茨城攻略戦 基地攻略
TRPGシナリオを作るのにはまって遅れました。許しは請わぬ
茨城県 百里飛行場跡から数キロのビルの上
眼前には数多くの巨大なアリ塚や集結したと思われるアイクが大きな群れを作り上げていた。その数は5000を軽く超えて10000にも届こうとしていた。これを見た5人は作戦会議をその場で始めることにした。
「先ずはあれの数を減らしたいわね。南!見つからないように狙撃は可能?」
「できなくはないけど弾が足りないよぉ…。補給を要請したら気付かれるだろうし。寧ろ六花ちゃんが暴れてくればいいと思うんだけど」
南は伏せながら肩をすくめて答える。六花も少し思うところがある様に考え込む。
「大太刀とショットガンでは全てを処理できませんし、少々腕とかが持っていかれます。コガネムシ型に掛かりきりになっている隙にスプラッター映像が出来上がりです」
六花もあの数には厳しいところがあった。これまでは小笠原諸島などでも全体で1000匹いるかいないかだったのがその10倍近くいることになる。流石に砲弾の一つや二つ欲しいところだが、今あるのは迫撃砲弾のみである。トレーラーを探っても使えるのは艦対空ミサイル一セルだけで乱立するアリ塚には心許ない。
「手詰まりね…どうしようかしら「空爆は?」え?」
日向が平然と言う。もちろん航空支援なんてない。ハワイのオアフ島から飛ばすには空母でも持ってこないと不可能だからだ.
「どこに航空機があるのぉ?」
南が聞くと日向がおもむろに大事そうなアタッシュケースを取り出す。中には一台の携帯無線端末があり、それを取り出して通話を始めた。
『こちら空軍部司令部長官神無月。用件を聞こう』
「神無月のおにーちゃん?私だよぉ?お願いがあって連絡したの」
『日向ちゃんっ!?なんか御用かなぁ…?』
「第46戦闘航空団を派遣してほしいの。座標は現在全軍参加で進行中の作戦【24号作戦】の第一目標の~。百里飛行場に対して近接航空攻撃を要請しまーす。合言葉は【断ったら…わかるね?】頼んだよ~」
『ひっ!?分かった!分かったよ!今繋ぐ!』
暫くしてやる気のないような中年男性の声が聞こえる。
『あ~?こちら鹿島前線基地飛行場。第46戦闘航空団だ。うちらに何の用だ司令官殿?』
「残念ながら私だよ!今から百里飛行場に近接航空攻撃を行ってもらうから。さっさと用意してなるべく早めに来てね!」
『りょーかい。姫様のためならやるしかねぇな。…おめぇら聞いたろ!ケツ上げてさっさと準備しあがれ!オラァ!棚橋!おめぇは愛機にしこたま爆弾積んどけ。姫様に均したピクニック場所を用意するぞ!補給は心配すんな!姫様が司令官殿を絞ってひりだしてくれる』
「これでいいかな?」
因みに4人ともドン引きである。文面はお願いとか言っていたが『断ったら…わかるね?』だの姫様とか言ってるヤバそうなおっさんだのに対しての軽い対応だのに対してである。
「第46戦闘航空団って…?何かしら」
呟く間宮に日向が元気に答える。
「第46戦闘航空団は私こと、『黒井日向名誉空軍大佐』の直属の部隊で、全員がなんかをやらかしていたり、性格に難があるとかで追い出されたパイロット達で構成された元懲罰部隊だよ!少し教育したら従順になったからもらったんだ~!」
そんな回答を聞いてか、無線機からため息交じりの男性の声が聞こえる。
『勘弁してほしいぜ…。俺らを生身でよくわからん手法と挙動のドックファイトで叩き落した後、機体性能ギリギリの動きを要求されてコックピットに追いつき次第に臭いモン入れてくるのは少し教育なのか?はぁ…』
「無駄口たたいてる暇あったらさっさと来る!いい!?」
『へーい。あと数分で向かう。待ってな』
そう言うと無線は切れてしまった。間宮がその場に立ち尽していると、南がクイクイと服の裾を引っ張った。
「私、狙撃姿勢に入るからスポットよろしく~」
そう言うと南が銃をバックパックの上に乗せて安定させてから伏射姿勢になり、スコープのピントを合わせた。間宮はため息交じりに頭を掻き、南の横で双眼鏡を覗いた。
「アリ塚は20か所、まぁ…空爆での破壊を期待できるのは5個もあればいい方でしょうね」
