とある日の追憶
予告通り回想です。長いので読むときは目を休めつつ見てください(そこまででもない)
「はっ!!はぁ…はぁ…。いやな夢を見たねぇ…。おやっ…芽衣ちゃん。可愛いなぁ…。」
いつもこの夢を見る。いや夢ではない。夢ならなおよいことか…。それは目の前で頭を弾けさせて命を失う親友の顔。そこには絶望や戸惑いの表情が浮かぶ。あぁ…私が右に向ければ…。なんてね…。そしてふとこれまでの事を考える。
「うぅ…クソっ私は生き残ったのかぁ…。美保…ごめんね」
目覚めたらすぐさま離れたかった千葉県内のマンションの上だった。意識がはっきりとした頃に横を見るといつも笑いかけてきた親友が転がっていた。不思議と悲しみはなかった。薄情なのかもしれないが、どうしても吐きたいという気も起きないしむしろ欲がわかない。
「さてと、基地に戻るか…」
すぐさま放置されていたバイクに乗り、基地のある習志野まで戻る。不思議だ。空腹も喉も乾かない、眠くないのは先程寝ていたからだろう。道端には戦いの跡が残されていた。習志野まではボーっとしていたら直ぐだった。
「止まれ!身分証明書を見せなさい!」
「ほら、これでいいでしょ?」
そこには民間人撤退支援のために駆り出された軍学校の生徒であるということが書いてある。
「早く司令官に報告したら避難だ。分かったな?」
「南学生。後藤美保学生はどうした?」
「撤退時にカマキリの様な生き物に捕まり行方不明になりました」
「反撃はしたのかい?」
「はい、しかしその時には絶命していました」
口からは建前がスラスラ出てくる。本当は違うのに…。
「なら、わが軍が移動しているオアフ島まで向かうぞ。日本列島はもう手遅れだ」
そして私はオアフ島の元ヒッカム総合基地に残存兵と一緒に輸送艦で逃げた。残存兵と言っても20人ほどの将官や佐官、低くとも中尉クラスの指揮官だけだった。聞かされた話によると私のような軍学校からの志願兵の生存者は13人いて、その中でも戦闘ができる状態なのは2人のみ、後は全て日常生活も怪しいくらいらしい。うちの学校でも200人はいたから各都道府県に1つずつある軍学校で4県に一人くらいの生存率だろう。聞くところによると東北や関東地方の生徒が大半でそれ以外は広島と長野に1人ずつだそうだ。そんな話を年取った偉そうな将官級の方から聞かされた。
すると後ろから来た人が私に声をかけた。
「すまない。少し話を聞いていいか?」
「何でしょうか?お名前を聞いてもよろしいでしょうか」
「私は黒井と言う。君は軍学校からの志願者だね?失礼だが何故生き残れた?」
「狙撃手なので離れて戦ってましたし、仲間をおとりにしてでも倒せと言われていました」
「そうか…いや、長野からの学生も小隊指揮官だったから命令無しで撤退したと言っていてね」
スコープ越しに食われて叫ぶ仲間達やケガしてうめく様子を見た。それでも狙撃をして食い止めるのが任務だからひたすら撃っていた。その学生も独断で動くしかなかったあの様子の中なら最良の選択をしただろう。
「はぁ、それが何か?」
「いや、向こうに着いたら君たちを集めて小隊を作るらしくてそこの管理にうちの部下と一緒に任命されたんだ」
「しかし…階級章からして大佐…ですよね?何故小隊規模を?」
「中国大陸での叩き上げ大佐だから背広組に嫌われてるのさ」
それって相当凄いんじゃ…。でも頼りになりそう。
「そうですか。分かりましたよろしくお願いいたします」
「しばらくは長野の彼とペアだな」
まぁ…2人しか動けないから当たり前かぁ。
向こうに着くと私は兵士ではなく予備役として扱われて、訓練に励む毎日が始まった。しかしペアの相手とは会えておらず、毎日あの瞬間の夢を見るため眠れずにいた。そしていつも食欲がないためエナジーバーを一つかじり先輩と訓練していた。そんなある日。
「すごいじゃない!ワンホールなんて!あたしはようやく真ん中に当てられたぐらいよ」
「あぁ…ありがとー」
おかしい、頭がボーっとして目が回る。体の力も抜け目の前の仲良くなった一つ上先輩の顔が離れる。
「しっかりして!?小梅!」
「間宮さん…。大丈夫ですよ~」
