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とんでもカルテットの自警団任務 4

六花ちゃんが去った中央病院の診察室で左足に異常がないか確認されつつ待機していると、ドアが勢い良く開いて何かが飛びついてくる。


「ももがぢゃん!良がったいきでだんだね!」


「うわぁ!式根飛行長!…って、生きてますよ」


後ろで各部門の長達が苦笑いで見る中、式根飛行長はこちらの制服をびちゃびちゃにする勢いで抱きついたまま泣いていた。それをなだめつつ、話を聞く。


「だっで!戦闘中行方不明で処理されたし、あの後すぐに除隊処分になったからてっきり戦死したのかと…!」


「あの時、芽衣ちゃん達が居合わせたので助かったのですよ。まぁ…いなかったら100%戦死者の仲間入りでしたけど…」


そう言うと、神津機関長が安心したように私の肩を叩いて、


「これで晴れて摩耶は戦死者無しの幸運艦だぜ。あの時お前達が死ぬ気で爆雷落としてくれなかったら、今頃うちら皆まとめて奇しくも伊豆の海で沈む事になったんだ。そんな功労者が生きていたってニュースよりめでたいものはねぇな!」


と言う。艦長が思案した様に立っている中、航海長がやれやれと肩を竦めて呟く。


「三宅砲雷長殿は弔い合戦だとか言って大暴れしてたもんね…」


「うっさいですね新島!艦の仲間がやられて頭に血が上っていたんですよ!貴方も伊豆大島に航路を向けようとしていたではないですか!」


芽衣ちゃんに何かを渡していた砲雷長はからかってきた航海長に言い返す。それに航海長がさらに続けてやいのやいのと言い合いを始めた。


「あわわ…お二人共落ち着いてください!」


「カワイイの補給は大切〜ってね〜」


御蔵船務長は慌てて、八丈補給長は芽衣ちゃんに抱きついていた。うーん…カオス。というか、伊豆艦長はなんでこれを放っておいているのだろう?


「おい…またかよ…」


「あぁ!艦長また気絶されたのですか!?」


御蔵船務長と神津機関長が気絶した伊豆艦長を揺すったり、叩いたりしている中、式根飛行長が胸元でボソッと呟く。


「戦没者名簿の名前消さないと…」


「えぇ…それまで作っていたんですか…?」


芽衣ちゃんは頷きつつ、私がいなければ多分今頃伊豆大島の土になっていたのですと言う。その発言に御蔵船務長は多少医学の知識はあると言って、当時の私がどんな状態だったか聞き出そうとする。芽衣ちゃんは後ろに置いてあった治療記録と表紙に書かれた汚れたメモ帳を取り出してページを素早くめくると、書面を見て私の身体を指さしつつ答える。


「上から左側頭部に長さ30cm程のローター片による硬膜上までの刺創、右頚部に長さ15cm深さ5cm程度の切創、肋骨粉砕骨折していてその破片が右肺に刺さっていたから右肺はその為に気胸を起こしてて。墜落の影響と思われる心室細動を起こしていて、全身に筋肉まで達しているものだけでも37箇所の金属片による刺創と切創、左大腿部に至っては瓦礫に挟まっていて大腿骨粉砕骨折及び断裂に至るほどの裂創。オマケに右側腹部に左背部まで貫通している長さ80cm程のローターブレードによる杙創を負っていたのです。怪我等から出血性ショックを起こしていて倒れていたのです」


「…なぜそれで絶命してなかったんです?」


「私が墜落から1分程で処置開始しましたし、脳がまだ平気なら何とかできるからなのです。りっちゃんに間宮さんごと担がれて、目を回す位に急いで運ばれた先にそんなボロ切れみたいな要救助者がいたのですごく驚いたのです」


あれは私じゃなきゃ手遅れになっていたと思うのですと、芽衣ちゃんは胸を張りつつ若干失礼な御蔵船務長の質問に答える。その手にはスケッチブックを持っていて、それを内容が分かっていなそうな他の人に見せる。デフォルメされた私らしきキャラクターの頭に棒が刺さっていて、その横に拡大された頭蓋骨と脳みその絵が書かれている。他にも首に大きな切り傷と胸に肺が萎んだ絵、肋骨は砕かれて書かれていてお腹に棒が貫通していて、足はポップに骨が折れていて何とかくっついている様に切れている上に身体全体に傷が書かれていた。デフォルメされているから見れるだけで、本来は凄惨な状態だったと皆が理解する。尚、伊豆艦長は想像してしまったのかやっぱり気絶した。


「うへぇ〜グロテスク〜」


「そして、スキャンしながら輸血に協力してくれた間宮さんにも感謝して欲しいのです。血液型的に間宮さんかりっちゃんしか出来なかったので、必然的に間宮さんしか居なかったのです」


「何でその…りっちゃん?さんはダメなんでしょうか?」


御蔵船務長がそういうと、芽衣ちゃんはりっちゃんの血には毒劇物が混じっているので輸血には手間がかかるのですと遠い目をする。


「それ人間なんですかね…?」


「三宅さん…多分…人間だとは…思うのですけどね…」


体組織から生物らしきものを生み出し、身体の部位が当たり前のように再生したり、姿を変化させたり時折人の姿を留めていないのに目をつぶればだけど…と言う呟きが芽衣ちゃんから聞こえる。…それ本当に人間?


「と、とりあえず間宮さんにあったら感謝を伝えて欲しいのです!そして、式根飛行長と会えて良かったのです!」


慌てたように診察室を追い出された私達はまた会おうと約束すると、私はちびっこの方に、みんなは海軍部方面に戻って行った。


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