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つかの間の休暇 合流

投稿を忘れてたわけではないんです。決して2か月前にはできてたなんてことは

オアフ島 ヒッカム航空基地 居住区


44分隊帰還3時間前


「ようやく荷物をまとめてきたのはいいけれど…。本当にここで合っているのでしょうか」


亜希が家財道具を詰めたキャリーバックを片手につぶやく。前にあるのは将官用邸宅を超す大邸宅であり、自分たちが住むにはいささか広すぎるのではと感じるくらいであった。新規に1階部分に部屋を足したようで屋内の渡り廊下の先に離れが用意されていた。


「旅館みたい…」


冬華はクマのぬいぐるみを抱き、小さなリュックサックを背に感想を言う。


「六花が住んでいるところで合っているそうだけど。凄いわね」


そんな3人組の前にいつのまにか着物姿の少女が日傘を手に立っていた。日傘を閉じ、下から亜希の顔を覗き込むように上目遣いで口を開いた。


「おやおや、そなたらが日向の言う新しい家族とやらかの?待ってたのじゃ、ほら早く上がるとよい。茶と菓子を用意してある」


3人は幾分場違いのような少女に驚きつつも、玄関に向かい中に入ることとした。



「ねぇお母さん、なかなか変わった妹ができそうね」


小声で遥が言うと離れているはずの少女が笑い出す。


「これは失敬!私は五月家…いや黒井家か、それの一応は3女を務めている黒井椿というものじゃ。そこのご婦人もこのなりについて気にする必要はない。これでも家事や雑事はお手の物じゃ。ここの住人の中では唯一の戦闘は出来ないものじゃがな」


「顔に出ていましたか。つい仕事柄」


椿は首を横に振ると、頭の上を指さす。


「心の声というやつが見えるからの」



「美味しい…」


冬華がお茶と羊羹を急いでほおばりながらつぶやく。椿は柔らかな笑みを浮かべつつ諭す。


「茶と羊羹に足はついとらん、ゆっくりと食べるとよい」


「砂糖なんて高級なものを使ってまでおもてなしいただけるなんて…」


「確かに!ここまでして貰うのは申し訳ないんだけど」


椿ははっとして、申し訳なさそうにする。


「そうじゃった…いやの、皆俸禄が多いからの~ここでも砂糖が高級だなぞ知らなかったのじゃ。気を遣わせて申し訳ないの」


椿は少し渋い顔で続ける。 


「この家で1人いるのにも慣れてはきたが、少々寂しいものがあっての。つい興が乗って張り切ってしもうたのじゃ」


2人も申し訳のなさよりも少女がシュンとしていることを何とかしなければと考え、話題を変える。


「椿ちゃんは今いくつなのかしら?」


亜希が聞くと「150から数えてはないのじゃ。この体も黄泉がえりに近いものじゃしな」と答える。


「えぇっ!もしかして…「物の怪の類ではないわ!強いて言えばそうじゃの、魂が入った別人じゃの。まぁ…深く考えると彼奴らに対してさらに疑問がわくぞ。12歳のいたいけな少女だと思ってほしいのじゃ」


