ビリビリ少女の箱庭だっしゅつけいかく2 実は最強の日向なのです!
しまった!ゴア表現入っちゃったかも…。ままええやろ
今日は何となく気分が晴れやかだった。出れる方法が見つかったからかな?床は冷たいし狭いけど多少は諦められるようになった。今日も如何やらモニターにてモーニングコールがあるようだった。
「おはよう、良く眠れたようだね」
「…お腹すいた」
「今日は特別にプリンを用意しておいた。食べるといい。」
すると、扉が開いて若い人が入ってきた。相当見くびっている様だった。トレーに並べられた品の中からプリンをすぐに食べるふりをしてから顔面に投げ返してやった。若い人は慌てているようで、何かわめいている。
「せっかく用意したものなんだぞ!何をするんだ!」
「なんか変な味がするからお兄さんにあげたんだけど…?ほら喜んでるよ!」
おじさんこと主任研究員は日向に怒鳴るが、日向の目の前では、若い研究員は奇声を上げて四足歩行で廊下を駆け回っている。この様子から中に入れられているのは脳の活動を阻害して人としての思考を停止してしまう薬だと考えた。でも、この量は殺す気じゃない?大人でこれだから私はどうなったの?
「…運のいい。さて、実験があるから早く食え。俺は忙しいんだ」
「私にかまってられるほど暇なのに?」
「うるさい!」
今日の実験は操作可能範囲の確認だった。もちろん癪に障るからかなりセーブした。おじさんは焦ったように爪を噛む。如何やら何か急かされているみたいだった。「あと一か月…」と聞こえたので、全力で手を抜くことに決めた。
「夕食のオレンジジュースにも混ぜられていたけど、運ぶ人が凄く喉が渇いたと感じるように頭をいじったから被害なし!カメラから見たら…すごーいゾンビみたい」
廊下には目の焦点が合わず、ボーっと廊下を往復しているおばさん研究員がいた。事前に聞いた混ぜ物は、げんかくざい?というもの。どちらにしてもあのおじさんかなり強引に進める気みたい。
「さて!脱獄!」
先ずはカメラ映像をあらかじめ録画したものを流しておいて…。ドアの電子ロックを解除。すぐに廊下全体のカメラを静止画に固定してっと…。OK!さて探検だぁ。
廊下を進むとガラス製のドアがある。横には機械があり、事前情報だとカードが必要。でも、私には関係ない。機械がカードをスキャンしたと勘違いさせて開錠すればいい。仕組みはパズルみたいに見える。正しい向きに並べ替えればいい。案の定ドアが開き、向こうに行けたが、人通りが多くて進むには骨が折れそうだ。そこで薄暗くてごちゃごちゃした物置部屋みたいな所に入って脱獄アイテムを探すことにした。
「ないなぁ…。これは…瓶。重い…却下。これは…木工用くぎ…必要。なんかつるはしとかないかなぁ…。あと白い布」
「白い布ならこれかな?シーツだけど。つるはしはない」
「親切にありがと~…っ!」
急いで釘を射出するために構えて後ろを向くと、温厚そうな女性が立っていた。というかこの前の看護師のお姉ちゃんだった。
「葉月お姉さん!何でここに?」
「ここは私の部屋よ…貴女は何の用だったの?」
彼女は追いだすそぶりは見せずに紅茶の入ったポットを片手に、2つのカップを運んでいた。そして、紅茶を淹れた後、日向に差し出す。
「まぁ…わかってはいるけど…。少しでもゆっくりしていきなよ。どーせこの物置に来る客なんかいないしね」
「ねぇ…お姉さん、たまに遊びに行くから、良かったらお話し相手になってくれる?」
「いいわよ。どうせ暇だしね。さて、何の話をする?」
あれから隙を窺っては葉月お姉さんの所に行く。いちいちパズルはめんどくさいから偽名で登録しておいた。おじさんは監視室から部屋を見ているだけで、部屋には入ってこない。そんなことを1か月以上行っていた時のことだった。
「今回の実験では腕を抑えさせてもらう。この注射をしてからの実験だ!」
もう色々隠さなくなったおじさんは堂々と薬物投与をしてくる。しかし…刺しているのは昨夜寝ている内にすり替えておいた研究員用のビタミン補給剤。葉月さんからも無害と判定された物である。なので痛いだけで何かあるわけでもない。はずだったのだが…。
「頭が痛い…!おじさん!何をするの!」
「成功だ!良しやってみろ!」
ボーっとする…痛い…でもセーブはできるけど…。いつもより強くなってる。これは…まずいかも。あの計画を今日決行にしなくちゃ…。あれは葉月さんを安全なところに逃がしてから…でももう耐えられない。葉月さん…ごめんね。
「素晴らしいぞ!いつもの倍は出ている!この調子なら!」
終わらせなきゃ…。『もう十分我慢したよお姉ちゃん』…お姉ちゃんも許してくれるよね…。
日向は葉月の部屋に急いで向かい、用意を始めた。葉月はそれを察してか、日向に近づいてきた。
「我慢の限界になっちゃった?」
「今日は何かお薬を入れられちゃった。ここにいるとお姉さんが疑われるかも…。ここから離れて。お姉さんの…せいじゃないから。また逢えたら一緒にお菓子食べようね」
「…生きて逃げ帰ってきなさい。いいわね?貴女の力じゃ制圧されてしまうわ」
「最後に嘘ついてたのを謝るね…。実は私その…「言わなくていいわ。貴女は可愛い少しビリビリする子。でいい」
