リッカーズ研究ノート
短い、薄い、オチがないでお送りいたします。
ヒッカム航空基地 葉月ラボ
私はそこら辺をうろついてるリッカーズの不可解な生態を知るため、一番最初に生まれた少し大きなリッカーズの1個体に開発した翻訳機を取り付けてテスト代わりに話しかけてみた。
「そういえば貴女達は体の割には知能が高いわよね?よく考えたら脳の面積は大体リスザル程度だと思うのに言語と思考能力は大体人間の子供に匹敵するわ」
リッカーズと呼ばれる彼女達の大きさは全長30~40cm程。三頭身の人型をしていて、個体間のコミュニケーション方法として特定の周波数の電波を使う。人の話すことを理解し、無線機を使えば彼女達と会話もできる。私が把握しているのは、無線機無しでも黒井家の下二人は会話ができること。分裂して増えるタイプの単為生殖であること。味覚があり、彼女達がおいしいと判断する食品程分裂が速いらしいこと。基本的に不死であり、誤って劇薬指定の薬品に入ろうが、稼働中のミキサー内に落ちようが、撃たれようと爆破されようと身体を形成しなおして平然と歩いている。そして個体識別や情報共有ができている事。
『我々は個々で考えず、全員で考えるからです』
「ディスカッション式なのかしら?なら誰が司会をしているの?全員の答えがまとめられないと困るじゃない?」
『我々の行っているのは全員をリンクさせて演算能力を上げているだけです。言うなれば安いパソコンを繋げてスーパーコンピューターを作るようなものですね』
「なら増えれば増えるだけ賢くなるという事?」
『我々には2種類あります。オリジナルことマスターの組織から作られたブレインと我々が分裂して増えるボディの2種類です。ブレインは基本的に思考や全体への情報の共有や記憶、行動計画や会話文の作成などをしています。しかし人手がいないなら肉体労働もします。ボディはブレインの指示に従って動くくらいしか一個体ではできません。しかしその分身体能力や個体間の通信能力が向上していて、その上彼女達にあらゆる場所で手に入れた情報をブレインに瞬時に流させているので彼女達なしにはブレインは情報や知識を得られません。なので回答はブレインが増えれば、情報処理が速くなってボディ全体の動きに無駄が出にくくなり、作業内容が更に高度になります。ボディが増えれば多くの作業を同時並行で動かすことができますし、知識の獲得が多くなります』
製品の生産の効率を上げるために、工場の機械ができる工程数を増やすか、機械のレーンを増やすかという事かしら?ブレインが多くなると「一度に複数の仕事ができるけど手際が悪く」ボディが多いと「一つの事しかできないけど手際がいい」という認識でよさそうね。
「貴女の話し方は他の個体とは違うのね?通常個体は幼い感じの話し方だけども」
『会話文も我々の内で人と接触の多い個体ほど親しみやすさを感じる話し方をするように指示しています。ですが私の役割上、会話は求められなければしないのでその指示は適応されていないのです』
「貴女は何を担当しているの?研究所内にはあまりいないでしょう?」
すると彼女は右手から球状の組織片を出して手のひらの上で形成しだした。それは見る見るうちに袋状の物体となった。
『私はミスプリントや失敗作、突然変異体の回収及び処分のために設計されたリッカーズです』
「自然に死なないし、殺害不能な存在だからこその役割ってことね」
『彼女等には罪はないですが、伝達の阻害防止や暴走のリスク軽減の為です。この前は見境なく捕食する個体がいて、姉妹の38個体が捕食されて喪失、126個体が怪我をしました。しかし有益な個体や私のように計画されて作られた個体は保護観察となります』
私はその後これらの話をレポートにまとめるとベットに横たわった。しかし彼女達は何故人に寄り添うかのように仕事をしているのだろうか。
『この世に芽衣様のあらんことを』
如何やら遺伝子には勝てないらしい。
ミキサーによって個体が混ざったリッカーズもいますが、ほとんどのボディは同じ性格で、同じ遺伝子なので少し大きくなったかなとしか変化はないです。