「キャツラ…あぁ、彼女らか。そういうことは六花も訳ありなんでしょ」


遥が冬華の髪をなでながら返すと「話が速くて助かるのじゃ」とだけ言う。


「しかし、にぎやかになるじゃろうな…。まぁ良い、血はつながらなくともこの家ではみな姉妹。よろしく頼むぞ姉上殿、母上殿」


「遥でいいわ」


「左様か」




「うむ、帰ってきたようじゃな。顔合わせと行くぞ」


4人で玄関まで行くと5人の少女が扉を開けたところだった。


「六花!」「…お母さん」


「ヒナちゃん…!」 「とーかちゃん!やったね!」


「相変わらず可愛い!!」「放してほしいのです~!」


「うちらどうする?」


「風呂に行くわよ。ついてらっしゃい」


「ほいほ~い」



「さて、黒井家定例会議するわよ。ちなみに横の麻袋は気にしなくでもいいわ」


「一応うちの父なんだけど」


麻袋から首のみを出す則道をわきに会議が始まる。年長組二人と亜希・遥がテーブルに向かい合って座る。他は引っ越し作業を手伝っていた。


「状況を整理すると団長の実の家族ということね?」


「えぇ、生きているとは知らなかったですが」


「この通りピンピンしてるけどね~」


にわかには信じられないという顔で亜希が答える。それに茶々を入れつつ南が間宮の横に座り羊羹を食べる。


「それでお母さんについてきたら豪邸に住むことになって、砂糖が入ったものでおもてなしされて、おまけに管理人は百歳以上なんて聞けば夢かと思うものだと考えるけど…」


「残念ながら本物の現実よ。これでもこの島一の富豪だとは考えてるわ。まぁ5人合わせての収入を1本化しての話だけど」


間宮が「その分危険な目には合ってるけど…」と呟き、南は六花ちゃん様様だと笑いながら爪楊枝を羊羹にさす。


「まぁ…お二人にも幾らかいただくとは思いますが大した金額ではないかと思うわ。なんせヒナちゃんがほぼほぼ税金含め払っているのよ」


「どのくらいでしょうか?あまり高いと…」


亜希の心配そうな声に南は笑って答える。


「食費ぐらい?とは言っても二人にお小遣い握らせてくる悪い小学生がいるので多分タダですけど」


「あぁ…あのおぞましい金額の入金か」


遥が渋い顔で答える。本人からしたら悪気はないのだが渡される方からしたら恐ろしいものである。


「亜希さんにはこの家の管理を椿ちゃんと一緒にお願いするわね。遥ちゃんには病院で引き続きお願いね。冬華ちゃんにはヒナちゃんと仲良くするという使命を果たしてもらうわ」


離れの方からは冬華と日向がきゃいきゃいとはしゃぐ声が聞こえる。如何やら部屋が完成したらしい。


「しかし、芽衣ちゃんはうちの病院勤務みたいだけどどこにいるのかなぁ?ナースステーションでも見ないし」


「明日あたり外科のフロアとか入院病棟あたりをうろついていると思うわよ?きっと受け入れ病床の確保のために」


「どうせ『間違えて足生やしてしまったのです!』とか言って如月さんの胃に穴が開くんじゃないかな」


ポカンとする二人に間宮が説明する。


「芽衣ちゃんは即死以外何でも治療出来る能力者だから外傷はもちろん外科的治療が必要な場合や長期の投薬治療が必要なものまで1秒ほどで治療してしまうのよ。一回中央病院に入院患者をいなくならせたこともあるのよ」


「それなら医師のいる必要って…」


「その代わり治療分瘦せるわよ。あったのは足が生えたはいいものの筋肉量も骨密度もがた落ちだったそうで。だからこそあまり多用はできないってとこね」


「まぁ亜希さんの腰痛くらいならいいんじゃない?おーい芽衣ちゃん!」


南が呼ぶと芽衣がひょっこりと顔を出す。そして亜希の身体と遥の身体をじっと見ると亜希の腰をさする。その後遥の背中に触ると一言言う。


「重いものを持つときは気をつけてください?あまり無理すると癖になるのです」


「あら本当に!痛くなくなって来たわ!」


「どういたしましてなのです。遥ちゃんもぜんそくが治ってよかったのです」


「なんでそれを?」


遥が驚きつつ返答すると、芽衣は


「さっき診察させてもらったのです。ついでに治療も」


遥がはっとしていると、「だからと言って張り切るのもよくないのです。運動はほどほどにするのですよ」と部屋を出る。


「問題はあれを末期癌の患者にもやることなのよね」


とある時


『あぁ…何で僕がすべての回診をしないといけないのかなぁ…』


『如月先生、現在は前線に医師が派遣されているので仕方ないですよ』


そんな時、奥の部屋から大きな声が聞こえた。


『しまったのです~!!』


『どうしたんだい芽衣ちゃ…ん?』


そこには末期癌で数日持てばといったところの延命治療中の患者が元気そうに朝ご飯をかきこむ姿があった。



「中央病院七不思議のうち5つの原因は分かりました。しかし、」


「何故戦場に?」と遥が問うと2人は片手で頭を抱えてため息をつく。


「…だからよ」


「なんですって?」


「なんだかんだ言ってシスコンだからよ」


「私たちの中で一番強欲なお願いをした子だからねぇ」


その時廊下の奥より声が聞こえる。


「日穂~!小梅~!六花がおねむになった3人を運ぶ間だけも手伝ってくれ~」


4人は苦笑いを浮かべて離れに向かうのであった。


ななるはやで頑張ります

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