南部茨城攻略戦 休息
長々と引っ張っていった方が…なろうっぽいかなっと思ってます。ヒナちゃん可愛いヤッター
「という訳で私の昔話でした~♪めでたしめでたし~」
日向が読み終わったであろう間宮と覗き見ていた南に腕を広げて歩み寄る。少々口元のふかひれの姿煮の餡がついているため迫力がないが…。そんな日向に2人は冷静ぶって囁く。
「これって私、まさか墓場までの秘密を聞かされてしまったってことかしら…?」
「うぅ…ん、まぁ…あってはいるよね~」
「うげぇ監視対象になったの…やだなぁ」
日向は南のつぶやきに目を見開いて答える。
「随時私は人工衛星とかGPSデバイスとか姉妹間無線の周波数を使って監視されてるよ?まず人工衛星2基とこのGPSデバイス、あと逆探知と戦車内とか艦内の防犯カメラとか隠しカメラ。この食堂に4基それぞれが死角ができないように天井の四隅に配置してあって、廊下に…通ったところだけで12基、甲板に28基…意外と信頼はされていないようだよ?上空に無人偵察機飛んでるし」
日向はポケットに入れてあったであろうしわのよった艦内図を食べ終わった皿をどかして広げると、テキパキと鉛筆で丸を付けた。
「はぁ…だと思ったのです」
「うんまぁ、鹿島港の時もごてごて機械がついてたし…日向が一番ブラックボックスみたいな存在ですから。先輩方」
そういう2人は食べ終わったであろう皿をテーブル中央に寄せて、口元を紙ナプキンで吹いて、身なりを整える。そして、六花が日向を持ち上げ、芽衣が服の中を探るとドサッと機械が落ちてきた。
「もー!これ壊れやすいから気をつけてねって言われてるんだよ~!」
2人はそれが何かは気が付いてはいた。むしろ開発者が自慢してきた。中には日向の全てのバイタルサインの測定器具や、基礎発電量を計測する機器類。脳波を利用した感情の読み取り。興奮状態や本人が何気なく飛ばしている電波や思考内容についても計測している。因みに一度六花がおふざけで装着した際はバイタルと思考内容についてエラーが出たらしい。その時初めて2人はどういうものか気が付いた。因みに思考内容を深く知ることもできるが、六花もしくは日向に行った結果、研究員2人が廃人と化したらしい。以降のそれに関する文献はない。
「本当にヒナちゃん厳重警戒での行動なのです」
「まぁ…やる気になればごまかせるけど…めんどくさいじゃん?」
降ろされた日向はどこからともなく取ってきた白い蒲鉾らしきものをかじっていた。半分くらいかじられた蒲鉾を片手に椅子に座ると、蒲鉾を全員に半円を掻くように向けて言う。
「つまり私達は唇亡歯寒、唇歯輔車、うむ、そうせい!の中なのだよ!」
「有無相生よ…」
「日向ちゃんジョークです!」
言い切ってドヤ顔をしたところで芽衣からのげんこつが落ちた。非力なためポフッと音がしそうな叩き方だが日向は目を回しているようなそぶりをする。
「間宮さん、そろそろ帰るのです。私もシャワーを浴びたいですし」
「えっ?そうね…撤収するわよ」
輸送艦『豊後』浴室
5人の美少女達?が、つかの間の入浴を楽しんでいるところを覗くなどという不埒物はヒッカム航空基地の真珠湾港で鍛え上げられた日向のおもちゃ達にはいなかった。ハイリスクノーリターンとはこのことである。
「浴槽があるなんて贅沢だよねぇ~」
「日向印の電力で賄われた淡水化装置の力なんだよ!褒めて!」
普段は機関の熱で温まった海水を浴びているが、今回は日向が「張り切って」飲み水用の淡水化装置をガンガン使ったため、少ないことは少ないが真水のシャワーに浴槽である。その中で南はリラックスして、間宮は芽衣にマッサージを受けていた。残りは身体を洗いあっている。