その発言に頬を膨らませた日向は間宮の背中をポスポスたたきつつも、自分の呼んだ部隊の到着と着弾を知らせる。
「10機、2個飛行隊が東側から接近、着弾まで5,4,3,2,1、着弾!…you kill it!20か所がキャンプファイアーだね!」
「意味が分からないわ…。全機2つを爆撃して帰っていったわね」
啞然とした顔の間宮と南の横で、日向はガッツポーズをしながら騒いでいた。
「これで大分片付いたんじゃないかしら?ねぇ六花ちゃ…。足が速いこと…」
「お姉ちゃんなら小梅お姉ちゃんがその姿勢の時には走ってたよ?」
「南狙撃支援入りまーす」
炎上する飛行場ではもう既にアリ型が宙を舞っており、大方のアイクは吹き飛ばされていた。南は辛うじて生き延びたコガネムシ型を狙撃することにした。こちらを向いている個体を間宮が見つけて南が撃つという連携は確実にコガネムシ型を絶命させていく。
一方そのころ、六花は次から次へと斬り捨てていた。攻撃隊の航空攻撃に乗じて中に入り込み、混乱しているうちに面倒なカマキリ型はかなり減らして残り100匹を切っていた。アリ型は爆風や爆発でかなりの数が吹き飛んでいて、いたのであろうハサミムシ型も絶命して地面に横たわっている。コガネムシ型は殆ど被害がなさそうだが北を向いた個体が尾部から体液を噴き出して崩れ落ちる。それを確認してから六花は数が多いコガネムシ型に近寄る。
「師匠から教わったけど使えるのかな?」
六花はコガネムシ型の横に回り込み、掌底で殴る。コガネムシ型は2秒ほど止まると気門から体液を噴き出して絶命する。
「…使うの控えよう」
六花は大太刀を再度取り出してコガネムシ型の前翅の隙間に深く刺し、ぐりぐりとすると抜く。その体液まみれの大太刀を横に向けて振ってどす黒い液体を払った。蜂の羽音のような音と共に聞こえてくる金属板がこすれる音に振り向くと日向の戦車がコガネムシ型に行軍間射撃を行いながら同軸機銃と上についたタレットになっている機関銃でアリ型を撃破していた。
『芽衣お姉ちゃんは回収済みだよ~』
スピーカーらしき所から日向の声と騒ぐ声が聞こえてくる。その後日向が何かを抱えてハッチから出てくる。筒状の羊の絵に描かれた何かの数十本の束だった。
「空の子たちはおさらばだよ~」
その筒からは上から順番に飛翔体が飛んでいく。それらはそれぞれ上空警戒役だったであろうハチ型やトンボ型にむかっていく。もちろん逃げようとするがそれらは急旋回や偏差をつけて確実に撃墜していく。
「名付けて【ファイアー&デストロイ】ってね♪」
理論は簡単。地対空ミサイル全てを日向がレーダー兼照準器としてレーザー誘導もどきをしているだけである。
「おまけにほーい」
ボタンを押した日向はハッチをすぐさま閉めて中にこもった。その数秒後上空が真っ赤に染まった。それと同時に衝撃波が地面を襲い、上空のアイクは風船のように割れた。
「たまやー…ってね」
燃えた生体組織に焦げた体液。徐々にアリ型は機関銃で吹き飛び、コガネムシ型は狙撃や刺突で絶命する。カマキリ型が戦車に攻撃をするが、装甲に阻まれて傷すらつけられず機関銃や大太刀でバラバラにされる。数十分後、百里飛行場にはもう5人の他には生命反応は見られなかった。
「冗談じゃないわよ…あたしらにこんな数を捌かせるのも計画かしら?」
死骸に単射で弾丸を撃ち込みながら間宮がぼやく。それに対して南が肩をすくめて同意するが、そんな時に無線機から緊急事態を知らせるけたたましいサイレンが鳴った。
「緊急通報!?こちら44分隊!何があったのかしら!」
『こちら鹿島前線基地司令部。敵の大群が襲来していてカエル型を中心に千体はいる。至急支援を頼みたい。可及的速やかに回収してほしい対象が飛び出していった』
「わかったわ!すぐに向かう。対象の名前は?」
そんな中で六花の無線機に通信が入る。
『それが園上大将が軍刀を携えてニコニコして向かっていきまして』『六花!ワシはやっと殺し合いに行けるぞ!いやぁ血肉湧き踊るわい!』
日向はお菓子に気を取られており、それ以外の4人は頭を抱えていた。
『至急向かわないと危険だわ…(なのです)』 『あーあ…また悪い癖が』
思惑は異なるが5人は鹿島前線基地に向かっていった。