白薔薇戦争? 隊長!もう制圧されてます!何者かに
作者は思った。東南アジア諸国連合と戦っても旨味がないと…。というわけで誤魔化しの回想行きます!
??? ハンターオブシチリア地下資材倉庫
数機の工事用の設置型ライトに照らされた部屋中央の椅子には壮年の男性が腰掛け、その周りにはモニターとスピーカーが並べられ、それらの周りを少女が円を描くように歩いていた。
「おはようおじさん。気分はどうかな?」
「盛りのついたメス豚がっ!!」
静かな部屋に突如としてうめきとドロドロとしたものが床に落ちる音がした。男性は口元から吐しゃ物を少しこぼしてうめいている。少女は不服そうに眺めて言う。
「抵抗しても無駄なのになぁ…」
「どうせ今回の件で「その話は調べがついているんだ」何?」
「おじさんが伯爵家から隠していた財宝を手元に移して、アフリカ連合とか独立主義者等々から買った原油や鋼鉄とかの戦略資源を使って万年貧乏な東南アジア諸国連合を動かしたことは知ってる。そして、その間に軍隊のいないイングランドを傭兵を使って奪還するとかかな?」
「どうかな」
男性はにやりと笑って答える。少女は面白くなってきたのか、目を少し見開いてモニターに映像を映す。その内容は傭兵のリーダーが戦闘員に囲まれて泣きながら「クライアントの情報と引き換えに命乞いをする場面であった。
『待ってくれ!話す!話すから殺さないでくれ!そそそそうだ!雇い主のことを知りたいんだろ!奴はジョージと名乗っていた!元イングランド国王だったって!金払いがよかったから受けたんだ!噓じゃない!あとはなんだ?!話したじゃないか!止め【ドスッドスッ!】』
「あとはねぇ?これ!」
『おじいちゃんがお空の上に行くのが先か、教えてくれるのか先かゲームしようよ!先ずおじいちゃんの頭を固定してあるのとか、さっきの強心剤の注射はこのゲームのためだよ。これから一秒づつ水滴をおでこに垂らすから耐えられなくなったり、教えてもいいと思ったら呼んでね?耐えきったらおじいちゃんの勝ち!簡単でしょ?それじゃあまたね♪』
そのあとには倍速されている映像が流れ、老人は徐々に激痛を訴えている様子が見て取れる。顔は苦悶に歪み、叫んでいるようだった。しかし水滴は同じところに落ち続ける。暫くすると映像が等速に戻る。
『話すからこの水滴を止めてくれ!あれはジョージ国王が悪いんだ!いきなり戦略資源を強襲揚陸艦で持ってきたと思ったら、これを受け取る代わりに日本に攻め込めと言われたんだ!戦力のことでごねたら、奴は大量の戦車や武器弾薬を渡してきた!だから約束通り攻めたんだ!ほら話しただろう?!だから止め』
「これとか面白いんじゃない?」
『か~にさんのハサミで~ちょっきんな~♪もひとつ~ハサミでちょっきんな~♪』
そこに映されていたのは目の前にいる少女が歌を歌いながら裁ちばさみで無理やり男性の愛息子の指を先から回数に分けて切り落としている様子であった。
「オリバー!オリバー!」
男性は涙を流しながらガタガタと椅子を鳴らしてもがく。少女はニコニコと微笑み男性に近づくと耳元で囁く。
「おじさん?昨日の夜ご飯はなんだったかな?」
「…ハンバーグだった」
「そうハンバーグ!おいしかったでしょ?なんせおじさんの好きなものしか入っていないからね!感謝してね?」
男性は思い出した、昨日のハンバーグは少し筋っぽかったと。
「それじゃおじさん?今日は何して遊ぼっか?」
オアフ島 ヒッカム航空基地 44分隊寮
「やけなのれす~!!せっかく楽しみにしていたのに…」
二階にある間宮・南の部屋は現在可愛らしい酔っ払いに占拠されていた。片手にはノンアルコールオレンジチューハイ、片手にはチョコレート。2人はよくもこの品ぞろえで酔っ払えるものだと感心していた。しかも飲んだのは今持っている瓶入りノンアルコールチューハイ1本だけである。そんな酔っ払いを肴に二人はハイボールを飲んでいた。