「痛くないですか~?」
「極楽ね~♪さっきは滅茶苦茶痛かったけど、その後はまるで肩の凝りがほどけるみたい…。いつぞやかの古傷も調子がいいわ~。誕生日プレゼントにピッタリね」
「…ドウシヨウ」
間宮の歴戦の古傷達が今やつるんとした肌に戻っていた。肩の茶色になっていた同級生の誤射で出来たやけど跡も、降下訓練で枝が刺さってしまった太ももの痕も、背中の袈裟斬りに斬られた後も今やもうない。あわわ…とキョロキョロする芽衣に南は首を横に振ってサムズアップをする。間宮の誕生日はこの日の2日前で、それを南が全員に教えることで今回の芽衣のマッサージが始まった。
「六花お姉ちゃん!必殺!電気背中流し!」
「あぁぁぁ肩の筋肉がほどけるぅぅ」
明らかに人体が受けていいはずがない電圧だが、この二人にしてみればマッサージ程度である。
「ねぇ~小梅?どうかしら?かなりの美少女になってるんじゃない?」
「そんな年だったっけ?」
「寧ろもっと大きな問題があると思うのです…」
そんな芽衣のつぶやきに間宮は不思議そうに体を見る。
「ここも手術したから身体は女の子なはずなのだけど…。何で手術後がないのかしら?肩のやけども無いし背中の消えないといわれた傷は…無いわ!!」
「私は悪くないのです!!知らないのです~!」
芽衣は目を泳がしてあたふたとする。すると間宮は涙を浮かべて芽衣を抱きしめた。
「ありがとう!芽衣ちゃん!」
「えぇっと…はい?」
「気にしていたのよね、傷痕。…まぁ昔の思い出ではあるけど。嫌な思い出だし別にいいわ!」
そう言うと間宮は片手で芽衣をとても軽く抱き上げた。これには南も間宮も驚きを隠せなかった。なぜなら…
「芽衣ちゃん確か36キロくらいだよねぇ…。片手じゃ無理なんじゃ…」
「小梅、待ちなさい。驚いてるのは私よ。片手で抱き寄せるくらいだったのよ。力加減」
右手に座り、固まっている芽衣をよそにそのまま風呂に入り、議論を始めた。
「間宮さんや…流石に力強過ぎない?36キロで軽いとはいえ…普通はそうは持てないよ?」
「小梅?そんなプロレスラーを見る目はやめなさい?おかしいのよ。いつもの数倍は調子がいいのよ」
「先輩方?流石にそれぐらいできますよ?」
「「規格外は黙ってて」」
そんな中、芽衣がおずおずと言い出した。
「何だか変だなぁ?…ってところがあったので正しくつないでみたんです。そしたら本来の筋力になったみたいで…」
そういいながら間宮の背中に手を伸ばしてプニッと押すとグリグリと音が鳴った。
「小梅来なさい」
「えっ?待って!」
制止もむなしく、南はお姫様抱っこで風呂から出されていた。そしてそのまま更衣室に向かって間宮が歩いていき、入浴終了となった。
「お姉ちゃん達?お風呂出る?」
「出るのです」
1時間後、間宮が本を読んでいると、芽衣から小さな紙袋を渡された。
「あらプレゼント?嬉しいわ!」
「えぇっと…間宮さんの体内から摘出した何かなのです」
中には骨の欠片らしきもの、金属片、何かの外骨格等々が詰まっていた。
「…思い出ではあるのかしら?」
「どれだけ治療が嫌いか分かったのです」
そこからはお説教タイムだった。先ずは応急処置したのなら軍医に行きなさいや、言ってくれれば治療したや、寧ろ筋肉がルービックキューブ並にぐちゃぐちゃになっていたなどだった。
「それを言うんだったらお宅の六花ちゃんとか…「手は尽くしてはいるのです…。一度能力で毒物を血中から除去しては見たのですが…。これが写真なのです」」
そこにはげっそりとした芽衣と大きな機械、床いっぱいの何かが詰まった薬剤用の瓶数十点と、部屋の片隅に置かれソフトボール大からピンポン球大の金属の塊が多数写されていた。
