白薔薇の旗印 5章
こういう話書いてて楽しいです。睦月も超えて如月ですねぇ…。バレンタインデー?いえ、2月14日はふんどしの日らしいですよ(すっとぼけ)何故か自分で食べるチョコレートセットは毎年用意してますけどね。
オアフ島 兵学校敷地内 初等部棟
「ふぁ~…。おはよ~」
けだるげに朝の挨拶を教室の横開きのドアを開きながら日向はクラスメイトに言う。それに呼応して男女問わず返答が帰ってくるが、軽く反応を示すと席に着いた。
「おはよう。人気者だね」
「そうかなぁ?まぁ…仲が悪いよりはいいけど」
微笑み、優し気な口調で日向に声を掛けるのは東城さんの娘の花。それに対して気にも留めないように返すのが、いつものことである。姉から朝、寝ぼけまなこで受け取った紙パックのミックスジュースにストローを刺し、飲んでいると花が興奮したように話しかけてくる。
「ねぇねぇ!今日4年生のクラスに転校生が来るらしいよ!」
「珍しいねぇ…」
いつもより反応が薄いのは朝に滅法弱いため、まだ意識がフワフワしている為だった。
「何でも金髪で、イギリスの貴族階級なんだってー!」 「ブフッ!!」
「ヒナちゃん汚いよぅ…」
吹き出すだけで済んだだけでもほめてほしい。日向には『日本に来れて、貴族で、金髪美少女で、こういう事をやらかしそうな王女殿下』にしか聞こえないからだ。どうせこう来るのだろう、「ヒナタ~
『ヒナタ~会いたかったわ!!これが日本のエレメンタリースクールなのね!!』
ドアをバァン!と開け、素晴らしい身のこなしで飛びついてくる英語を話す塊を受け止め、ため息をつく。
『リ~ズ~!また抜け出したの!』
『違うわよ!お兄様から許可が出て!』
『へぇ…何て?』
リズは胸を張って答える。
『好きにすればいい、って』
多分言われたのは『もう好きにすればいいじゃないか…。はぁ…』だろう。
『それは許可じゃなくて諦めだよ…』
「ヒナちゃん?なんて言ってるの?知り合い?」
花は小首をかしげておずおず問いかける。リズはそれに気が付くと顔をペチペチ叩いて話し始める。
「私は大体一年くらい前からヒナタと友達だったエリザベスよ!愛称はリズでもエリーでもいいわ!貴女が…花さんだったかしら?」
「えぇっと…はい…」
いきなり日本語をスラスラと話し出したイギリス人に戸惑いつつ、花は肯定する。
「ヒナタの友達なら私の友達でもあるw「お嬢さま、朝のホームルームが始まってしまいます」あら!じゃあね~!」
エドワードはどこからともなくリズの背後に現れると密かに耳打ちする。それを聞いてリズはそそくさと退出した。
「ねぇヒナちゃん、あの人ってどういうつながり?政府高官?」
「それよりもやばい人かな?」
日向の頭は完全に目覚め、軽い倦怠感に襲われていた。
日向の学業成績はかなり優良である。一人目の姉は幼い頃から山や森に運動もかねて連れ出して、もう一人はどんどん覚える事に楽しくなってきて、4~5歳までには初等教育を叩き込まれていた。つまりは…。
「13+6はいくつでしょう?はい!黒井さん」
「19です!」
「よくできました」
日向は座学が退屈で仕方ないが、それでも大人しく受けているのは、横にいる花が説明を求めてくるのでまだ気が紛れているからである。しかし体育ではそうはいかない。
「はーい!今日はマットの上で前転をしてみましょう」
「先生~日向ちゃんが前回りの後に飛び上がって体操選手みたいに空中で回転して遊んでいます」
「見て!今なら私バッタの気分!」
「ヒナちゃ~ん!先生に怒られちゃうよぉ!」
他の悪ガキと違って、言えば真面目にやるので更にたちが悪いと体育教員は感じていた。真似しようとすると本人から危険性を伝えてくれるので真似する生徒はいないが、チーム対抗戦とかになると熱中してしまい何かが起こる。ドッチボールでは男子をコテンパンにして、持久走だとへばってしまった花を抱えて二番手に1週差をつける。しかし何故かそんな目立つ彼女を排斥しようという動きはない。何か問題を起こすと大体着物姿の女の子がげんこつをして、叱っているのをよく見るが…。
「給食♪給食♪」
「ヒナちゃん食べるの好きだよね。私はそんなに食べると太っちゃうや…」
「その筋肉美で言うか…」