「まさかほぼジュースレベルで酔っぱらうとは…あたしも失念していたわ」
「あれ確か冗談で買ってきたもんだったよねぇ?まぁ…ビタミン剤でだまされるレベルの脳みそだし…」
コソコソ二人が話していると酔っ払い改め黒井芽衣が絡む。
「何なのれす~?そこの二人は私のおかげでけがをしちぇいないことを誇るのれす!」
アルコールは入っていないのにろれつが回らなくなっているのはきっと気のせいだろう。そう二人は考えるようにした。すると階段を上る音がしたかと思うと部屋に六花が入ってきた。
「先輩方、僕のチョコレート知りませんか?って…あちゃ~」
六花が右手で頭を搔いている。
「飲ませてないわよ!それもノンアルコールだし!」
「そうそう!チョコレートは芽衣ちゃんが抱えてきたから知らないよ!」
「そのチョコレート洋酒入ってるんですよね…弥生さんがいつも作ってみたとか言って渡してくるんですけどいつも入ってて…」
六花は芽衣の前に置かれている箱から一つ取り出すと南に投げて渡す。
「確かに入ってるねぇ」
「それでこの様ですか…」
「それでなんだけど芽衣ちゃんなんかいつもと違って強気に絡んでくるんだけどどういうことなのかしら?」
六花はため息をつくと話し始める。
「小さい頃からメイちゃんはアルコールが少しでも入るとすぐ酔っぱらうんですよ…。酔うといつもはため込んでいることを言ってしまうみたいで…。如何やらアルコールを毒物と能力が認識しづらいみたいで1時間ほどこんな状態です。水を飲ませればいいんですけど…。嫌じゃないでしょう?先輩方」
「「それはそうだけど」」
六花はすっかり出来上がってお眠な様子の芽衣をお姫様抱っこすると、その寝顔に微笑む。
芽衣はそのころには夢の世界に旅立っていた。
7年程前 五月家
「私達は仕事があるからもう出るわ。芽衣、後でここに連れてくるけど、新しい家族と仲良くするのよ。賢いあなたなら出来るわね?」
「分かりました…。お母さん、お父さん」
お母さんはいつも家にはいない。お仕事が忙しいという事はわかってはいるけど…お母さんがお話に付き合ってくれたのはいつだったかなぁ…。お父さんが家に帰ってきてくれたのはいつだったかなぁ…。…寂しい。
芽衣は夏休みでも出かける用事も同行者もいないため、奥の書斎に本を読みに行くことにした。
本は好きだった。本の中なら自分も幸せな人物になりきれた。芽衣は棚の低い位置に置かれた古い童話集を手に取った。芽衣はその中でも好きなものがあった。その話には多くの苦難や攻撃から姫を守る王子様を描いたものであった。芽衣はそのページを開くと読み始めた。
どれくらい時間がたったのだろう。不意に自動車が離れていく音と部屋の扉が開く音がした。如何やら同居人が来たようだった。話では親戚の子供で、少々元気すぎるとのことだった。芽衣はその人物に軽く恐怖を覚えつつ、自室に向かうこととした。
その部屋には大きなリュックサックを背負っている。ショートカットの黒髪の子どもが立っていた。
「そこの人は誰ですか?お金なら300円しかないですよ」
声を掛けるとその子は振り向き目を輝かせていた。如何やら危害を加えようとはしていないようだった。
「初めまして!ボクは水無月六花だよ!」
「五月芽衣なのです。よろしくお願いします」
六花君?が手を差し出してきたから握手はしたけど…男の子かぁ…。怖いなぁ…。男の子なんて私に酷いことしか言わないし…。
ふと芽衣は思案をやめると彼?はこちらをのぞき込んでいた。
「可愛い女の子でよかったよ…。男の子と一緒だったらどうしようかと」
芽衣はぽかんとしていると、六花はいぶかしむような眼で見ていた。そして、少し頬を膨らませると
「もしかしてだけど男の子と思ってるの?こんななりだけど、ボクは女の子だよ!!もう!」
「女の子…?本当に?」