「これのことを歩く鉱山事件と如月さんと葉月さんは呼んでいるのです。取り出した液体から鉛が10キロ出てきた時は気が遠くなったのです。まぁ…毎週回収していたから今回の騒ぎが起きてしまったのです。なぜか未だに蓄積されているみたいですけど」
芽衣はごそごそと自分のリュックサックからメモ帳を取り出す。そこにデフォルメされた人体と図形を書き始めた。
「私が能力を使うと、3つのことができるのです。先ずは創傷治癒なのです。創傷が赤色に見えて、主に細胞を増やして元に戻したりして治しているのです。例としては間宮さんの古傷がそれに該当するのです」
芽衣はその体に切り傷と血を描く。それに芽衣らしき人が触れる絵と傷が治るまでの四コマ漫画らしきものを描く。
「次に黄色で見える異常箇所の修復なのです。文字通りに身体の変な箇所を元の位置に戻すのです。今回の騒動の原因でもあるのです。今回は筋肉の中に骨の欠片やカマキリ型の鎌の一部などが埋まっていて本来の6割の力しか出せない状態だったのです。それを古傷から引きずり出したので痛みが走ったのです」
「あぁ…あの滅茶苦茶痛かったときね…。本当に筋肉が切れていたとは…」
「三つ目は青白く見える体内の有害物質の除去なのですが…。血液から液体の混合物という形で取り出せるのです。間宮さんと南さん、そこで寝てるヒナちゃんからは全く検知されないのです。問題は…りっちゃんなのです」
「光ってるの?」
「体が蛍光灯みたいになっているのです。デモンストレーションしますか?」
芽衣が軍医用の外科道具入れを持ち出して、その中からメスを取り出す。間宮はぶんぶんと首を振り拒否する。
「予想はどれくらいかしら?」
「…まだ重金属をほぼ全て取り出したレベルなのです。輸血なんて自殺行為だと思うのです。試しにアルミホイルに垂らしたら机ごと穴が開きましたし」
芽衣は吞気に日向をあやしている姉を冷めた目で見る。
「全部出したらどうなるのかしら…」
「各種無機酸とか有機化合物とかその他非金属元素の化合物。アルカリ金属やアルカリ土類金属がザクザク出ると思うのです。今、体重的に途方もない量が入ってそうですけど」
芽衣は呆れたように言い放つ。そして、思い出したかのように六花のリュックサックからお弁当箱大の箱を取り出す。
「運んでもらっていたのですけど…間宮さんなら喜んでいただけると思って。お誕生日おめでとうございます」
中には貴金属の金や銀、プラチナなどで象嵌された青色の懐中時計があった。間宮は目を丸くして言う。
「きれいね!でもこんなの涼花ちゃんの方が良いと思うのだけど?」
「金の総重量約3㎏、銀約2㎏、プラチナ約1・4㎏…総じて約6.4㎏の貴金属を誰かから引きずり出して涼花ちゃんのウェディングドレスの飾りと指輪、ティアラも製作してプレゼントした残りでできているので安心してほしいのです」
「…今回やけに葉月さんの羽振りがいいのって」
「多分これで栗原さんから大金巻き上げたのです。一応ですけど栗原さん将校でもありますし高給取りなんですよね。それの預金額がギリギリ5桁になるまで絞り立ったみたいなので…」
「道理で今回からきちんとした装備を作ってくれたと思ったわ…」
間宮は懐中時計を受け取ると付属してあった鎖を、腰のベルトに結び付けてポケットにしまう。そして、芽衣の耳元で囁く。
「出来ればお姉ちゃんと呼んでほしいんだけど…」
「…私のお姉ちゃんは1人だけなのです♪」
芽衣はそう返すと、戦車の中に戻っていく。間宮は軽く笑うと就寝の準備を始めた。
ネタはある・されど時間が・ありません 作者心の川柳