そこで意識が途絶えた。
「うぅ…ここは…」
「目が覚めたのね!よかった!」
目の前には間宮さんの顔があった。如何やら倒れて運ばれたみたいだ。手には点滴が刺さっていて、心なしか気分がいい。
「栄養失調と睡眠不足からきた過労ですって。どうしたのよ…」
「間宮さんの手を煩わせるほどでも…」
いくら先輩でもこれだけは言えない。最近この人が優しい人だと分かったから多分心配するだろう。
すると、間宮さんは私顔を両手で抑えて潰すようにして語調を強くして話した。
「あ・の・ね!あたしはあなたのペアよ!相手の事が分からなくてペアなんてできるわけないでしょ!小梅は何を隠してるの!言いなさい!ほら!」
初めてこの人が怒るのを見た私は驚いた。そしてある疑問が浮かんだ。
「ペアは男の人なんだけど…」
「あら?言ってなかった?女の子の生存者は貴女だけよ?あたしはれっきとした男よ?」
私は言葉を失った。間宮さんは外見上かなりの美人さんだったからだ。なのに男…。
「おーい…まぁいいわ。で?悩みを話さないとここにある寝顔写真を外にばらまくわよ」
「鬼!悪魔!うぅ…分かったよ…。あのねぇ」
そこから私は夢の事、欲がわかない事、そして親友を撃ち殺したことを話した。すると、間宮さんは呆れたようにこう言った。
「まず夢は現実ではないわ。夢なのだから自分の好きなように改編してしまいなさい。あと、食欲がわかなくてもしてもしっかりと食べなさい!どうしても眠れないなら間宮お姉さんが添い寝でもしてあげるわ」
「オネェさん…。ぷぷぷ…」
「しばくわよ!…フフッ、貴女笑えるじゃないの。笑顔が一番かわいいわ♪」
「そして、親友は恨んでないと思うわ。あいつらに生きたまま食われるくらいなら貴女に殺してもらった方が随分いいわよ!」
「間宮さん…。ありがとう…」
その言葉は私の中のもやを吹き飛ばしてくれた。そして、その言葉中には間宮さんの後悔の念も含まれているように感じた。
「ならあたしも秘密を話すわ。実は神様らしき人に能力をもらったの。お陰で対象のデータが分かるわ」
「あのねぇ…私も貰ったんだけど…」
「えぇっ!どんな?」
「私は視界内の全ての対象の思った所に狙撃できる能力なんだよね」
まさか能力者と会うことになるとはなぁ…。世界って狭い。
「じゃあさっきのは」
「能力だよ♪」
その後しばらく間宮さんは拗ねていた。如何やら競っていたらしくて追いつけないことを悟ったのか立ち直ってこう言った。
「貴女がスナイパー、私はスポッター。最強の二人ね!」
そういうことで私等は最強の狙撃手になった。
訓練が全て完了した事で、私達は黒井大佐の直属の部下になった。黒井大佐は大佐と呼ばれるとむずかゆいと言い、協議の結果団長と呼ばれるようになった。由来は陸軍内での黒井大佐の相性からだった。そして、ある時異常能力開花シーケンスとかいう良く分からない検査が25歳以下の人対象に行われて、予想通り私と間宮さんは能力者として診断された。
「まさかお前達も能力とは…」
「達も?」
「いや、今日戦争孤児の能力者3姉妹がいてね。すごく死んだ娘にそっくりだからか声をかけて、いつの間にか養子として迎え入れる事になったんだ…」
死んだ娘ねぇ…。酒の席で一度聞いたっけ?奥さんと娘が二人いて、どちらも中国大陸から帰ってきたら家ごと潰されていたって…。まぁ孤児を引き取る財力も甲斐性もあるし行けるか…。
そう言いながら書類を書いている団長はたまに映像端末を見てにやにやしている。
「で?今どこにいるの?」
「一人は自警団員で、一人は病院で看護師見習いらしい。もう一人は葉月ラボで保護してると言ってたな。どうも暴走しやすいらしい」
つまり上二人は15歳以上か…。看護師見習いとは随分珍しいけど。
それからしばらくして私達に任務が来るようになった。と言ってもかなりの裏の任務で、反乱分子の制圧やスパイ活動などを請け負っていた。しかし私達にとって制圧はリーダーを狙撃して、スパイ活動は間宮さんのスキャニング能力で簡単に進められていた。
「小梅~。そこの緑の服がリーダーよ」
「はいは~い!」ボフッ!