確かに男の子にしては骨格が違う。改めて見るとかなり整った顔をしていた。彼女は体全体で不服申し立てをしている。芽衣は少し彼女に興味を持ってきていた。
暫くして、緊張もお菓子によってほぐれた後、彼女は不意に芽衣の手首をつかみ、玄関に向かおうとした。
「えっ!いきなりどうしたの?」
「ここら辺を案内してほしいんだ!ほら!行くよ!」
いきなり手首を引っ張ってきたが、彼女は他の子と違い、力任せには引っ張ってこなかった為、少し驚いていた。
「もう…家にいてばかりじゃキノコ生えちゃうよ!行こっ!」
そう言い私を連れていく彼女は昼の日に照らされ輝いていた。まるで童話の世界のように。
彼女が家に来てから私は、よく外に出ていた。彼女はいつも芽衣のそばで話しかけてきてくれた。今日の天気のこと、庭の花がどうだったか、外に出ると魚を見つけて私に楽しそうに伝えてくるなど、見慣れた町はその時から輝いていた。しかし、私にとって嫌な時間が来てしまった。私の悪口を言う同級生に会わないといけない。それだけで、私も気分は晴れなかった。
「芽衣ちゃん?行くよ?」
「あぁ…うん!行こうか六花ちゃん」
通学路でも彼女は話しかけてくれている。前の学校はこうだったとか、校庭が広いから楽しみだとか、そんな話をしている彼女は楽しみにしているようだった。
昼休み、私がいつものように本を読んでいると、左横からやかましい声が聞こえた。はぁ…今日も巻き込まれるのかぁ…。案の定そちらの目を向けると、小学生という若さで濃い目の化粧をして強く香水の匂いを漂わせた少女がいた。彼女は鈴本さん。お父さんは政治家らしく、それを理由に威張っている人。今、私がこのような目にあっているのは彼女が関係していて、如何やら彼女は私に対して対抗心を持っているらしいのです。私はそんな彼女が少しうらやましいのですけどね。彼女は良い点を取ると両親に褒められ、更には彼女の誕生日には一緒に食事をしてくれるらしい。羨ましいのです。そう考えていると鈴本さんが焦れたのか語調を強めた。
「五月さん?今回のテストはどうでした?まぁ…五月さんごときが出来るはず「全部満点取れました」なんですって!!」
はぁ…最初は仲良くしようと頑張ったはずなのです…。共通の話題を探すとか。よく話しかけたりもしたのです。でもどう接しても「憐れまないでもらえません?」とか、「私は政治家の娘ですのよ?あなたのような底辺とは違うのだけれども?」と返されて、正直言って面倒になったのです。そうしたら親の力を使って私のあることないことを話したらしい。おかげで今では学校どころか町でも孤立している。
「どうせ、先生方をたぶらかしたんでしょう?全く意地汚い…」
その後もぐちぐちと何か言っていたが、無視してしまうことにした。どうせ反論するほど悪者扱いになる。芽衣は本に目を再び向けると、横の雑音を聞かないようにした。寧ろ私を貶めるより自分が頑張ればいいのにと考えつつ、芽衣はその本に集中した。
「芽衣ちゃ~ん!帰るよ~」
授業も終わり、帰ろうとすると六花が教室のドアを開ける。すると、クラス中がざわつく。彼女は黙っていれば中性的な顔立ちの美少年である。そのざわつく中に鈴本さんもいた。
「先輩?もしかして五月さんのお兄さんですか?宜しければ話でも「ごめんね。芽衣ちゃん帰るよ」」
六花ちゃんに手を引かれて出る教室の中から、鈴本さんの恨めしそうな視線を感じた気がした。
下校中、六花ちゃんが学校であったことを楽しそうに語っている。授業は少し物足りないとか、何故か女の子に囲まれたとか。それを聞いていると六花ちゃんはふとこちらに話を振ってきた。
「こっちに話しかけてきたあの女の子さ~。なんて子なの?」
「鈴本さん?」
「どんな子なの?」
「私には扱いが難しい子かなぁ?少し苦手」
「ふぅ~ん…そっかぁ」
六花は顎に手を当てると、また今日の話を始めた。
次回はいつか!続く!