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時間稼ぎ行くよ~。間違えていたところが有ったので治しました。


寮内の5人が暇な時に集まるリビングルームでは珍しい光景が広がっていた。


「りっちゃん…満足した?」


「もーちょっと」


芽衣は大人しく六花になでられていた。いつもは、はたくなり立ち去るなりしているが今日は珍しくおとなしくしていた。


「雨が降るのかしら?」


「私は今戸惑ってる」


2人にとっては青天の霹靂であり、まぁ仲睦まじい姉妹ではあるが大人になろうとして背伸びをしている芽衣は甘やかしたい六花のスキンシップを避けているのであった。2人もそうこう言いつつ甘えている芽衣を見て「駄目だこりゃ…」とは思っているがスルーしている。しかしあからさまに大人しくしているのは初めてだった。そうして固まっている後ろで知ってそうな人が帰ってきた。


「ただいまー!って…あぁ!誕生日か!何がいい?」


「任せるけどゲテモノはやめてね」


「ハイハイサー!グェ!」


日向が出ようとすると間宮がわき腹をつかんで抱え上げた。


「あれは何?」


「あのカオスにあたしらは戸惑ってるの」


日向はきょとんとした後納得したように首を振った。


「あれは六花お姉ちゃんの誕生日の恒例行事だよ!由来は二人しか知らないけど私は2人の仲の良さが分かって好きなんだ!」


日向は満面の笑顔でそう答えたがその真相は分からなかった。



今から17年前 日本 東京都


軍病院にある一人の男が分娩室の前でうろうろしていた。背格好は中肉中背の少し筋肉の付いた士官で顔には焦りと喜びが浮かんでいた。しかしその後暗い顔になった。そうこれから生まれてくるのは我が子なのだが夫婦の求めていた男の子ではなく女の子が生まれる為夫婦は少し落ち込んではいた。しかし我が子なので必ずその子を愛することは誓い合った。


「クソ!まだか!六美が無事だといいが…」


士官の男こと水無月幸一郎は自身の伴侶の事を考えていた。彼は後にレジスタンス訓練教官長となる秀夫の兄であり黒井の一つ下の後輩である。しかしいつもの冷静な対応はどこへやらあたふたと廊下をうろついていた。すると分娩室から産声が聞こえてきた。


「どうですか!」


幸一郎が大きな声でドアを開けるとそこにはカーテンと静かにとジェスチャーする看護師がいた。


「全く幸一郎さんってば…」


奥から最愛の人の呆れたような声が聞こえた。どうやら元気のようだ。もう娘の名前も決めている。彼女の妊娠が分かったのは冬の事だった。その日は初雪でこの子は雪と一緒に来てくれたと喜んだものだった。だから…俺はこの子の名前を六花にしたい。雪のように美しく無垢に生きてもらいたいと願ってだ。


「後で名前を決めたから聞かせよう!気に入るはずだ!」


「軍医さん?きっとこの子の名前は六花よ。だってあの人書いた半紙をその辺に置くんですもの。六花…雪の別名ね…。あの人らしいわフフッ♪」



六花と名付けられた女の子はすくすくと育ち父親の部隊内で可愛がられるようになった。そのせいかプレゼントはことごとく動きやすい服装やスポーツ用品。遊びも部隊員や楽しくなってきた幸一郎によって叩き込まれた格闘技やスポーツ、山登り等々体を動かすものしかなく女の子の友達より男の子や大人の輪の中に入っていた。しかし軍人の為休みが不定期で転勤も多く子宝にも恵まれなかったため多くは自宅で六花は遊んでいた。


「ねぇ…今年の誕生日なんだけど…。ごめんなさい。訓練があってできないわ」


「ううん、いいよ!友達に祝ってもらうから」



「いいのかしら…?私達親になれてるのかしら」


「ごめんな…六花」


その内中国情勢も悪化して、日本軍は本格的に参戦するようになっていた。それは陸戦隊の水無月夫妻にも影響した。いきなりハワイのオアフ島に駐屯するよう指令が下った。


「六花聞いてくれ。お父さん達はアメリカのオアフ島に行かないといけない。だがお前を連れて行くのは難しい。そこでお母さんの実家に行くんだ。そこなら面倒見てくれるだろう」