「ナイスショット!」
リーダーは脚から崩れ落ちその動きを止めた。その周りには各々銃を持って警戒するメンバーがいたが、ここからそこまでは4㎞ある。
「さて帰りますかぁ」
「ええ、そうね」
任務完了を団長に言って、私達は町にスイーツを食べに行った。すると、ガラの悪い男が絡んできた。どうやら私達のせいで辞めさせられた士官の様だった。
「おめえらのせいで俺は何もかも失った。おめえらのせいで!」
「何よ!汚職している方が悪いじゃない」
「うるせぇ!化け物め!お前らのせいで何人の人が職を失ったと思ってるんだ!」
その男は狂ったかのように怒鳴り散らした。周りの人もそそくさと逃げている。
「化け物とは心外ね。これでもただ、のさばってたあなたに比べれば随分ましよ!」
それに対して、間宮さんが厳しい口調で返した。
「人間って醜いもんだねぇ」
私はそのひどく醜い様子にこう答えた。すると、短髪の中性的な顔の自警団員が男をすぐさま取り押さえ、しばった。
「お兄さん。話は詰所で聞きますから」
その少し低めの落ち着いた声には正義感が含まれていた。あぁ…私もこんな頃があったな。そう思っていると、2人の自警団員が走ってきて会釈しながら去っていった。
「あの子…。やけに足が速いわね…。しかもあれは軍隊式の取り押さえ術よ」
「自警団で教えられたんじゃない?」
「気になるわね…」
これがのちに私の妹分になる存在とはこの時は知らなかった。
「ふー食べたわね…」
「お陰で財布が軽いよ…」
そんな軽口をたたきながら道を歩いていると、不自然に膨らんだテニスラケットバッグと大きなボストンバッグを持った怪しい15人位の人物が中央病院に入っていった。
「多分マフィアだわ。自警団員も来ていないし…。どうする?」
「様子を見て、行けそうだったら制圧するよ!」
「流石はペアね…分かってるじゃない!」
しばらく様子見していると中で悲鳴と銃声が聞こえて、多くの人が逃げて出て来た。そのうちの一人に声をかけて中に20名以上の人質がいるだろうと教えられた。
「まずはあいつからだけど、武器は腰の拳銃だけね…。小梅?拳銃は使える?」
私が腰に下げていた特殊作戦用のサプレッサー付き拳銃がテロリストの頭を撃ち抜いた。
「ご覧の通り」
「なら私はこのアサルトライフル貰っていくわね」
「あっズルい!」
中には多くの見張りがいたが、連携が取れていないのか散開していて各個撃破出来た。
「そろそろ弾がやばいかも…」
「あたしのマガジン使いなさい。…いや、後は任せておいて、ここに3人銃を持ったのと2人くらいの丸腰の人がいるわ。中には小さな子もいるし早く制圧しなきゃね」
「じゃあ3つ数えて突入ね」
「ハイハイ…3・2・1・エントリー!!」
先ず間宮さんのアサルトライフルが立て続けに2人を撃ち殺した。しかし一人のテロリストが人質を取っていた。
「近寄るなよ…。こいつが死ぬぜ」
「はーい」ボスッ!!
