一般レジスタンス隊員視点 小競り合い
一般隊員視点で戦闘します。普通の隊員はこんな戦闘なんだよという次への導入です。
日本 鴨川市
「よりによって鴨川要塞勤務になるとはなぁ」
そう俺は桟橋を歩きながら愚痴った。ここは元鴨川の水族館跡だったが今では高い壁と見張り塔に囲まれた鴨川前線基地という施設になっている。俺らの分隊は元々三宅島で防衛任務にあたっていたが、戦力増強の為小笠原諸島の防衛戦力を減らし、新たに攻略した房総半島南部の防衛に充てられることとなった。
「いいじゃねぇか滝。ここは三宅島よりも食い物があるだろうさ」
「そうっすよ先輩!あの島では毎日ムロアジとアシタバの入った定食でしたし、こっちでは毎日食糧生産プラント産の新鮮な肉が食えますよ!」
「うぷっ、船酔いした!…そうですね。これからは美味い酒も飲める!」
このメンツは分隊の仲間で、初めに話してるのが伊藤隊長で、経験豊富な隊員で5月の小笠原諸島攻略戦にも参加したらしい。男気溢れるおっさんで、戦闘技術も折り紙付き。しかし小笠原諸島攻略戦の時に見た司令部の特殊部隊の事を酔う度に話すのはいただけない。肉を食うとか言っているのが畑中。新人ではあるが爆発物の取り扱いはトップクラス。しかし趣味が食う事であり、戦闘糧食を食べるときはすごく嫌な顔である。酒か船で酔っているのが鈴木。機関銃手であり、足止めや制圧が彼の仕事である。基本素面でないので吐く息は酒臭い。
「馬鹿言え。お前は常に飲んでるだろ」
酔っぱらいはまだ飲む気らしかった。
「蒸留酒と醸造酒では全くちがうんだよ!」
「それはそうだな!分隊で酒盛りでもするか!」
「腹減ってきました!」
このマイペース共め!そう心の中で叫ぶと、兵舎の近くまで来ていた。
「おめぇら。今日からここが俺らの家だ。クーラーも風呂も付いてるらしい」
「それは最高っす!」
あのボロボロのトタン張りの小屋よりも格段に環境が良くなっていた。俺らは分隊ごとの部屋に入り休憩を始めた。鈴木は持ってきたウォッカじみた蒸留酒を片手に奥の畳の上に座っていた。畑中は寝ていて、隊長は鈴木の酒をもらおうとしていた。
「ところで何故防御を固めてるんでしょう?ここまで攻略できたぐらいならもっと進めるんじゃ?」
ここには1個師団くらいはいるだろう。しかし攻勢に転じずひたすら防衛しているらしい。これだけいれば房総半島くらいは攻略できるだろう。
「馬鹿野郎。特殊部隊が攻略の補佐をしたからできただけで、それでも戦車大隊2つと隊員が師団規模でやられた。俺らもその特殊部隊が露払いしてるから10体くらいのアイク達で済んでいるんだぞ」
「隊長!それなら元々はどれくらいなんすか!」
「数百体の蟻型やら蜂型なんかがいるな。小笠原諸島攻略戦の時はどちらも数千匹はいただろう。あとカマキリ型とかコガネムシ型とかと俺らがあまり戦わないのもあいつらが先に倒しているからだな」
化け物みたいなやつがいたからこれだけの被害で済んでたのか。相当屈強な男たちなんだな。
「俺知ってるますよ!その部隊は男1人と3人の美少女で構成されてて、全員能力開発して超能力者になった子達なんですよ!しかも!あの五月芽衣ちゃんがいるらしいです!」
「五月芽衣ちゃんなら訓練生時代に良くお世話になったっす」
何だと!そう思って畑中に詰め寄って事情を聴きだした。あの本島でのアイドルの五月芽衣ちゃんにお世話になっただと!うらやま…けしからん!
