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美少女とは、ひたむきさと多くの愛情で出来ているらしい。

日向のスイートマジック前日譚です。何故か書きたくなってしまった。

「ねぇ、涼花お姉ちゃん?」


「どうしたの…?日向ちゃん?」


何時も遊びに来て手伝ってくれる日向がこちらを向いて服のすそを引っ張ってくる。


「お姉ちゃん最近笑顔が多くなったね!可愛いよ!」


「そうかなぁ…?ならいいんだけど」


何時から笑えるようになったんだろう。それも全部吉継さんのおかげかなぁ…?


去年秋


「…い!お~い!涼花ちゃん?どうしたの?ボーっとしてたけど?」


「すみません…。ご注文は何ですか?お兄さん…」


常連として来ているお兄さんが私に声をかけてきた。いけない、ボーっとしてた。


「オムライスお願い」


「かしこまりました…。少々お待ちください…」


注文を伝えに行こうとするとお兄さんから声がかかる。


「ねぇ…。大丈夫?」


「えぇっと…はい?」


何か変なところでもあったかなぁ?まぁいいや!お母さんと一緒に頑張らなきゃ!お父さんはいつ帰ってくるのかな…。それまではお母さんを支えなきゃ。



ある日、学校の実習で射撃訓練があった。私はいくら頑張っても数発しか的に命中しなくて、成績が少し不安だったのだけど、今日は訓練大隊所属の先輩達が指導に来ると言う事で下手なところは見せられなかった。でも…。


「二階堂は少し不安な出来だな」


駄目だった。うまい人たちはすぐ先輩達がついて訓練していて。私はひたすらに当てると言う事を訓練していた。すると後方で。


「教官。私も指導に行ってよろしいですか?」


「栗原君、しかし…首席の君の手を煩わす訳には…」


「それは肯定と判断します」


先輩の中でもエリートそうな方が参加するんだ…。こうなりたいな…。そう思っていると伏射状態の私の背中の上から手が伸ばされた。そして、話しかけてくる。


「足は60度くらいに開いて銃と右足が直線上にあるようにして、そう。そしたら両目で照準器越しに的を見るんだ。良し発射!」


私の撃った弾丸は綺麗に的の中心に当たっていた。思わず顔をほころばせると、その人は言った。


「うまいじゃないか!涼花ちゃん」


その声に振り向くと目の前には常連のお兄さんがいた。何故かその時に世界がきれいに見えた。その時は達成感を感じたからかなと思っていたけど。


その日からお兄さんは、いえ、栗原さんは店に来ては、基地の射撃場に連れて行ってくれて、そこの教官長の方を紹介して、指導をしてもらえる様にしてくれた。おかげか、射撃の成績は上から数えるくらいに良くなった。そんな訓練の後はよく甘いものをごちそうしてくれた。そんな喫茶店内の事だった。


「ねぇ、涼花ちゃん。最近元気ないね、どうしたの?」


「いえ…!何でもないですよ…。私は元気です…!」


「ふ~ん…そっかぁ。そんなに俺頼りないかなぁ?」


「でも、栗原さんのお手を煩わせるほどでは…」


拗ねたように栗原さんが答えるのに私がかぶせる。こんなに私に良くしてくれているのにさらにお願いなんて…。


「まぁ…そうだよねぇ」


そんなつぶやきがため息とともに聞こえてきた。その時の私はどんなしたのかなんて鮮明に覚えている。笑った。無理して絞り出したように。そんな顔をした私に栗原さんは少し顔を渋くさせた。



それからはひたすらに頑張った。栗原さんを支えられるような人間になるために。恩返しできるように。…何よりその隣に居たいから…。お陰で訓練大隊の中でも優秀な所に入れた。忙しいのか店に来るだけになった栗原さんに言うと、


「ねぇ、無理しないでね」


とだけ言われた。私は無理なんてしていない。でも頑張らなきゃあなたの横は歩けない…。



分隊のメンバーはみんないい人だ。リーダーシップのあるさくら先輩や明るい詩緒ちゃん。そして、真面目で優秀な唯ちゃん。4人が集まって数週間が過ぎたころ。東城教官からある発表があった。


「真面目にやれば44分隊員と合同訓練を手配してやろうかな?」


その声に真っ先に反応したのは唯ちゃんだった。


「涼花ちゃん!詩緒先輩!さくら先輩!協力してくれませんか?やりたいことがあるんです!」


「私も利害が一致したからいいよー!」


「目指せモチモチほっぺ!」


なんか煩悩まみれの人もいるけど協力しよう。強い人となら強くなれるはずだから!


