白薔薇の旗印 3章
遅くなりました。少し家と学校がごたつきまして…。そんなことよりもいらっしゃい!まだ作者は生きてるよ!
僕達姉妹が家に帰ると僕は、10歳くらいだろうヘーゼルナッツ色の目をした金髪の女の子がリビングルームの椅子に座り、ケーキを食べていた。彼女はこちらに気が付くと、トコトコ歩み寄って来てスカートの裾をつかむ貴族らしい挨拶をして語り掛けてきた。
『貴女が日向の姉の六花様ですか。御機嫌よう。私はエリザベス・ウィンザーと申します』
英語で。
『ウィンザー家と言うとイギリス王室ですか…。なぜここに』
「りっちゃん!どういうことなのです?通訳してほしいのです!」
すると彼女ははっとしたように頭のカチューシャの上部をずらすとそこからマイクが出てきた。そこからは機械音声での日本語が聞こえてきた。
「これでいいかしら?私はエリザベス・ウィンザーです。そちらは芽衣様ですね?今回はこちらで言うイギリス王国内での内紛激化での亡命の為、私をこちら日本国で匿ってもらいたいのです」
「本国ではどの様な状態なのでしょうか」
そう問いかけると、彼女は首を振っている。すると上から先輩たち二人が降りてきてその質問を答えた。
「今日この基地内で観光しただけで20人以上のスナイパーと7部隊の兵士が襲ってきたから相当ひどいね…。撃退はしたけど…。」
「襲撃者からの尋問から、彼女は本国では王室に反乱を企てる反乱分子らしいわ。今日はその監禁場所から逃げ出したから特殊部隊を潜入させてまで生死を問わず連れ帰るつもりらしいわよ。そして、六花ちゃん。貴女は最優先排除人物らしいわ。だから何をされるかわからないわ」
彼女がここに来なければ…そういうのは酷な話だろう。彼女もあの家に生まれなければ…などと思ったことだろう。こうなったら仕方ない。何が来ようと排除すればいいんだ。…なんて考えではなく、ただもう既にわが妹三人が陥落したため断れないだけだった。
「お人形さんみたいで可愛いのです!!」
「そうじゃな…まぁ…おいても構わぬだろう。のう六花よ」
「いいよね?六花お姉ちゃん!」
はぁ…仕方ない。我ながら甘いなぁ。
彼女が来てから一週間の月日がたった。彼女は意外と暮らしになじむのが早く、僕達も特に襲撃や被害がなかった。そんなことで油断していたのだろう。ある日メイちゃんが病院から襲撃者によって連れ去られたという知らせを如月さんから伝えられた。
「六花お姉さん。すみません。私が来たせいで…。本当に申し訳が「いいんだよ~。六花ちゃん、今日は手加減はいらないよ。潰してもいいんじゃない?」えっ?」
リズは涙目で謝ろうとして、南が言葉を重ねる。
「司令部からの命令よ!イングランド王国を壊滅させても姫を救ってきなさい。生き残らせるのは無抵抗な王国民と第二王子と我らが姫様よ!特に国王と第一王子はぶっ飛ばしてきなさい!分かったわね!流石は親バカの黒井総司令長官様ね。いざとなれば陸海空合わせた総戦力も派遣するそうよ。」
間宮が檄を飛ばす。ついていけないのはリズのみで、椿以外は戦闘準備をしていた。
「「「イエッサー!!」」」
「どういうことなの?」
「彼奴は一見丁度いい人質を捕まえたと思い込んでいるじゃろうが、あれは虎の子を目の前で奪った様なものじゃ。まぁ見ておれ。王国に恐怖が訪れる」
「ここは…。連れ攫われたのですか…」
私が目を覚ますと目の前には鉄格子があり、その向こうに威張り散らした親子らしき2人と申し訳なさそうな青年がいた。二人は何か英語で喚き散らしているが何を言っているかは分からない。すると、青年が渋々といったように通訳してくれた。
「ごめんなさい。父上と兄上が貴女のお姉さんを支配するために連れ去ったのです。あれはお前は人質だぞ!怖いだろ!というような事を言っているだけですので気にしなくて結構です」
「それより伝えてください。私を連れ去った後の結末を知らないのですかと」
青年はその事を伝えてくれたようだったが、聞いてもらえず私と同じ部屋に入れられたようだった。
「話を聞いてもらえませんでした…。申し訳ございません。それでなぜそのような…?」
「気にしないで大丈夫なのです!直ぐに助けが来ますから。
クソ!なぜあの少女は焦りもしなければ慌てもしないのだ。更には脅しまでかけてきた。全く忌々しい…。
