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万能型お姉ちゃん六花製造計画 改

続きです~

俺があのくそ上司の娘を連れてきたのは、とあるパーティー会場。ここでこの子を放し飼いにすれば意趣返しぐらいはできるだろう。せいぜい困るがいい水無月少将。先ほど渡した年相応に上品に見える水色のワンピースを着た六花が森永に聞く。


「森永さん、ここにいる人と仲がいいの?」


「そ、そうだねー。良く話すなぁ?」


そんな訳ない。ここにいるのは腹に何かを抱えた狸ども。何を言われるか分からん奴と仲良くできないに決まっているだろう。


「なら、あのおじさんと話したい!」


「えっ待って待って!」


7歳の少女に引きずられる20代後半男性は相当目立っただろう。しかし…連れてこられたのは、軍幹部の中でも中々いかつい園上大将の前。六花ちゃんはキラキラしてるけど…。やばいかもなぁ…。この人会話嫌いなんだよな…。


「あぁん?何だ嬢ちゃん?おい!お前の娘か?森永」


「いえ…知り合いの子どもがついて行くといったものですから…」


事前に色々見た目の情報とかネタを仕込んでおいた。目の前の園上大将は軍刀術の達人だとか、そういうこの子の気を引きそうなことを叩き込んだ。


「園上さん!お願いがあります!この木刀で技を見せてください!」


「じょ、嬢ちゃん?まぁ…いいが…楽しいものじゃないぞ…」


「お父さんが、どんなものでも強い人に会ったら動きを見せてもらえって言ってたので!」


園上大将は頭を掻き、仕方ないとばかりに六花に離れるように言い、一通り剣さばきを見せた。それを六花はキラキラした目で眺める。


「ふぅ…どうだこんなのが楽しいのか…って大喜びか」


「ありがとうございます!何時も上段からの攻撃にこう流しているんですが、こっちの方が反撃につながるんですね!」


「あぁ、そうだが…本当に好きなんだな…」


「太刀筋は人を表すとお父さんが言っていたので!園上さんの豪快な動き、好きですよ!」


何だろうか…園上大将懐柔されてないか?あの人の妻と3人の息子はあの人の実戦用の剣術が嫌いだったから家で効率的な剣技開発という趣味の話をできないんだろうけど…。うわぁ…あの鬼の園上がニコニコしてるぅ…。こわぁ…。



「今度暇なとき遊びに来い。少しだけだが技を教えてやろう」


「その時は構えから教えてください!」


あの人のニコニコ顔とか初めて見たかも…。この子…度胸ありすぎじゃないか…。来たものすべてを威圧した最難関を楽々懐柔したぞ…。続いて彼女の興味を引いたのは政界の大狸棚橋権蔵議員。与党の副総裁で予算案や法律の改正案はこの人の目を通さなければつぶされるといわれている大物政治家だが…。腹は黒いし、口もうまい。この人だけが情報がない。なので内心ひやひやしている。一方で横の六花ちゃんは大皿にケーキ類を乗せて俺に引率なしに近づいて行く。


「おじさん!お話し聞いていい?」


「なんだいお嬢さん?特に私は剣術に明るくはないが」


「ううん、ケーキ食べたいのかなって?」


おぉーい!!違うから!ただ周りの弱みを探していただけだから!!そんなことはつゆ知らずか、六花は先ほど持ってきていた小さなフォークを差し出すと、ニコッと笑った。


「じゃあいただこうかな?」


棚橋がチーズケーキを食べる様子をニコニコとしながら見ている六花。さすがに不審に思ったのか棚橋が問いかける。


「そんなにおじさんがケーキを食べるのが楽しいかい?」


そんな問いかけに、六花は首を素早く横に振る。


「おじさん本当は甘いものが好きなんだなぁ…って!だってさっきまでキリッとしてた顔が少しふにゃふにゃになったから」


「よく気が付いたねぇ…?秘密だよ?」


あの狸親父が孫娘みたいに接しているが…。恐怖しかない。あれは本心からなのか?


「うん!私も隠してること言うね!実はさっきね、あそこの灰色の服を着たおじさんが電話で「洋子ちゃ~ん?またにゃんにゃんしようね~」って言ってたの聞いたんだけどね、秘密だから話しちゃダメ!って言われたの。おじさんとボクとの秘密だよ?」


「あぁっ…秘密だよ?」


何言っているかはわからないけど、あの狸親父も落ちたみたいだなぁ…。というよりもあの子、あの棚橋をその顔にするなんて、一体何を言ったんだ!ふらふらはしているなぁとは感じたけど…。というか今も「他には?」と言われた後に、このパーティーの参加者の内、棚橋さんの対立陣営のトップから支持者に至るまでコッソリ指をさしてコソコソ言っているけど…あの子「あの料理食べたいから取って!」とか、「おじさん!そのお料理どこにあった?」とか、参加者に軽くアプローチしているけど…さてはこれの布石か?!