花はダイエットという名目で椿や六花、大抵暇している栗原&涼花ペアに徒手格闘や身のこなしなどを教わっている。目的は本気のお父さんを超えるためだそうだ。なお、東城秀人本人曰く「いつも本気で相手してるけどいつのまにやらボコボコにされるし、これまでの恨みというつぶやきに凄く殺気を感じている」とのこと。因みにこの前六花と涼花に続く鬼ごっこ逃走成功者となった。共通点は気配遮断。
日向達の兵学校は初等部・中等部・高等部共通の大食堂で食事をする。食費は実質無料。その代わりに月一回のボランティア活動をやらないといけないと言うのがあるが大したことではない。たかがパトロールや雑用程度である。
「日向ちゃん!学校はどう?」
「塩原のお姉さん!楽しいよ!」
「ねぇ…うちの子に「六花お姉ちゃんに勝てたらいいんじゃないかな?五十鈴お姉さん」勘弁して…」
「日向ちゃん!!どうぞこちらへ!!」
「ありがとう!」
「いえ!失礼します」
日向は学園内でみんなの妹ポジションである。人懐っこく明るい性格、可愛いらしい容姿、程よいソプラノボイス。そして、年上でも異性でも分け隔てなく話しかけて空気を明るくする力があるからだろう。自警団員や教育大隊のメンツはいつも癇癪に悩まされてはいるが、今の所基地を巻き込んだ可愛い?いたずらレベルである。
「今日は中華か~。六花お姉ちゃんしか作れないからそんなに家で食べれないなぁ」
「ヒナちゃんのお家、お姉さん達の隊員だけで住んでるんだっけ」
「調理担当は六花お姉ちゃんと椿ちゃんで、掃除は家に基本いる日穂姉と小梅姉がやって…」
「何の話かしら?」
向かいの席にトレーに今日の給食を載せたリズが座る。いつの間にか現れたエドワードが紅茶を3人分淹れて差し出してくる。
「うちの話さ。誰がどういう事をやっているかとかね」
「うちはカーターお兄様が執務をしてるから私は賑やかしかしら?」
紅茶を飲みながらリズはさらっと言う。
「へぇー!リズさんはやはり貴族とかなのですか?執事さんもいるし」
「「貴族どころか王族なのだけども」ねぇ…」
「王族…?ということは…プリンセス?!」
花は驚き目を回しかけている
「こんなお転婆プリンセスなんてねぇ…」
「大体あなたに汚染されたせいで変わってしまったのだと考えてるわ」
日向は肩をすくめてわざとらしいため息をつく。それに対して淡々と責任転嫁を始めたリズだったが、花からしてみればそこにいるのは童話に出てくるような見た目のお姫様の為、途方に暮れていた。
「もしかしてさっきの対応で『不敬であるぞ~!ひっとらえよ!』からの首スパンとかが…」
「フフッ♪そんなこと行おうものなら目の前のこれにウェルダンになるまでローストされるわね…。安心して、そんな傲慢な奴ら、今はいないわ」
リズは笑いながら優しく答える。花がほっとしていると更に続けた。
「寧ろ貴女にこんなフランクに話しかけたらあなたを愛してやまないと噂のお父様が怖いわ。私はそこまで力がないから、下手すると投獄とかあるわよ」
「多分大丈夫です。それよりも強い人最低二人が味方なので。お父さんは武力か立場上で負けるので」
多分投獄した場合は東城秀人本人が殴打or電撃or麻酔銃による狙撃or高い高い(紐なし逆バンジー)若しくは上官からの圧力などでボロ雑巾の様になるだろう。レジスタンス内部では位が高いが周りに規格外がそろっていて、いまいち威厳がない男。それが東城秀人である。
「ならいいのだけど…。まぁ、私は貴女の事は気に入っているのだけど?是非とも友人になってくれないかしら?いまいち日本の子達はおしとやかな様で私に声もかけてくれないのよ…」
「リズは話さなければお人形みたいだから近寄り難いかもね?」
後半しょんぼりした声で話すリズに、日向はしれっと笑顔で軽口を叩く。案の定「話したらどうなるのよ!」と頭をぐりぐりされて苦痛を訴える日向を見て、花はニコニコと微笑む。
その3人組からはかなりの尊い癒しオーラが漂ってきたと、とある訓練大隊所属の分隊長は言う。因みに数人はその場で崩れ落ち、保健室は鼻血と生徒によって野戦病院チックになったとか。
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