「ご報告いたします!!館の正門に4人組の女性が人質の解放を求めています!」
「そうか!良し、こちらからようき「現在、館の警備兵をなぶり殺しにして進んできています!」何を言っているのだ!数百はいるぞ!」
「しかし…もう目の前まで!」
その言葉が聞こえた後、玉座の間に死体が飛び込み、床ではじけ飛んだ。
「どうも。こちらは親族代表の黒井六花と申します。こちらからは一刻も早く私の妹を開放していただきたく思います。身代金として…。貴方の身柄の完全な形でとどめることですかねぇ?これみたいなミンチ肉になりたくなきゃさっさと解放しろ!」
「あたしは日本国代表としてこちらを渡すように言われております」
その手にあったのは宣戦布告の旨を記している書類であった。中に入った代表団はにこやかに宣誓する。
「明日の朝日は見えないと思え!」
「なっ!何を小癪な!皆の者かかれ!…おい!早くしろ!」
「援軍は来ないよ~。皆ひき肉だからねぇ」
南の指さす廊下では引き裂かれていた物や、炭と化した物体が散乱していた。そして、南の近くには芽衣とカーターの姿があった。
「明らかな敵対行為により我が国はイングランド王国と戦争状態であるとする。それではよろしくお願いします」
「こうなれば!父上ここは私に任せてください!我こそはイングランド王国第一王子オリバーである。いざ尋常に勝負!」
「…良い戦士は引き際を知っているものです」
六花は呆れて言う。
「うるさい!」
オリバーの振るった剣は弾かれて床に転がった。
「…腕が落ちてますよ?」
「お前ごときと訓練した事は無い!」
彼は剣術の技術が抜け落ちたと解釈したが、六花が言ったのは物理的な意味であった。実際にオリバーの上腕部は床に転がっていた。そして、彼は崩れ落ちた。
「あ?あっぁぁぁっぁあああ!!」
オリバーは痛みの為に絶叫したが、六花は続けてこう言った。
「足、ないですよ」
オリバーは目の前に置かれた自分の足を眺めていた。
「メイちゃん。治してあげて」
芽衣が四肢を繋げる頃には彼の目から輝きは無かった。続けて国王の方に大太刀を向けて六花は語る。
「さてジョージ国王。貴方の番ですよ。潔く戦うか、出荷日の豚の様に逃げ回るかは選ばせてあげましょう」
「ワシは死ぬ必要はない!カーター!やれ!」
「お断り致します」
「はぁ…仕方ない。日向。楽しいおもちゃができたよ」
国王は現れた人物に恐怖した。それは彼からすれば絶対的な捕食者。雷を操り、全てを破壊する悪魔だった。
「やぁ!私だよ!お久しぶり~!この前は許してあげたけど今回はねぇ…。先ずはさみしくないようにお友達先に待たせておくね!」
貴族街では紺色の軍服の集団が片っ端からリストにある家全てから人をさらっていた。肩のワッペンには【cacciatore siciliano】と文字が書かれており、その陣頭指揮を執る声は女性の声だった。
「ドンソーレからの命令よ!リストにある人員は全て解体場の労働力にするから生け捕りにしなさい!そこにいる子供達はこの荷台に詰めなさい!女子供に乱暴を働くものならその足りない頭の容積を鉛で増やすわよ!」
輸送車からマリアが部下に指示を送ると後ろの荷台から怒声が聞こえた。
「私達が何をしたっていうんだ!クソ!国王に言えばお前など…」
「あら、残念。私達はハンターオブシチリアよ。貴方達がいくら騒ごうと関係ないわ。貴方達は鴨、私達は狩人。そうね…質問に答えるなら、貴方達ある少女をさらったわね?」
「黒井則道とかいう軍のトップの娘をさらったと聞いた。それがどうした」
「貴方達がさらったのは娘じゃないわ。国を滅ぼす位のモンスターの首輪よ。今頃…ほらごらんなさい」
館前を通る輸送車の荷台から見えたのは無残に引き裂かれた死体や焼け焦げた死体。穴だらけであったり、吹き飛ばされてちぎれたものが道や扉の横に倒れていた。貴族達の中からは呻き声や水の落ちる音が聞こえた。
「この国がしたのはドラゴンの卵を持っていくような事よ。まぁ…あなた方には関係ないわよね」
そうして港へ輸送車は走る。新しい奴隷のような彼らを連れて。
「ジョージ国王陛下?これは日本側の講和条件です。受け入れてもらえますか?」