「ありがとう。またね…!」
「また会いましょう?」
所内はブザーの音と足音が響いていた。日向は葉月が脱出したことを確認すると、ゆっくりと離れに歩いてった。
「試験体1255が逃げた!捕まえろ!対した力じゃないはずだ!精々しびれる程度だろう。」
主任研究員は内心余裕だった。あのレベルなら数分もいらないだろう。すると、無線から報告が入った。
『…ブロックにて頭部が破裂した死体を確認!現場には…弾丸等は残っていません。遠距離からの狙撃ではない方法で吹き飛ばしたような…形状です』
「敵対組織の攻撃とは間が悪い。警戒しておけ」
そんな無線の後悲鳴が聞こえた。
『αブロックにて…対象を…発見…しました…!…わが隊は全滅…。対象は金属製の釘を発射して…攻撃をしてき…ザザッ…。』
『おじさ~ん。待っててね。すぐに行くから』
「対象の情報を訂正!対象試験体1255はセキュリティーレベル5で対応しろ!銃でも何でもいい!殺害を認める!」
『銃弾は無効!まるで聞いていプーッ…ザザッ』
『いきなり体がうごかヒィ!!』
無線も向こうでは水たまりを歩くような音と、かすかに聞こえる息遣い。生存確認など必要もなかった。
「はぁ…何で立ちふさがるのかなぁ…」
すると、心の中で自分が言う。【いいじゃん、邪魔だし。こんなのが死んでも痛くはないじゃん】まぁ…ね。でも汚いし、お姉ちゃん達に見られたら怒られちゃうよ…。【大丈夫!許してくれるさ!】そうだね!さて!おそうじしようか!
その様子はまるで森を鼻歌交じりに歩く子供のようだった。どれも赤黒く装飾されているが。そして、角に来た時に見覚えのある顔があった。
「お前ぇ!!何してくれたんだぁ!!」
「おじさんの代わりに遊びに付き合ってもらっただけだけど…?何か問題?」
「ここにいる人間のことを考えてことがあるか!例えばおm「なんでタンパク質の塊の事を考える必要があるの?」はぁ…?」
「そこに転がっているのも、そこで血を流しているのも、おじさんもただの汚い肉塊。それ以上も以下もない。分かる?私はおそうじするときに『埃さん痛かった?』とか言わないといけないの?」
おじさんは不思議だなぁ…。自分が正義とでも考えていたのかなぁ?正義なんて人によって変わるのに?自分の方が力があるとでも?
「おじさん?遊ぼうよ!お兄ちゃん達はもう疲れちゃってるみたいだからさ!先ずはこうしようね!」
そう言うと主任研究員は左胸を抑えて倒れる。その後ビクンとして起き上がる。それを少女は眺めてひどく楽しそうに繰り返す。研究所離れでは、一晩中叫びと少女の笑い声が響いていた。
「第2小隊より本部。所属不明の警備員との戦闘の直後、研究所内部の離れの一室にて少女を発見。目立った怪我無し。意識もはっきりしている。それ以外の生存者無し。これより保護して撤収する」
「こちら本部。了解した。至急帰還せよ」
「第2小隊了解。この子は運がいい」
「…そうとは限らない」
「葉月お姉さん!帰ってきたよ!」
「ほう…。葉月研究員、担当していたのかい?丁度非番でよかったな。…まさか攻撃を受けるとは…」
「えぇ…、世話をしていて…。昨夜は友人に交代していたので…」
報告書
作成者 黒井則道大佐
今回の第一研究所の襲撃における騒動を収めるため。外部からの攻撃という偽の発表が現在全関係者に認知されています。これらは今回の騒動の真相が表面化する事を防ぐ狙いで大々的に発表しました。
今回の騒動の原因としましては、数か月前に葉月研究員より主任研究員による試験体1255と呼称されたサツキヒナタへの過度の薬物投与や狭い部屋での監禁によるストレスを確認したとの報告を受けています。それにより能力を暴走、研究員及び警備要員の殺害、施設内の中規模の破壊行為。及び殺害された警備要員を蘇生し操作するといった行動を起こしたと考えられます。救出後、精神鑑定を行った結果、重篤な共感性・良心・責任感、・罪悪感が欠落しており、ひどく退屈を嫌っているようです。発言は衝動的で気を付けないと主導権を握られてしまいます。これより、厳重な監視と管理が必要です。しかし、彼女が唯一そのような傾向を見せていない人物が確認されており、該当人物は本人の発言より、彼女が唯一安心していられる対象となっているようです。この対象の中から、葉月研究員を選定し、監視任務に就かせようと考えます。
補遺Ⅰ…「サツキヒナタへの過度の薬物投与」はサツキヒナタ当人が警戒したため、拘束して投与したとの情報が確認できました。
現在 葉月ラボ
「葉月さーん!遊びに来たよ~!」
「…お菓子はないわよ」
「じゃあ~これ頂いてくねぇ~!」
「それ私のドローンよ!返して!ってもういないよ…」
【現在、サツキヒナタ改め黒井日向は安定状態に入っている。少しづつだが欠落した要素が治りつつある。しかしながら精神面は未だ幼く、当面の課題は私の持ち物を窃盗する癖を直してもらうことだ。】
「これで良し!」
ふと机の上に紙がおかれていることがわかる。内容はこうだった。
『また来るね♪』
「フフッ♪いつでもいらっしゃい。待ってるわ」
次回はマトモニツクリマスホントウデスヨ