「頑張ろう…!」


「「「「えいえいお~!」」」」


4人はそれぞれの思いを胸に戦いを始めた。



「成績を発表する!優良分隊は!…6小隊24分隊!おめでとう!」


2人は抱き合い、唯ちゃんは崩れ落ち、涙している。私は…これで強くなれる。


「それで唯。やりたいことって何?」


詩緒ちゃんがあの時は保留になった質問をする。


「私の…お姉ちゃんはなぜ死んだのか聞かないといけないんです。水無月さんに」


初めて会ったときに聞かされた話だ。何故訓練大隊に1年飛び級までして入ったのか。それは姉の最期を知るため。何故自警団員の姉が誰も死人が出なかったと言われる自警団内乱に巻き込まれて死んだのか。それの手掛かりは44分隊員水無月六花が握っていると聞かされたと。


「水臭いわね~言ってくれればよかったのに」


「唯ちゃん…良かったね…」


さぁ、強くならなきゃ。もっともっと…。あの人に届くまで…。尊敬なんかじゃなくパートナーとして支えるため…。



44分隊員は強かった。戦いには無駄がなく。教え方も優しく親切だ。だから私は技を盗むため、観察をして、真似をしてを繰り返した。そうしたらなんと44分隊員のみんなが指導をすると申し出てきた。3人にはすねられたが私はこのチャンスをつかむつもりだった。


「先ずは動きを覚えて…」


六花ちゃんの技術は無駄のない動きだった。予備動作を短縮して動きを読ませない。お陰で潜伏や強襲訓練では動きを読み、相手の裏をとれた。これで…。


「この部位だと、ここが止血に最適なのです」


芽衣ちゃんは医学を教えてくれた。どこをどうしたら止血されて、処置はこうすればいいなど医者まではいかないが応急処置なら可能になった。これで怪我しても治してあげられる。


「こう…なんて言えばいいのか。距離を見て風速を感じてパパパパーンって感じに計算すれば」


南さんは説明下手ではあったけど分かりやすく手取り足取り教えてくれた。でもそれは…不可能かな?どうすれば移動しながら1キロ先の間とのど真ん中に当たるの…?これで…支援できる。



「ねぇ…貴女本当に大丈夫かしら?」


「大丈夫です…。間宮姉さん…」


間宮姉さん、栗原さんみたいなこと言ってる。最近栗原さんに会えてないなぁ…。何だろう、心がしぼむ様な気持ち。


「何が大丈夫よ!大丈夫な子はそんなこと言いません!」


「はっはいぃ!」


間宮姉さんは子供を叱るように続ける。


「今日から貴女の訓練は他人に甘えることよ!貴女はいい武器を持ってるの!何で使わないのよ!そのか弱くて頼ってほしくなる容姿なんてあたしが欲しいぐらいよ!なのに貴女は「あの人の為、頑張らなきゃ」か「大丈夫、まだまだ」しか言わないじゃない!構いなさい!甘えなさい!あわよくば利用しなさい!いいこと!」


その言葉は何だか心に突き刺さった。栗原さんに私は何といった?どう接した?そればかりが頭を駆け巡った。お父さんに、お母さんに私は何と言ってきた?急に目の前がくらんだ。


「全く…どこの馬の骨に惚れたんだかって…!ねぇ!涼花ちゃん!」



「ここは…家…?」


いつもの寝室。いつもの天井。そんな部屋に太い低い声が響いた。安心するようなとても会いたかった声。


「涼花、ただいま」


お父さんが帰ってきた!

