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南部茨城攻略戦 輸送

ふかひれすーぷのみたい

輸送艦『豊後』甲板 仮設船室


「全く…最初からそこの海防艦が働けばよかったのよ。文句言ってやるわ!」


間宮は六花にげんこつとお説教を満足いくまで芽衣と一緒に浴びせると、横を並走している護衛艦艇に文句を言おうと無線機を起動しようとすると、日向が口をはさんできた。


「無駄だと思うよ?そこにいるのは無人化を導入した奄美型海防艦の『奄美』と『西表』だから。どうせ海軍部の青年将校が陸上部の手助けをしたくなくて選んだんでしょ…。もう…面倒だから丸投げしよう」


日向は44分隊員の全員の無線機に自分のものと同じ音声を流した。宛先はとある人。


『こちら海軍部司令三田弥生です。会議中のため速やかに要件を言いなさい』


「こちら黒井日向特別上級技術士官です。参加している作戦についてご説明をいただこうと」


『日向ちゃん!?…会議中ですって?後にしなさい!それでなぁに?』


「弥生さん、私のエスコートの護衛艦がしょぼいんだけど。奄美型2隻とか太平洋なめてるの?」


スピーカーの向こうでは何だか資料をあさる音と、若者の焦ったような声が聞こえる。如何やら会議室全体に流れているらしい。


『あった!…少しいいかしら溝口少佐?この護衛船団の護衛艦に奄美型2隻ですって?輸送対象は…陸軍の兵士。きちんと精査しての作戦かしら?』


『いえ!この海域は制海権を得ており、哨戒艦艇も多数派遣してある為、船団へは小規模の襲撃にとどまると考えられ、必要最低限でいいと考えて派遣しました』


「へぇ…サメ型50体、トンボ型20匹が平然と出てくる海域が【小規模な襲撃】で済むと?随分勇ましいね…お兄さん」


日向がかなり冷え切った声で指摘をする。この規模の攻撃はミサイル搭載駆逐艦2隻で損害を出しながら撃退に成功する程度である。絶対に海防艦2隻で済ませるような規模ではない。それでも青年は続ける。


『最新鋭の奄美型は火力や索敵性能にも優れていて、更には「ほうほう…従来の75ミリ単装速射砲をより製造が簡単な100ミリ戦車砲を速射砲化した100ミリ連装速射砲にしたけど、弾速が平均的な艦砲より遅くて、水中に生息するアイクを止めるために体内で爆発させて動きを止める2式徹甲榴弾を他の主砲と異なり搭載していない。対潜ミサイルも対潜ロケットも艦体を大型化したとはいえスペースの都合で駆逐艦の半分以下。肝心のソナーもレーダーも操縦用の電波と干渉しないようにした所為で沿岸用ならまだしも外洋は少し心許ない。というか…これのコンセプト沿岸防衛用だよ?わかってるの?」』


『溝口少佐?他にも理由が?』


『…申し訳ありませんでした』


『それで…日向ちゃんは無事なのね?』


「お姉ちゃん達が殲滅したからね!葉月さんから丁度いいおもちゃもらったし」


『おもちゃ?』


「54ミリ電磁投射砲搭載戦車『プレデター』重戦車だよ~!じゃじゃーん!」


多分あちらのスクリーンか何かには全体像が移されていると考えられる。…性能は段違いなんだけど、これ日向専用機体だよね。4人はそう認識している。向こうでもざわついているだろう。この化け物はなんだと。


