した他隊員を庇い下敷きになった影響で右足に軽い麻痺が発生してしまい、歩行は可能だが走ると右足が出にくく傷痍軍人として除隊となったのであった。


そんな落ち込む唯華の前に何か大きなものが置かれていた。長さ170cm程ある何かが道の真ん中を塞ぐ。よく見るとそれは30代の男性であり、唯華は急いで救助に向かった。


「お兄さん、大丈夫?」


酔っ払いか急病人かは分からないが取り敢えず声をかけると、起き上がらせて近くのベンチに座らせることにした。


「すまない、助かったよ。仕事がやっと終わったから帰ろうとしたら突然睡魔に襲われてね。君がいなきゃ今頃どうなってたか」


そういう彼は謝礼だといい、それなりの大金を唯花に渡そうとする。唯華は断り、彼はそうかいとしまうと


「君はなんでこんな時間にここにいたんだい?遊ぶならあっちの方だと思うけど…」


そういう彼は歓楽街を指を指す。唯華は実は…と彼女の近況を話し出す。


「なるほどね、ならうちでメイドとして働かないかい?これでもそれなりに稼いでてね。ただ少し前からその日のうちに帰れなくなってて…良ければでいいんだ、こんな行き倒れのおっさんに言われてもって話だがね」


「いいんですかぁ!わーいこれで生きていけるぅー」


「君の方が行き倒れみたいなもんだったね…」



唯華は彼から貰った名刺を元に家を尋ねると、


「すごいおおきくなぁい?本当にここかなぁ?」


彼の家…如月家は中々の広さをしており、ここを1人で掃除するのは一苦労だろうと思えるような二階建ての建物だった。


「おじゃましまーす…誰かいますかー」


如月さんより知り合いがいるから鍵は空いてるとは言われたが、返事はなく静まり返っていた。取り敢えず靴を脱ぎ、家に上がると


「君が例のメイドさん?」


後ろから声がした。現役時代のくせで振り向きつつ腰元に手を伸ばすがそこに拳銃は無い。相手は笑いながら


「陸軍部上がりの子なんだ、なら警備面も安心だね。こんにちは、僕は黒井六花。如月さんの個人的な知り合いだよ」


「はじめまして!土産田唯華と申します!今日からよろしくお願いいたします!」


相手にどことなく既視感があるも、部隊時代に写真でも見たのだろうと思い、相手に挨拶をする。


「ここに住んでいるの如月さんと息子の慎太郎君しかいないから待機の時はいつも掃除に来てるんだよね」


「待機ということはレジスタンス所属ですか?」


「多分同年代だから敬語使わないでいいよー。そうそう、レジスタンス所属なんだけどそんなに忙しくないからね」


レジスタンス所属だが忙しくないということは後方要員なのかなと唯華は考えつつ、促されるままに家の中に入る。


数時間後


「…私今日は何をすればいいのかなぁ」


「今日はこの家の散歩と慎太郎君との顔合わせかな?慎太郎君意外と人見知りするからもしかしたら会話してくれないかもしれないけど」


今日やった事と言えば六花と一緒に夕飯の準備をし、泊まり込みの部屋を教えてもらい、荷物を片付けた位である。


「そういえば唯華ちゃん今いくつ?」


「19かな?」


「年上なの!?17とかかと思ってた!唯華さんって呼んだ方がいいですか?」


「ちょっとーやめてよー」


2人でワイワイやってると玄関が開き、ただいまという声がした。六花につつかれ玄関に向かうと少年が立っていた。


「おかえりなさいませ、慎太郎様。新しく入ったメイドの土産田唯華です」


「あっ…えっ…ただいま…です」


唯華の顔を見た少年は顔を赤くして固まった後、恥ずかしそうに目をそらすと小さく呟いた。そのまま居間まで向かい、道中ニヤつく六花にローキックを食らわせるとテレビをつけた。


「あれあれ〜照れ隠し〜?」


「うるさい!六花お姉ちゃんは帰れよ!」


「…慎太郎、紳士たれ。だよ?」


「…わかってるよ」



小声で何かを話す六花達を見ていると、六花から帰るとの旨があり、再びの人見知りするから優しく見守っていてあげてとのお願いが聞かされる。それに対して首を縦に振ると、六花はニコッとして玄関から出てゆく。


