ゲームの世界で一波乱 2
ヒッカム航空基地 第一研究所 葉月ラボ
「あぁ…私のGボックス…おかえりなさい!」
葉月さんはゲーム機の筐体を抱きかかえながら、とてもいとおしそうに語りかけていた。これまでは拝借されたら返ってこないのが当たり前だったので今回の事は嬉しい誤算だった。
「わかったよー…返せばいいんでしょ~?」
日向は紙に物品のありかを書くと六花に渡した。六花がふと姿を消すとその数秒後に大量の物品を持って帰ってきた。HUDゴーグルやラジオコントロールの無人機や寝袋等々数十点あったが中にはノートらしきものもあった。
「これは?」
「うちのにあったかなぁ?」
「それは【形容詞】と【名詞】を書くと出てくるノート!」
これ以上は語りませんがスターは取れたので問題ありません。
「とりあえず!勝手に持って行っちゃダメ!分かった?」
「は~い…」
「悪いんだけどあたし質問したいことがあるんだけどいいかしら?」
「ゲームのことでしたらすみません。プレイしながらでいいですか?少し長くなりまして…」
ゲームの準備を進めると花が六花の肩をたたいて気を引いた。
「あっ…あの!ヒナちゃんのお兄さんですか?私東城花って言います!パパがいつも一緒に訓練するのは楽しいって言ってました!」
「東城さんの…ふむふむ?いい身体してるね。お父さんに鍛えられてるの?」
六花は花のことを片手で抱き上げて空いてる手で腕や足を触っていた。傍から見れば事案であるが自警団員に良くやっているので余り周りは気にしてない。
「えっ?はい!護身用ですけど…多少は」
「明日学校休みでしょ?訓練なら第3訓練エリアでやってるから来てみれば?多少なら付き合うよ」
「ほらそこの六花ちゃ~ん?若い子ナンパしないで早く始めようよ~」
南はじれたようにそう言うと六花にヘッドギアを渡した。六花は受け取ると電子世界に旅立った。
カッパー王国 魔塔アルゴン
「それでどこをほっつき歩いてたのかしら?探したのだけど?」
「間宮先輩はネオンにいたんですか?僕は山の向こうの帝都マーキュリにいたのですが…。そこで戦闘チュートリアル受けてまして遅れたんですよ」
それに間宮は怪訝そうな顔をする。それもそのはずチュートリアルなんてものはこのゲームに無い。
「チュートリアル?受けてないわよ?しかもマーキュリ?何でそんな遠くに出現したのかしら?」
それに涼花がふとつぶやく。
「ロールプレイの影響じゃない…?読んでみて…メニュー画面にあるから」
「なになに…【あなたはタリウム帝国騎士でしたが皇帝の思想に反発、そのまま国から逃げ出そうとしたが騎士団長に見つかり止む無く殺害。指名手配犯として流浪の旅に出た。】だそうです」
「なるほど…理解したよ。でもそのレベルと装備はどういうことなの?私まだ20レベルなんだけど…」
六花は気まずそうに答えた。今の六花の装備は防御力が花の5倍ある。そしてレベルは60を超えている。
「蘇生魔法ってありますよね?」
「あるわね。芽衣ちゃんが使えるわよ」
「それを僕も城の図書館で覚えまして…それをここに来る途中立ちふさがってきたいい装備の人を倒しては蘇らせてを繰り返していたらレベルがここまで来まして…。装備はその人から貰ってきました。」
「スキャン結果は騎士団の鎧ね。…すごく呪われてるけど。解説文は伏せ字が多くてわからないわ」
スキャン結果
【騎士団の兜(呪)】 元は○○○○に使われていた兜。○○のところに「エマ、アリス○している」と書いてあるが伝えることはかなわなかったようだ。『死ぬ前に会いた○○○○ア○○』
【騎士団の鎧上(呪)】 おびただしい○○○○に覆われていたせいか白銀の○○○○部分が赤黒くなっている。夜な夜な「○○に会いたい。」「ごめんよ…お前の元には○○○○」と聞こえてくる。『エマ、○○なパパ○○してくれ』
【騎士団の籠手(呪)】 数多の○○を率いてきた○○○○の籠手。腕から切り落とされた為、もう率いることはないだろう。『お前ら生き○○○…』
【騎士団の鎧下(呪)】 腰元には布で作られたパッチワークの○○○らしきものがついてはいるが今では○○と○○にまみれてその名残が残るだけである。『死に○○○○…まだ○○○○…』