お父さんはベッドから体を起こした私を抱きしめ頭を撫でてくれた。


「大きくなったな。もう数年ぶりか?ニカイ堂の看板を見て驚いた。もうお父さんは今日で引退なんだ。今日からはニカイ堂のコック兼お父さんだな!」


何だか視界が歪んできた。そっか、安心したんだ。もう頑張らなくていいんだ。そんな時あの言葉を思い出した。


「ねぇ、お父さん」


「なんだ涼花?」


「ありがとう。後お帰り」



ある日、小さな女の子が店に来た。黒っぽい茶髪のサイドテール少女。お姉ちゃん達の代わりだとか。能力者だとは知っていた。しかし…怖い人の専門家には見えなかった。


「ふぅ…今の凄いでしょ!褒めて褒めて!」


「いい子…いい子…」


「フフ~ン♪」


今回の彼女の任務はレストランに来るチンピラを生死は問わずもう来なくすることらしく、日向が店員として働きつつ護衛することになった


「次は…このコーヒーを3番に運んで…」


「はーい!」


私も妹がいればこうだったのかな?トテトテと運ぶ姿はお客さんにも好評だった。


「お母さんのお手伝いかい?偉いね」


「お姉ちゃんのお友達の所で、お仕事でお姉ちゃんがいないからお世話になってるの!」


「そうかい、へぇ」


日向は笑顔で答える。それに私もお客さんもニッコリとしてしまう。


暫くして店のドアが開き私が一番会いたかった人が来た。


「お兄さん…いらっしゃい…いつものオムライスでいい…?」


「くーりはらっ!ここの常連さんなんだ!へー。いらっしゃいませお兄ちゃん?待っててね♪すぐに運ぶから!」


「唯一の常連のお兄さんとは知り合い…?」


そう聞いてみると遊び相手だったらしい。そして、私のことをちらりと見るとニヤッとして続けた。


「栗原って言って、新隊員への訓練では厳しいけど、それらの全て部下に生き残って欲しいからとかいうツンデレさんだよ!あと凄く優しいんだ!だから私は信頼してるの!」


「ふぅ~ん…栗原さん…私も出来るなら栗原さんの部隊に配属されたい….実はねずっと前から好きで…あの笑顔が素敵の所とか…ドジった時も慰めてくれて…」


「衛生兵は今あの部隊にはいないと思うけど…」


ボソッとつぶやき、栗原さんのテーブルに日向ちゃんは行ってしまった。その前にハハァ~ンと言わんばかりの顔をしていたのでばれていたんだろう。


「栗原~!今部隊には衛生兵って居る?」


「えっ!いや?いないと思うけど…小銃手の俺と機関銃手の田中、工兵の西寺の3人だしな」


「衛生兵でマークスマンの新隊員入れない?」


「素性は?」


「小梅姉が認めたマークスマンで、芽衣お姉ちゃん仕込みの応急処置技術持ち。因みに女の子だよ!」


「俺らの第4偵察班には勿体無いなぁ…。もっと安全な所とかだな…」


「条件は栗原がいること。理由は本人から聞いて」


それに押されてキッチンから出ると、身なりを確かめて栗原さんのもとへと向かった。


「それで名前は?]


つかつかと私は栗原さんの席に来て敬礼をした。


「二階堂…涼花です…。あの…その…よ、よろしくお願い…いたします」


赤面しながら私は栗原さんに挨拶をした。緊張していつも見たいに話せないよ…。


「日向ちゃん…電撃をかましてくれ…。ここに来ること自体が夢だったかもしれない」


「はぁ~い」


何故か電撃を食らい、嬉しそうにしている栗原さんの姿がそこにあった。


「夢じゃない…。バンザーイ!バンザーイ!」


「理由は聞かないの?」


「理由は何なの?」


「あの…それは…これを読んで…ください…。失礼します…!」


恥ずかしくなってしまい、私はいつか渡そうとしていたその…ラブレターを渡した。


「ふんふん…『常連のお兄さんへ。いつもあなたがお店に来てくれるのを楽しみにしてました。最初はただ、私の担当のオムライスを美味しそうに食べるなぁって思ってました。でもその内にお兄さんの事を目で追ってました。任務でお兄さんが来ないときには落ち込んでいました。だからレジスタンスに入れば会えるかなって思って毎日東城教官から付きっきりで訓練を受けて…っていかがわしくないですよ!普通のです!でも店でしか会えなくて…だから想いをこの手紙に書きます。私はお兄さんが好きです。ラブ的な意味です。だから付きあってください。二階堂涼花より』」


声に出して読まないでよ…。日向ちゃん…。


「あの…これオムライスです…。召し上がれ…?」


不器用だけどハートマークをケチャップで書いてみた。そして、それを見た栗原さんは私を立ち上がって抱きしめ、こう言った。


「こちらこそ好きです!どんなことがあろうとも涼花ちゃんには生きて隣にいてもらいます」


「じゃあ…部隊移籍契約成立…ですね…?」


「ん?そんなことは簡単には「出来るよ?」日向ちゃんまさか!「パパを支配してるのは私だよ!」」


流石は六花の妹だなぁ。そう思っていると、店内にガラの悪い人が来た。


「おら!!みかじめ出さんかい!」


やはり怖くて、固まっていると栗原さんが抱き寄せてくれた。そして一言「大丈夫だよ。涼花ちゃん。僕達に任せて?ね?」


「お兄さん達が私のお姉ちゃんの友達からみかじめ取ろうとしてるゴキブリだね?今私はキレてるよ…」


「ガキは引っ込んでろ!」


「ふぅ~ん?日本任侠会はそういう姿勢なんだぁ?」


「何で組を知ってる!」


「下部組織の事は知っておかなきゃ。ほら」


日向ちゃんがきれいな金細工の弓と犬のマークの懐中時計を見せた。それに怖い人は真っ青になっている。


「「ドン・ソーレ…」」


「残念だなぁ…。沼野のおじさんはうちに従うって言ってたのに…。裏切るんだぁ…。」


「あっアニキ!組長につながったっす!」


『おい!何だ騒々しい…』


「もしもし?私」


『ドン・ソーレ!何でしょうか?』


「そうそう用事があって!それでね♪堅気に手を出すなと言ったよねぇ?裏切りかな?」


『いえ…私は…。何も関与してないので…。』


「分かった!なら…楽しい狩りを始めようか」


『ひっ…!だ、誰ズダダッダピープツッ』


「ふう…。で?お兄さん達?10数えるから消えて?」


「ひっひい!「10!…1!」ギ」


電撃が走り、二人は無かったことにされた。人体の電気分解実験にはなっただろう。


「さぁて!お二人とも!もう安心だよ♪」


そこには心底から二人の門出を祝う素敵な無邪気な笑顔があった。


「無理しなくて、背伸びしなくていいんだよ。辛いときは僕に任せて?そうだ!お父さん帰ってきてよかったね」


「何でそれを知ってるんですか?!」


栗原さんはいたずらっぽく答えた。


「それは肯定と判断しますってね?」


最後のセリフの繋がりをわかって頂けると栗原の動きが分かります。東城さんは功労者表彰ものです。


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