姉妹の徹底的治安維持作戦 3
3階層 スラム街の一角
「ったく…最近は何処かの武装組織がうろついていておっかねえな」
「あれはハンターオブシチリアの連中だな…。それも黒シャツ隊のイカレ野郎共だ」
2人の男性は自分達が所属する組織の本部を警備しつつ、最近の近隣にある地区の情勢について雑談をしていた。こんな治安の悪い地区かつ自身の組織が支配している地区にいるのは仲間しかいないので警備は不要な気もするが、上から命令されているのでしぶしぶ門の前に立っていた。
「早く終わんねぇかな…疲れてきたぜ…」
「そうだな…」
早く終わらないかと2人が思っていると、何かが背中に飛びついてきて激痛の後に気を失う。倒れた彼等は黒い軍服らしきものを着た数人が静かに運び去っていき、残った部隊はエントランスの数人を非致死弾で倒して物陰に引きずり込むと建物の陰に寝かせておく
『ドン・ソーレ。偵察部隊より敵数30、その内火器で武装しているのは16との事です』
『引き続き無力化した敵を回収しつつ、上階を制圧して回って。地下にいるクズは私達で捕まえるから。あと持ってきたのも散らしておいて』
日向は建物裏から走ってきた溶接用バーナーを持っている部隊に指示をすると、エントランス奥にある地下への階段に歩いていく。その間も無力化された人物が部隊員に運ばれて部屋の隅に置かれて、部隊は2階に取り掛かっている最中だった。
「さーて、お姉ちゃん。悪い子はないないしようね!」
「下手に解放すると何するかわかんないからね。闇の住人は闇にしまっておこうか」
2人して地下の扉を開けると、廊下にいた2人組を電撃と打撃で静かにさせる。急いで手足を縛って口に猿轡をすると、3つ並んで廊下に並んでいる部屋を階段に近い手前のドアから開けていく。最初に入った製造室にいた組織員達は子供の登場に驚いた瞬間に床に叩きつけられた。しかし1人だけ気を失わず、頭に日向の手が乗せられていた。
「子供達はどこ?」
「なんだてめえら!あぁっ!やめろ!やめてくれぇ!」
彼は存在しないはずの蛆虫やアリの大群が皮膚の下を蠢く不快感に悶えるが、彼の意思に反して身体を動かすことが出来ずに目を見開き呻くだけしか不可能だった。
「もう1回聞くね。孤児院とか路上からさらってきた子供達は何処にいるの?」
「ひぃ!地下2階の物置だ!だが、いつもは姉貴が鍵を持ってるから中は分からねぇ!」
ありがとーと日向が手を離すと、彼は激しく嘔吐して吐瀉物の中に倒れ込む。六花は嫌そうに結束バンドで手足を縛ると、廊下に積まれた身体と麻薬の袋の上に重ねる。そして、日向は数人いる奥の部屋、六花は隣にある休憩室と看板に書かれた部屋にドアを吹き飛ばし侵入すると、中で椅子に座りタバコを吸っていた女性の後頭部を木刀で殴打して床に転がす。
「お姉さん、鍵もってる?」
懐に手を入れた彼女に対して膝関節を逆に折り、懐から拳銃を取り上げた六花はそれを簡易分解すると床に投げる。彼女の四肢を縛り上げた後、六花は彼女の身体をまさぐり真鍮の鍵を奪う。彼女は罵声をあげるが、六花はうるさそうに彼女の顎を掴むと横にずらして関節を外す。そして重なっている人体にのせると廊下の奥に歩いていき、突き当たりにある地下への扉を発見した。
「地下に10人位いるかな?声からしてオークションとかしてるみたい?」
「さてと、オークションの参加者さん達はどの位利益を上げるかなー?」
ハンターオブシチリアの構成員達は戦争孤児出身者が多くいる関係上、彼等を苦しめてきた麻薬や児童売買や児童売春等は資金源としてこなかった。そしてこの組織は彼等とその支配者の逆鱗にスリーアウトで見事に触れ、マリアも珍しく怒りを表す程であった。その為、彼等の出荷先はオアフ島地下にある素材加工施設ではなく洋上にある施設で、厳しい強制労働と壁と床以外無い部屋で死なせて貰えない生活が約束されている。
内部はオークション会場となっていて、動物の被り物をつけた参加者達がステージ上の下着姿の女の子を見つめている。六花はステージに飛び込み、日向は参加者達を電撃で痺れさせると結束バンドでちまちまと縛って回る。飛び込んできた六花に司会が驚いていると、すぐさま司会は壁に投げつけられてぐったりと身体を倒れさせる。ステージ横では組織の上層部らしき1団が逃げようとするも地下から出る為の扉が開かない為に焦りながらドアに体当たりをしていた。
「無駄だよー?そこは溶接したから開かないよ」
「児童売買と売春斡旋、あとは違法薬物製造の疑いで大人しくお縄についてくださーい」
やぶれかぶれに放たれた自動小銃や拳銃の弾は2人の前で止まり床に転がる。2人はため息をつくと1団を強制的にお縄につかせることとした。