『…装甲貫徹力は化け物ね。大和型の全体を貫通するわよ。…待って、レールガンなのにライフル砲身?』


「サメ型も当たり所によっては高速で侵入する弾丸の一過性空隙に耐えられずにバラバラになってたよ」


『やりすぎな攻撃力は七瀬に注意しておくわ。さて、これから暇していそうな駆逐艦と馬鹿を送り付けるけど…馬鹿をマストに吊るすのは無し。いいわね?』


「はーい!」


日向は無線を切ると、ふと思い出したように呟いた。


「お菓子の補給忘れた」



一方で無線から音声が聞こえなくなった4人はため息交じりに会話を始めた。


「そこにもコネクションを持っていたのね…。寧ろあの子レジスタンスの全てを掌握しているんじゃないかしら?」


「弥生さん、東城さん、パパさん、食糧生産プラントの実質的トップの二階堂さんを味方につけてるのです。もはやヒナちゃん無敵だと思うのですけどね」


少し遠い目をしつつ芽衣が答える。それに続いて南が「そうだ」と前置きしてから口を開く。


「この前空軍部の神無月統合航空軍司令長官が日向ちゃんに墜落した航空機の搭乗員救出を手伝ってもらって以来、頭が上がらないらしいよ?レーダーの調整とか、この基地で一番電気使ってるのって空軍部のレーダーとか誘導灯だから…」


「日向はそんなこともしてたんですか…」


呆れるように六花がぼやくと、間宮はふと半紙一枚分の細かく字の書かれた手紙付きのプラスチック製の横3メートル、縦1メートルちょっとあるケースを発見した。というかあんな状況じゃなきゃもっと早く見つけてそうな大きさだった。


「この箱は何かしら?『優しい葉月さんからのプレゼント!先ずは日穂から♪あの驚く位重いアサルトライフルをかなり軽量化しました!…その代わりに7.7ミリフルサイズ弾薬使用のものにはなったけどコガネムシ型じゃなければ十分貫通するから!きっと!』なるほどね」


間宮は一度音読をやめて、箱を開ける。中には5人分の緑のプラスチックケースがあった。その中で【間宮】とシールが張られた物を取り出すと、前ほどではないがそこそこの重量があることに気が付いた。中を開けると、最新鋭のレジスタンス4式自動小銃のフルサイズ弾薬版と、仕様書が同封してあった。【4式自動小銃改 単射・連射・安全の三段階付き 反動はかなりマイルドになっています 長方形の30発弾倉はこの箱の隣の弾薬箱にこれでもかと詰めておきましたが、足りない際はご連絡をお願いします】と書かれているが、横の弾薬箱には本当にみっしりと使っている。


「『次にかなり変えてしまった南の装備!2人で相談を重ねた一品を作りました。軽量化と強度の両立の結果、コガネムシ型の外骨格を配合したスカンジウム風合金を作り出しました。本物と違って耐熱性はかなりのもの!お陰で軽い・丈夫・銃身過熱が少ないという最高傑作ができました!…そうですよ、高いからって却下した合金です。あの後日向ちゃんにとある事で脅されたんで自腹を切りました。…黒井司令長官の。弾薬は25ミリがいいと言っていましたね?…この前の機関砲弾統一化で機関砲は20ミリの戦闘機用のものと陸海空全ての対艦?・対車両?・対空用の機関砲は30ミリ弾薬で決定されたのよね…。だから20ミリで勘弁して?貫通力は変わらないらしいから!(陸軍部調べ)』らしいわよ」


「私のも更新されたんだぁ!どれどれ…ほうほう」


中から出てきたのはサツキスペシャルを一メートルと少し位に大きくして銃身を伸ばしたようなセミオートマチックライフルだった。説明通りに前の太いパイプが付いた機関部ににストックとチークパットを付けたような武骨なものとは重さが違うようだった。


「本来は照準器のゼロインとか必要だろうけど、私は狙うだけでその場所に当てられるし問題ないね」


そう言うと南は弾倉を装填して壁に立てかける。


「『芽衣ちゃんのなんだけど…。メンテナンスしただけよ。特に入れるものがないからふかふかのタオルケットを入れておいたわ。戦車の中でも無線手席は柔らかくしておいたわ。…快適なのは間違いないわ』よかったわね?」


