ゲームの世界で一波乱 1
行き当たりばったりなシリーズはっじまるよー
オアフ島 日本人居住区 ニカイ堂二階
「日向ちゃんが何か抱えてきたと思ったら…ゲーム機…?それと初めて見る人…」
「花ちゃんだよ!東城のおじさんの娘さん!」
「よ、よろしくお願いします!」
今日日向が抱えてきた30×20の箱は葉月ラボの戦闘シュミレーターの副産物として作られた隊員達の共用娯楽室に置かれる予定のゲーム機だった。勿論許可を取って丁重にギンバイして来た物である。
「よろしくね…。って…無線…?」
部屋の中に陽気な曲が流れた。日向は無線機を取ると二人に見せた。
「私の!」
応答ボタンを押すと葉月さんの声がした。
『ハイハイ!日向だよ!』
『日向ちゃん私が先に確保してきたGボックス知らない?』
『井原流のギンバイの魔法で消えたよ?』
『…やっぱり』
「おーい…切れちゃった」
「ギンバイ?」
「だと思った…」
ギンバイとは海軍部で食べ物などの物品を拝借することを言う。
「まぁそんなことよりプレイしようよ!ね?」
日向はリュックサックの中からヘットギアを出すと後の二人に被せた。そしてようやくと言った顔で自分も被った。
カッパー王国 王都ネオン
「みんな大丈夫~?」
「大丈夫だけど何ですこれ?」
花は目の前に広がる中世ヨーロッパのような町に疑問を浮かべる。それを聞いて日向は両手を広げて説明を始める。
「ここは葉月さんが作った【ハツキクエスト(仮)】の中だよ!このゲームは脳波を読み取って一時的にバーチャル世界に入れるのが魅力らしいよ!人体への悪影響は無いしメニュー画面を出すこともできるからそこから終了出来るよ!ゲーム内時間は実際の時間の三倍だから時間に気を付けてね」
「つまりゲームの中に入ってるってことなの?」
「せーかい!」
花と日向が話していると涼花が出現した。
「私選んだ通りエンハンサーになってる…!」
「そういえば花ちゃんは?私はウィッチだけど?」
「私は槍使い…ですか?」
三人はそれぞれ回復やバフデバフ要員のエンハンサーとウィッチと槍を使えるランサーになってる。そしてメニューを開くとアイテムやスキルなどが並んでる所にロールプレイという項目があった。
「私は魔法使いの夫婦から生まれた子供で15で成人を迎えたから冒険者として旅立った駆け出しウィッチだって!」
「私は騎士になるため村を出て冒険者になったって書いてあります!」
「私…美味しい物を探して冒険者になった…らしいよ?」
このようにプレイヤーごとに設定があり、演じるもよし無視するもよしとなっている。無事を確認して町に足を進めると剣とドラゴンが書かれた看板の付いた建物を見つけた。その前には【冒険者ギルド】と表示されていた。
「入ってみよ!」
「ちょっと待ってください~!」
中に入るとレストランみたいな所にカウンターで客の応対をする筋肉質な男とそれに何か言っている3人の姿があった。
「どういう事よ!4人以上じゃないと旅に出られない?何でなの!」
武闘家のような女性が詰め寄る。
「本当は4個以上あったらしいけど日向ちゃんが持ってったから…」
弓を背負った狩人が肩をすくめる。
「うちの子が申し訳ないのです…」
白いローブの女の子がうつむく。
「あの~どうかしましたか?」
花が近づいて話しかけると白いローブの子が振り返る。
「ヒナちゃん!って…違うのです!すみませんが黒井日向と言う人を知ってるですか?」
「ヒナちゃんならそこに…。私は東城花です。ここへはヒナちゃんに連れられて」
白いローブの子は日向に近づき頭をぐりぐりし始めた。
「ヒ~ナ~ちゃん!」
「イタイイタイ!ダメージ入ってるから!」
それを見て残りの二人はため息をつく。
「あれが日向ちゃんで、その友達のあなたと涼花ちゃん巻き込んでプレイしてるのね…。取りあえずは自己紹介よね?あたしは間宮日穂よ。そこのは南小梅よ。本当は私達だけで4人いたんだけど何故か一人いなくてね…。大体察したけど」
「南小梅でーす」
南はおどけたように言う。その裏では体力バーが赤くなっている日向が床に転がっていた。
「イタタ…。でもこれでパーティー組めるんじゃない?」
「そうだねぇ。じゃあ行こうか」
『ようこそ冒険者さん。パーティーは組めたようですね。良い旅を』
カッパー王国 カーボン平原
「ここのモンスターなら問題はないわね。というよりもみんなのスキルが強いのだろうけど」
このゲームではプレイヤーの出来ることがスキルとして反映している。つまり人外5人はチートとなっている。というかいつも通りに戦っているだけなのだが。
「私は絶対に攻撃が当たるし…芽衣ちゃんは範囲回復できるしねぇ。おまけに高火力雷魔法が飛んで必中デバフに…花ちゃん?その防御は何かなぁ?」
「痛いの嫌だなぁって考えてたら防御力が上がってました」
「攻撃がことごとくノーダメージなんだけどどういう事かしら?」
「葉月さんが『フフフ…ここにはアル〇リオス計算式を…』って言ってたからそれじゃない?」
花ちゃんスーパータンクはっじまるよ~!である。詳しくはよくわからないから特典で貰える防御力スキルの重ね掛けの産物なのだが。
「まぁ細かいことを気にしても仕方ないわ。先に行きましょう」
カッパー王国 カーボン平原 魔塔アルゴン
平原にそびえたっている黒い塔が始めのボスのオークキングがいるダンジョンである。6人はその前に立っていた。
「ここが始めのボスなのね…禍々しい見た目」
「まぁ楽勝でしょ。この火力的に」
「油断は駄目なのです!」
「でもねぇ、多分六花お姉ちゃんがいたら塔ごと吹っ飛ばしそうだし…」
「「「「「あり得る」」」」」 「どういう事ですか!?」
気楽にボスを倒しに行こうと扉を開けると誰かにぶつかった。黒くてバラの紋章のマントの付いた全身鎧にロングソードの人だった。
「敵よ!攻撃態勢!」
「ほいさ~」
全員が武器を向けると鎧から声が聞こえた。
「僕ですよ…六花です」
「六花ちゃん!何でここに!」
「その声は…涼花ちゃん?ははぁん日向に巻き込まれたのか…お疲れ様」
兜を脱ぐとそこには六花本人が現れた。
「とりあえず話は現実世界に戻ってからしましょう。もう6時ですから。日向は研究所についでに戻しに来て」
ご視聴ありがとうございました。