そうではなくいたって普通な食欲からきている行動なのだが…忙しくてあまり自分を見てくれない両親の代わりに、世話してくれる人間を捕まえるすべが、いつのまにやらおじさんたちへのハニートラップと化しているだけである。話はその時に


「おじさんのお洋服いい匂いだね!香水使ってるの?」


「やはり女の子は気付いたか。そうなんだよ、この香水は実は私のオーダーメイドでね」


「優しいにおいで結構好きかも。でも…お金ないし…」


むしろそれは大金持ちの道楽レベルだから買えないんじゃ…?すると、棚橋は胸ポケットから小さなガラスの容器を取り出した。


「少ししかないが…プレゼントだよ。使っていないからあげよう」


「えっ…!ありがとう!大事に使うね!」


すると、彼女は服にワンプッシュ香水をかけると、ニコニコしながら棚橋に向かって抱き着いた。


「お揃いだね!」


あの狸親父が何だかそこらの子供に甘いおじさんに見えるのは気のせいか?おーい気がつけ~。あんたもハニートラップに引っかかってますよ~。



その後も彼女は色々な人に話しかけられていた。それもそうだ、軍の実力者筆頭園上大将に政界の怪物狸の棚橋と仲良く話す少女なんて注目しないはずがない。しかも困ったときには助けに来るとか…。あんたら…大丈夫か?そうこうしていると水無月少将と同い年くらいの男性が園上大将の元に来た。その時にもスペースをとって六花ちゃんに構えを教え込んでいた。


「園上大将閣下。ご挨拶に参りました…って閣下?お孫さんでしょうか?」


「何だ浩三?これは孫じゃないが、そうだなぁ…愛弟子がいいか」


そこにいる鳩が豆鉄砲を食った様に呆然としているのは南浩三准将。今年34歳で、水無月少将と合わせて日の本一の二振りと言われている。因みに戦闘面での根回しが水無月少将で、軍内部の調停役が南准将の担当である。俺らの部隊は水無月少将の指揮下に入って破壊工作をしている。あの人の地位も懲罰部隊の指揮の手腕を買われてのものでもある。


「はぁ…そうですか。お元気そうで何よりです。…お嬢さん、お名前を聞いても?」


「あっ!忘れてました!水無月六花です!南さん?ってお父さんが『今回も南が補給を用意してくれたから暴れるだけだ!』とか言っている人ですか?」


「おぉ…嬢ちゃん。幸一郎の自慢してた娘か…。良し!今日からおじいちゃんと呼べ!」


「あの人は…何時も作戦が奇抜すぎるんですよ…。今回もしかり」


良かったぁ…。あの二人が仲悪くなくて。


「そうだ浩三。お前もこのくらいの娘がいただろう?どうだ?」


「9歳の娘はいますが…武術は教え込む気はないですよ。あの子には平和にピアニストとか画家とかを目指してもらいます」


「呼ばなかったのか?」


「普通こんな年の子をこんな魔窟には連れてきませんよ」


「そうだよなぁ…。おい、森永。静かにしていてもいるのはわかっているぞ」


畜生ばれたか!よし!とんずらするぞ!と思った森永だったが、既に強い力で園上に捕まえられていた。


「詳しくお話しようぜ」


「ワカリマシタ…」



1週間後 黒井家


「何だ?こんな時間に…。誰だよ…」


現在午前6時半。基本的に7時起きの黒井は寝ぼけまなこでインターホンを取ろうとすると、六花が木刀とリュックサックを持って玄関を開けた。そう言えば昨日楽しそうに遊びに行くとか言ってたっけ?


「お待たせしました!」


「いやいや、早く来すぎてしまったな」


そこにいたのは園上大将閣下だった。待て、何故いるの。しかもそういう風に接する人じゃない。そうしてボーっとしていると高そうな車に乗って遊びに行ってしまった。


「お父さん?あのおじいちゃん誰?」


「お父さんの上司の上司」


「…何で仲いいの?意味わからない」


「お父さんも」


親子であんぐりして立ち尽くす。



「ただいまー!」


「黒井~暫く六花を借りてって悪いな」


夕方に突然、玄関から聞こえる声に戦慄した。なんでいるんだよ…。あんた軍のトップ層だろ…。すると、亜希が応対して中に入れたようだった。


「おう!娘借りてたぞ」


「ただいまー!」


「…うちの六花と仲がよろしいようで」


おかしいなぁ…。夢かな…。いてぇ…。


「園上さんね!凄いの!こう…上に打ったと思ったらいつの間にか横に来てたり!」


「筋がいいから久しぶりに熱が入ってしまってなぁ。これからも休日は借りていくぞ。じゃあな」


六花が楽しいならいいや…。はぁ…この後絶対試合したいとか言い始めるぞ…。


「おとーさん!技を実践してみたい!」


その後の部屋からは休日に遊べなかった遥からの引きずり回しに抵抗する六花の声と、ため息の音が響いた。




「というぐらいでいいか?」


「次元が違うことはわかったのです」


芽衣は森永が話しながら淹れた紅茶をすすりながら答える。パンケーキは先ほどまであったが、今ではシロップしか残っていない。


「でも…」


「何だ?」


「そんな技があるなら私に教えてくれたらよかったのです~!」


ぶんぶんと手を振って不満を露わにする芽衣に、扉から入ってきた人物が言う。


「お姉ちゃんならわかるはずなんだけどなぁ…理由は」


「ヒナちゃん!…わかってはいるのですよ」


日向は手に『葉月謹製カメラドローン』と書かれたヘリコプターを持って入ってくる。また盗んできたのだろう。


「「全く…独占欲が強いんだから…」」


「「「へくしょん!!」」」


「誰かが僕のうわさを?」


「これって自分にもくるんだ…」


「まさか…そんなわけ…なのです」


次も思いかばないので…日向ちゃんの空白期間の話でごまかそうかな…

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