「やだよ…お父さん。まだ話したかったのに…。付いてはいけないの?」


「六花…。すまない」


「…そっかぁ。分かった…。直ぐ帰って来てね」


「あぁ…そうだな…」



六花が寝室に戻ると六美が幸一郎の前に座って心配そうにしていた。


「あの子は何故連れて行かないの?まだ10歳よ。親離れには早いわ」


「…。今からの話は他言厳禁だ。アメリカで大型生物が発生したそうだ。中国方面でも確認されている。それらからの避難民はハワイに集められる手筈らしい。そこの防衛が私等の仕事だろう。しかしもうすでに南からの大型生物がいるだろう。それらを駆除して確保して防衛となるが多分我々は祖国の土はもう踏めないだろう。…クソ!六花許してくれ…。お前を愛しきれなかった俺を許してくれ…。くぅ!!」


「そんな…!六花、幸せにね」



『こちら黒井だ。どうした幸一郎?』


「明後日オアフ島に行きます」


『そうか…。武運長久を祈る』


「そこでですがうちの娘は覚えてますか?」


『あぁ…六花ちゃんだな。親戚に預けるんだろ?』


「最後の願いです。黒井大佐。ウチの娘が路頭に迷っていたら助けてくれませんか?」


『俺も死ぬかもしれんぞ』


「お願いいたします」


『分かった任せろ』




六花が五月家に入って数か月。ここでの毎日は楽しいことばかりではあったが不意にカレンダーを見て彼女は誕生日が今日だと思いだしたが、いつも通りに1日が過ぎると思っていた。しかしその晩豪華なケーキ屋ご飯が並んでいた。


「お祝い事?すごいね!」


「張本人が何言ってるの…。りっちゃん忘れてたの?」


「ほぇ?」


「誕生日でしょ!9月6日だよ!もう全く!」


「誕生日?祝うものなの?」


すると奥から芽衣ママこと、いつきさんがお茶を持ってきてイスに座ると話し始めた。


「妹から伝言があったの。「六花、誕生日祝ってあげられなくてごめんなさい」って。仕事バカの六美らしいわ」


「そっかぁ…。良かった」


六花は肩をなでおろして微笑んだ。


「それよりもご飯!先食べちゃうよ!」


既にフォークを持った芽衣がチキンに手を出そうとしていた。


「待ってよ!」


それから数年後。


「9月6日は何の日?」


「誕生日おめでとう!プレゼントなのですよ~!」


六花は中をすぐ開けると中には手作りの写真立てが入っていた。それを確かめるとテーブルに大切に置き、芽衣に抱きついて頬ずりをした。


「それもそうだけど妹の日だよ!だから…妹達を甘やかすのだ~!」


「くすぐったいよりっちゃん!」


六花はちょこちょこ近寄ってくる日向をその手の中には抱え込むと強く抱きしめた。


「絶対に僕が守ってあげる。大切なものを守れてようやく1人前だからね」


「絶対なのですよ」


「うん絶対」




オアフ島 戦没者慰霊碑


「幸一郎。お前の娘は元気に暮らしてるぞ。元気すぎて困るくらいだ。しかしお前がいればどういうだろうな…。あの子はお前を恨んじゃいないさ。…。幸一郎。見ているなら守ってやってくれ。あの子はお前らが命懸けで守ったここを守る女神さまだ。あの子はお前の子でもあり俺の娘だ。こっちは雪は降らないが【雪】はここにいる。じゃあな。また来る」


その慰霊碑には最後に大きな文字で「オアフの守り人ここに眠る。水無月幸一郎・六美夫妻」


その日オアフ島に雪が降った。まるで六花の誕生日を祝うように。


頑張って日常書きます!

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