「ふかふかなのです!」


早速芽衣は戦車内にタオルケットを持って行っていた。あの椅子本当に手がかかってそうだと間宮は考えた。あの芽衣ちゃんが戦闘中でもリラックスして座っていたのだから。


「『そして、六花ちゃんには…こちらの多目的シャベル!殴る・切る・突く・穴を掘る等々便利な一品です!…これだけだと怒るだろうから戦車の後ろにつくトレーラーによさそうな試作品の製品版詰めておいたから使ってね』だそうよ」


「…ありがたいんですけど、何故シャベルとおまけみたいにケースに入った包丁なのでしょうか?まあいいですけど」


「『日向ちゃんのは戦車内に詰め込んでおきました。そうです。後方に積んであるお菓子やお茶、娯楽用品に携帯型地対空ミサイル、テントキットのことです。地対空ミサイルは面子的に要らないんじゃないの?とは思いましたが、後が怖いので在庫として放置されていた少々旧式のものを詰めておきました。十分に威力を発揮すると思うけど…。修理キットと部品はトレーラーに詰まってるから。神無月さんからやけに大事そうなアタッシュケースをもらったから渡しておくけど…。なにあれ?』へぇー…携帯型地対空ミサイル!?なんてものを突っ込んでるのよ!」


間宮は戦車内に入り件の危険物を探したが、壁にも床にも天井にも見当たらない。しかしスキャンはある一点を示していた。


「お菓子の棚の下に怪しい筒状物体が詰まってるわね…」


案の定お菓子類をどかすとコンテナが底に入っていて、コンテナ一杯に携帯型地対空ミサイルが詰まっていた。ご丁寧に高精度な赤外線レーザー誘導装置まで付属している。ちなみにペイントされている。


「使うしかないわね…」


「なんで羊モチーフなんだろうね…芽衣ちゃん対応?」


全てに羊のイラストが書かれていて、とても兵器とは思えないように見える。


そんな時に艦内にアナウンスが響いた。声の主は三枝だろう。如何やら夕ご飯の準備ができたらしい。4人はゆっくりと甲板から艦橋に向かい、艦橋にある階段から艦内にある食堂に向かうこととした。しかし…一人だけ少しそわそわしている人物がいた。


「急がなくてもふかひれは有り余っているわよ…」


「い、急いでなんかないのです!私はいつも通りなのですぅ!」


その割には足取りが軽くないかなぁ…と南は思ったが、黙っていることにした。これはこれで可愛らしい。芽衣は無意識に鼻歌を歌っていることにも気が付いていないようだった。


「まっへはほ~」


中に入るとふかひれの姿煮を頬張る日向の姿があった。ふかひれの姿煮はそういう風に食べるものではないと南は学生時代の記憶をもとに考えたが、そう言えばあの子もテーブルマナーを何故か習得している。多分あれはパフォーマンスかな?南は少し口角を上げていた。


「「…だと思った」のです」


「まあいいわ!いただきましょう!ね♪」



食事中に間宮が話のネタとしてか昔話を始めた。どちらかと言えば武勇伝だが。そんな間宮のムキムキ話が終わると、隣にいる日向に話を振った。


「日向ちゃん?そう言えば貴女のそういう話を聞いたことがなかったわ!聞いてもいいかしら?」


「日穂お姉ちゃん?それはレジスタンス第1情報権限が必要だから今は無理かなぁ?」


情報権限の数が小さくなるほど機密情報であるという証でもある。つまりは国家機密に近い情報であるということ。そんな発言に冗談かと思った間宮だったが、姉妹の少し深刻そうな顔を見て理解したように言葉を変えた。


「二人はいつそのことを知ったのかしら?」


「5年前くらいに知ったのです」


「まぁ…怪しいと思って見つけてしまったんですけどね」


日向がその間に何かを取りに行った。しばらくして戻ってくると、その手にはノートくらいの大きさのレポートが印刷されている紙があった。そのレポートの最初にはこう書かれていた。



【乳幼児に対するXS1233の投与における疑似的サヴァン症候群発現について】

研究 五月製薬 研究者 五月春信・美由紀 


次回はただの実験レポートです。こんなのレポートじゃないわ!という方はただの文章の羅列だと考えてください。

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