能力があればこんなの楽勝だった。そして、人質の中の少女が声をかけた。
「あの!ここの患者さんを守ってくれてありがとうございました!お陰で元気になった私の患者さんを軍に戻してあげられるのです!」
「あなたはなんてお名前かしら?」
「ここの看護師見習いの五月芽衣なのです!ここの方々は皆さんアイク襲来の時の軍学校からの志願兵さんだったのです!今では生活に不自由ないほどに治ったのです」
あれ?かなりの重傷だったよね…。治るもんだっけ?そんな疑問はすぐ消えた。
「お姉さん!そこ血が出てるのです!」
「ん?これ?大したものじゃ…」
おもむろに彼女が私の肩の傷口に手を当てると見る見るうちに傷がふさがった。
「あなた…能力が使えるの?」
「天使がくれたのです!これでみんなを救うことができるのです!」
彼女はフンス!と言った顔で答えた。
「黒井大佐って知ってる?」
「パパさんがどうしたのです?」
「自警団に姉がいる?」
「りっちゃんならいるのです」
団長の娘だなぁ…。しかも超が付くほどの美少女。肌とかツルツルで…。ってイケナイ!脱出しないと!
「もう安全だから出ましょ!ここにいると追加が来そうよ」
私達は彼女達を連れて病院から脱出した。その後自警団が来た頃にはテロリストは全滅していたという。
「だ~か~ら~なんであんなに可愛い子を養子にできたの~!私も団長の養子になってあの子を甘やかすの~」
「バカ言ってないで書類手伝いなさい!あたしが全部やってるじゃない!」
「で~も~!」
書類が増えたのにはある理由がある。それは自警団内で内乱の疑いが出てきている。更にはマフィアと自警団長がグルになっているらしく、そこの調査の結果を、まとめているところだった。叩けば叩くだけ埃が出てきていて、完全に黒だった。
「マフィアに防弾チョッキを渡していたのはこいつね…。外道だわ…」
「病院でも胴体じゃなくて頭を狙わないといけなかったしねぇ」
「他にも武器の横流しや麻薬の密売を黙認。クズね…」
そこに急いだ様子で良く出入りしている如月さんが入ってきた。呼吸も荒く相当急いだのだろう。
「どうしましたか?」
「自警団が内乱を始めたんだ!要求は水無月六花の殺害!実質的に1対自警団の戦いが始まった!」
「それって…。絶望的じゃない…」
「援護に行くよ!」
すると、私を如月さんが止めた。そして、あることを言った。
「この戦いは私達が手を出してはいけない。あの子は自分の手で決着をつけに行った。そして、彼女の親友は皆…死んだ」
如月さんは水色の花描かれたブローチを握りしめて嗚咽の声をあげていた。
あの内乱は軍上層部の一存でもみ消された。しかしその証人達はまだ残っていた。そんな時私達に新しい新人が加入した。
「2人共!新人だ!うちの長女なのだがな…」
「あらあの時の自警団員じゃない!」
「お久しぶりです。大丈夫でしたか?」
「平気よあんな奴。それで名前は?」
「水無月六花です。よろしくお願いいたします。先輩方」
あの自警団内乱の張本人が来ちゃったよ…。すごく目が死んでるし…それは親友が死んで、組織に裏切られたんだからなぁ…。
「あら!内乱の!」
おーい!!間宮さん地雷だから!
「…えぇ、今回の死者は4人でしたけどその中の3人は僕が撃ち殺しました…」
「あら?3人だけとはどういう事かしら?」
「他の団員は武装解除して無力化しましたから」
だから怪我人の割に死者がいなかったんだ。なるほどね。
「じゃあ誰が死んだの?」
「クソ野郎の須原団長と内乱のリーダーと親友とその親友が撃ち殺した汐里ちゃんです…」
彼女の口からは凄惨な様子を感じた。狂った団長と親友。担ぎ上げられた青年と親友を説得していたらしい子。全てが床に転がった。
「だからあの2人の分まで前を向くんです。僕が止まってたらメイちゃんは守れません!」
そう微笑む彼女の肩には階級章に様に水色の花のブローチが付いていた。
それから任務は大変なものになっていった。何故かおとなしくなったハンターオブシチリアに代わり、ギャングがはびこっていて。それらは弱り切った自警団じゃ止められなかった。だからこそ私達はあくせく働いていた。そんな時団長があることを言った。
「この腐っちまった軍を潰さないか?」