【○○○からのプレゼントのブーツ(呪)】 かつては国を○○○に地面を踏んだが今では○○○○の○○を踏みしめている。革の美しい靴は赤黒く染まり落ちることはない。『俺を殺すのは構わない。ただ○○○と○○には手を出すな!』
「見てるだけで疲れるわ…。芽衣ちゃん浄化できる?」
「呪いからは悪意は感じないのです。どちらかというと残留思念?なのです」
「まぁいいじゃん!この塔のボス倒そう!」
「そうしましょう!皆さん来てください!」
低年齢組が扉を開けて入るのを見て他のメンバーも付いて行った。
魔塔アルゴン内部
魔塔アルゴンの名の通り中には蝙蝠系の魔物とスケルトンがいた。そしてモンスターの攻撃力も高く道も入り組んでいる迷路状態なので手こずるのが普通なのだが一行はスイスイ進んでいた。何故ならば…。
「僕が前でますね。『オールリフレクト』!」
六花が前で攻撃を跳ね返し。
「スケルトンは起動前に倒しておいたよ」
南が的確なサポートをして。
「『ライトニングランス』!楽勝だね!」
日向が魔法で吹き飛ばし。
「道は…こっちね」
間宮のスキャニング能力によって導かれ。
「回復魔法用意しておくのです」
芽衣の高速回復によって無傷にされる。
「私達は下がっておこう…人外じゃないし…」
「そうしましょうか…」
二人は五感システムの導入に感謝しながら回復アイテムのハムサンドを食べていた。
魔塔アルゴン最上部
重厚な扉を開けると中にはスケルトンの上位個体のスケルトンロードが豪華な装飾のされた椅子に座っていた。
「歓迎しよう生けるものよ!我は…っと、そなたは先ほど我を粉にした後、水と混ぜてこね回したものではないか!どれだけ戻るのが大変だったか…」
「そういうのいいから。歯を食いしばって」
六花がこぶしを握り締めるとスケルトンロードは急いである人物の後ろに移った。それは花の所であった。
「せめてもの道連れじゃ!」 ピキン!カランコロン…。
スケルトンロードの振るった剣は花の頭に当たると持ち手から折れてしまった。
「何じゃと…」
「昔からパパに丈夫な子になれと言われたのですごく丈夫になりまして」
丈夫(防御力386)の力でほぼ無敵の壁の為ただの攻撃ではノーダメージになってしまっている。
「ならば!」
「骨って電気分解できたっけ?」
「なんだこの殺気は…!勝てる気がせぬ。こやつなら!」
「攻撃力アップマシマシキック…」
涼花の蹴りは股関節に当たり、見事に砕き切った。
「殺してくれぃ…」
「「「「喜んで!」」」」 「可哀想なのです」 「「なにこれ…」」
「それでだけどその鎧すごいことになってるわよ」
「耳元でおっさんが囁いてるんですからわかりますよ」
六花は鎧を脱ぐとそれを全員の前に置いた。
「悪意は感じないので実体化させるのです」
芽衣が実体化の魔法をかけるとムキムキの壮年の男性が現れた。
「ふう…。鎧は狭くてたまらないわい」
「あの…どなたです?僕がミンチにしたのはもっと太った方なのですが」
六花はそう問うと男性は渋い顔になった。
「ワシはあれの前任だった15代帝国騎士団長レオニスだ。あれは今の皇帝の帝位簒奪に与した部下のチグタムで、ワシ亡き後騎士団長になったらしい。お主は知っておるぞ。あの時はスカッとした。まさか騎士団でも指折りの強者が木っ端みじんとはな」
男性ことレオニスは感慨深そうに首を縦に振っていた。
「うわぁ…お父さんそっくりでなんか変な気分」
「ふむ、お主は中々良い魂をしておる。暫く憑かせてもらうぞ」
レオニスは花の周りをまわると身体に入っていった。
「これで一件落着かしら?」
「間宮さん、このゲームの最終的な目的は?」
間宮はメニュー画面を見ながら答える。
「タリウム帝国の帝王レオニスを倒すことよ?シナリオでは呪いによって暴走した騎士団長がボスって…」
「中身ミンチだけどどうする?」
「帰りましょ。このパワーバランスじゃただの苦行よ」
「賛成!」
メインサーバーから終了のコマンドが出ました。皆さまテストお疲れ様です。