間宮の差し出す紙には講和の条件が書かれていた。先ず国王の退位。賠償のための土地としてイングランド王国所有のオセアニア州の領土の譲渡。そして、イングランド王国軍の基地の5年間の接収などと言ったことが書かれていた。
「我を侮辱するか!徹底抗戦じゃ!ザクセン公爵、海軍をオアフ島に向けよ!」
「失礼ながら陛下。わが所有兵力はもうありませぬ」
国王の右で静かに無線を取る彼は穏やかに答えた。
「航空基地は!「もう日本側によって無力化されております」海軍基地は!「何者かの手によって輸送船を含む100を超える艦船の全てが鹵獲されていったと報告がございました」もうよい!ここにいる忌々しいジャップを始末する陸軍を連れてこい!「陸軍は先の戦いで武器も士気も消耗したところに完全武装した部隊が揚陸し、全軍をもって武装を放棄し降伏致しました」」
「ついでに言うと警察は私の手下がしっかりと制圧したよ」
日向はニコニコと答える。
「調印をしてください。このままでは「うるさいぞ公爵!」しかし…」
「化け物め…忌々しい!「ほうほう化け物ね…。良くもその口で言えるものだわ」何!」
ジョージ国王のつぶやきに間宮が答える。
「叩いたら出て来たわ。王国民への重税と強制徴用。無理やり徴兵して作戦もなく散らしていく。不満を漏らせば死刑、女性なら貴族達の慰み者として強制的に産めよ育てよ。…化け物ね全く」
国王の顔がニヤリと歪む。
「その兵士をお前らは殺したのだぞ!!そ奴らにも家族はいるじゃろう!その夫を殺したのじゃぞ!」
「それがどうしたと言うんです?」
六花はあっけらかんと答える。
「メイちゃんを迎えに来たら、彼らは銃をこちらに向けた。だから死んだんです。死ぬのが嫌なら向けなければいいのに」
彼女が言うのは暴論だろう。しかし彼女は罪悪感など持ち合わせてはいなかった。彼女はある1つの事以外は全て心からなくなっている。妹や友人を守る。その為なら彼女は悪事だろうと行う。別に心がないわけではない。優先順位が違うだけなのである。
「全く…私を誘拐するなんて手の込んだ自殺なのです…」
「調印した方が身のためよ」
「六花ちゃ~ん。国王を殺さないでね~!後が大変だから」
ずっと横にいた公爵が口を開く。
「陛下!もう後がありません。さぁ!」
「何故じゃ!何故わしはこのような目に遭うんじゃ!!」
彼が怒り、そして嘆いていると、日向が明るい声で言う。
「運がなかったんだよ!今更嘆いても仕方ないよ~!おじさんの歯車はずっと狂ってたし、運命とは変えられないんだよ!変えようともがく力がない限りはね!」
こうして1日だけ行われた日英戦争は終焉を告げた。多くの犠牲と傷跡を残して。
「そうだった!この二人は頂いてくね!それじゃお姉ちゃん達またねー!」
日向は国王と第一王子を成人男性3人組と運んでいくと姿を消した。
「ヒナちゃんのああいう事には知らぬ存ぜぬが一番なのです」
「「「よくご存じで」」」
「すみません。事情を説明してもらっても~よろしいでしょうか?」
次の日、この国からは貴族も重税も徴兵も無くなり、市民代表の行う議会と前々から国王にバレないように経費をごまかして孤児院を設立したり、慈善活動を行って来た若きカーター大統領が国を担っていくこととなった。日本とは現在講和からの同盟締結の為活動が続いている。
「聞いてよ!またカーターお兄様が青い顔してるの!休むよう言ったのだけど「働いてないと不安で…」なんて言って仕事してるの!ありえないわ!」
日向は今日も窓際で友人に愚痴を聞かされる。しかし彼女に顔からは心からの笑みがこぼれていた。
「そういえばだけども日向?貴女の会社が次々と工場を立ててるけれどあれは何かしら?」
「ギクッ!何の事やら~」
「教えなさい!!」
多くの元基地の土地には看板にシチリアインダストリアル組立工場と書かれた大きな建造物が建設されようとしていた。彼女は友人に頭をポカポカ叩かれながら思う。
作りたかったんだよね~大きな船。本に書いてあった大和なんて夢があるよね~!おもちゃもいいな!欲しいな!ゲームも!後ちゃっかり本土から海底トンネル掘って鉄道が走る予定だけど黙っておこう…。
彼女は欲望に忠実だった。そして完成した時、彼女は満足するのだろうか。それは神のみぞ知る。
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