「どういうことだ!畑中ぁ!」
「落ち着いてくださいよ先輩!ただ怪我を治す能力らしくて良く誤爆して怪我したのを直してくれただけっすよ」
「俺はあの妹まであったこともあるぞ。あれはひどかった。まるで悪魔だな。妹の方は黒井司令と東城の兄さんに鬼ごっこに巻き込まれたときに会った。鬼ごっこって言っても高速で迫ってきて捕まる体に電撃が走って気を失う。すると臭い物を鼻に押し込んだりして起こさせるんだ。そしてまた繰り返し。おかげで今でも逃走技術だけは誇れるぜ」
「俺はその兄貴分の方に会ったな。アレはすごいぞ。いくら撃とうがその弾を弾いてマフィアの奴らをしばき倒していた。」
すげえや。それならそういう芸当も可能だろうな。なんて考えてると警報のベルが鳴った。アイク襲来の合図だ。急いでそれぞれの武器を取って防壁外にある持ち場に移った。
遠くに10体ほどの蟻型が見えた。どうやらはぐれの様だ。襲来してくるのにも2種類ある。1つは今回の様に10体ほどが群れで襲ってくるはぐれ個体群と100匹単位の攻勢だ。攻勢はあまり来なくてほとんどがはぐれ個体群の攻撃だ。
「あちらさんもお隣の引っ越しを祝いに来たらしい。もてなしてやれ」
「ラジャー!」
畑中達戦闘工兵は迫撃砲やトラップ、土嚢で作られたトーチカの点検をしていた。機関銃手達は待ち伏せの準備を整えていて、どうやら狙撃手達が支援に入るらしい。そんな中に10体ほどの蟻型が走って来ていた。合図が出ると俺達は蟻型に小銃弾を浴びせていた。奴らは仲間が死のうとも気にせずに突き進んでいくが体を弾が貫いたことで動くものはすぐにいなくなった。
「ちょろいもんですよ」
「気を抜くな。帰るまでが任務ですって先生に教わらなかったのか」
「それは遠足っすよ!」
なんて馬鹿話をしていると本部があわただしくなった。どうやら狙撃中隊と連絡がつかないらしい。多分無線機の不調じゃないかと思ったら、山の方からでかいカマキリが雪崩れ込んでいた。
『敵襲!狙撃中隊からカマキリ型120匹を含めた攻勢と思われるアイクの群れを発見との通信!至急迎撃せよ』
「冗談だよな…。120匹のカマキリ型?しかももっといるのか?」
「狙撃中隊は多分今頃全滅しましたね…。」
「あの動いてるのも敵っすよね」
どうやら大規模な攻勢のようだ。山の谷間を通るように緑色や黒い物が動いている。それに向かって砲弾やら機関砲が攻撃をしているようだった。
鴨川前線基地 指揮所
「現在動かせる部隊はどれくらいある?」
『およそ1個師団位の歩兵と180台の装甲車と50台の戦車と30門の榴弾砲があります。50門の対空機関砲も今移動させて攻撃中ですが、食い止める事には失敗しています。』
「増援は?」
『館山から来てはいますがどうやらあちらも接敵したようで、時間がかかりそうだと』
何故この基地にここまでの攻勢が来るのだろうか。餌があったか?いや、多分今回の攻勢はカメレオン型に追い出された奴が返ってきただけだろう。早く対処しないと、ここを手放すこととなるだろう。仕方ない。この緊急事態ではこの手しかないのか。またあの子達に苦痛を強いるしかないのか。館山でも鴨川でも助けたあの子達に…。そして私は電話を司令部にかけた。
「こちら鴨川前線基地。大規模な攻勢を確認。コードレッドと判断。支援を要請する」
『了解。44分隊を送る。戦線を維持せよ』
「感謝する」
『健闘を祈る』
なんて我々は無力なのだろう。基地司令はそう思った。
次は少しグロテスクな表現やってみようかな。