「反乱?確かにここは腐りきってるけど…」
確かにこの軍の腐敗はますますひどくなり、平然と賄賂や横領が繰り返されていた。更にはその分の税金を市民からとっており、市民からの評価は最低レベルだった。
「しかしどうやるんです?団長?」
東城さんはかなり乗り気になっていた。それはそうだろう。彼はかなりの正義感の持ち主だから。
「まずは若い下士官達を扇動してみよう。このビラを夜中にこっそり貼って来てくれ」
「わかったわ!」
「南はここのギャングを潰してきてくれ。結束が弱いからボスを殺せばすぐ潰れる」
「ほいさ~」
「六花はこいつの監視だ。写真を撮って来てくれ」
「分かった親父」
「お父さんだろ?行っちまったよ…」
そうして私達はそれぞれの方法で軍内部の調査を行った。自警団なんか可愛く見えるほど軍上層部は腐っていた。中にはまともな人もいるようだがそういう人は閑職に回されていた。そして、それを載せたビラを配ったりして軍内部でもクーデターの気風が高まっていた。
そして、爆発しそうな下士官を放置していた上層部は慌てて対応策を練っていたが、その前に私達がそこに火をつけようとしていた。
「作戦はこうだ、司令部施設に潜入して良識派の6人を連れ出してこの庁舎に避難させる。その後司令部施設の放送棟に攻撃してこの汚職に関する音声を流す。副次目標に上層部の3人の大将の確保。分かったな?」
「確保の方法に指定はある?」
「怪我はさせないでくれよ。見えるところには」
「抵抗した兵士はどうするのかしら?」
「出来るだけ無力化してくれ。殺害は禁ずる」
「避難中に何かあったらどうするの?」
「殺害以外の方法で解決してくれ」
まるで反乱軍だなぁ…。いやそうなんだけど。
しかしどこまでクーデターが広がるかはまだ不明である為、安心はできない。
「よし!作戦開始!」
先ず私達は良識派の6人を闇夜に紛れて夜の内に庁舎に避難させた。全員初めは戸惑っていたが黒井大佐の使いというと荷物をまとめて避難してくれた。その後昼まで待って再度変装した後司令部施設に突入した。
「しかし…反乱分子がっ…!」
放送棟の玄関の警備兵六花がこっそり近づき気絶させると3人は放送棟に侵入した。
「しかし…警戒レベルが低いわね…」
「まずはここの司令部施設に入れるのが普通は出来ないからねぇ」
「先回りして経路の警備兵は片づけました。殺してないですよ?」
六花が無表情で答える。まぁ…マスクをしているので顔は見えないが…。
「監視カメラは壊した?」
「ここにありますよ」
手の中には金属製の塊があった。多分握り潰したのだろう。
「なら早く行かなきゃねぇ」
すごく簡単に見つからず放送室に入れた。その中のいつもは音楽が流れる機材の中に例の音声データを入れると、すぐに再生して大音量で流した。中身は声明文と汚職の音声データである。
「次は間抜け3人を捕まえて終わりね!」
件の間抜けは司令部施設の大会議室で会議中だったようだった。突然の放送に驚きパニックになっているところだった。
「ハロー腐れ親父。少し借りるわね?」
間宮さんと私で3人を捕まえるが、他の将官が発砲したため動きが止まった。どうやら六花が撃たれたようだ。あたりには血が飛び散っている。
「水無月君!」
「先輩方大丈夫です。僕は死ねませんから…」
そう言うと他の将官の拳銃をすぐさま奪い取り拘束ベルトで手を縛った。
「傷が治ってる…。どういうことなの」
「言い忘れてました。僕の能力は自己強化です。その代わりにくそったれな悪魔と契約して【死ぬこと】を奪われましたけどね」
そう言いながらも縛った人から順に床に寝かせていた。そして、一言
「あんたらのせいで2人は死んだ」
こうして3人の軍への八つ当たりは終わった。
「思えば激動の時間だったねぇ。まぁお陰でこうして幸せなんだけどね」
そう言いながら南は芽衣を抱き枕に眠った。その顔は先ほどとは違い安らかなものだったと間宮は言う。
南小梅サイドのお話しですが、芽衣ちゃんはあの後のレジスタンス発足後に入っています。だから今回の事は知りません。いや…話し的には六花から聞いているかもしれませんね。そこは想像で何とかしてくださいお願いいたします。(投げやり)