「ぁの…ゆいか…さん?」


「なんでしょうか?慎太郎様」


「…しく」


「はい!よろしくお願いいたしますね?」


唯華はよろしくと言われたので返しただけだったが、慎太郎は顔を赤くして部屋に戻ってしまった。


「慣れて貰わなくちゃなー」


唯華はのほほんと夕飯の仕上げに入ることとした。


1週間後


「慎太郎様ーご飯ですよー。降りてきてくださーい」


その声に大急ぎで降りてくる様子の慎太郎に唯華はあらあらと微笑むと


「ご飯は逃げませんよぉー」


と茶化す。


「当たり前じゃん…のご飯だから…だよ」


「失礼しちゃいますね!私料理上手なんですからねぇ〜!逃げ出すような料理なんてできません!」


「…そういう意味じゃない…かん」


「私鈍感じゃないですー!部隊では1番感がいいと言われましたー」


居間に走る慎太郎に唯華はのほほんと気を許してくれているのかな?と穏やかに微笑みつつ思ってた。これなら慎太郎との関係も悪くならないだろうと。耳はいいのに鈍感なのは兵学校以来であった。


「ご馳走様でした」


「お口にあったようで何よりです」


慎太郎が食べ終わり、何故か唯華も慎太郎から一緒に食べるよう言われ、食べたところで慎太郎が口を開く。


「いつもの味とは違ったけど美味しかった。唯華、隠し味になにか入れたのか?」


「なんだと思います?」


「うーん、…だといいな…」


「もちろん美味しくなれと愛情はこもってるでしょうけど今回はソースに醤油が入ってるんです」


「そう、なんだ…」


1週間経てばだんだん慎太郎の素が出てきて唯華とも仲良くなり、初日や2日目のように自室に引きこもらなくなっていた。


「そうだ、唯華足りないものとかないか?父さんから一緒に買い物を付き合ってあげてくれと言われてるんだ」


「確かにシャンプーとか欲しいかもしれないです」


「明日大丈夫か?」


「はい!大丈夫ですよぉ」


「良かった……誘えた」


「確かにデートみたいですねぇ」


唯華はまたいつも通り顔を真っ赤にした慎太郎背を見送るのであった。でも今回は慎太郎がくるりと振り向き、


「あと6年ここを辞めるなよ!絶対だぞ!」


「当たり前ですよぉ、慎太郎様の子供の代までお世話するのが目標ですからー」


傍から見ればイチャついているようだが、唯華からしたらそんなに美味しかったのかしらあのハンバーグと思うだけであった。



「って言うことが最近あってぇー」


「ユイちゃん相変わらず…」


今日は待ち合わせの時にたまたま出会った、これまた待ち合わせ中の友人と話していた。


「相変わらずのニブニブで安心した…」


「なんで鈍感ってみんな言うのぉ?だって慎太郎くんは恥ずかしがって時々小声になるからそれを聞き取ってるだけじゃん」


「慎太郎くんが可哀想…」


そんなところに慎太郎が息を切らして走ってきた。年相応に大人しめの唯華が選んだ服装に黒のサイドバックを身につけている。慎太郎は唯華の隣にいる女性にペコリと会釈をすると


「うちの唯華がお世話になりました」


と言う。それに対して彼女は


「唯華をよろしくお願い…。鈍感で天然だけど可愛い子だから…」


「身をもって知っています」


「フフッ…恋っていいね…お互い」


2人が意気投合してる間に彼女の待ち人が来て2人は別れる。慎太郎の後ろにはむくれた唯華が立っていた。


「女の子待たせて他の子とお話に夢中ですかぁ?」


「ちっ、違うんだ!ただ唯華のことで盛り上がっただけで!」


「鈍感だと慎太郎様も思いますかー?」


「…せっかくだしすぐそこのカフェに行かないか?唯華甘いもの好きだろ?」


「あー誤魔化したー」


「うるさい!行くぞ!」


しょうがないですね〜と唯華が差し出された手を繋ぎ向かう途中、慎太郎がブツブツ呟く。それに対して唯華は


「慎太郎様もそういうスィーツ専門店みたいなところが好きなんですね〜」


と言うと


「やっぱ唯華のそういうところは嫌いだ」


「うぇぇ!どこに怒られる要素があったんですかー!」


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