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とんでもカルテットの自警団任務 2

市街地…と言っても平和な表層にあるレジスタンス隊員や関係者の暮らす地区だけど、一応さっきの友人達がするまででもない治安の良い地区で、半分は小さな困り事解決になるパトロールを行う。軽犯罪程度だと良く起こるし。ちびっ子4人は私の後ろに1列になって歩いている。先頭が日向ちゃん、最後尾に織音ちゃん、キョロキョロと見張りながら後の2人がその間を歩く。そして、それを見た民間人らしき人が微笑ましそうに見ている中、前から少し強面な隊員が歩いてくる。彼は手に持っているタバコを吸い終わったのか地面に捨てると、こちらに気がついた様で少し嫌そうな顔をする。


「あの〜…すみません。吸殻をポイ捨てしないでくださーい…」


「あぁん?!」


怖いよぉ…。でも…頑張んないとと考えていると、後ろの日向ちゃんが飛び出てきて何処からか取り出したメモ帳を片手に強面な隊員に近寄る。


「お兄ちゃーん?悪い子にはお仕置だよー?」


すると、こちらを睨みつけていた強面な隊員が一転、日向ちゃんを見ると子犬の様に震えだして土下座を始めた。そして、日向ちゃんはメモ帳から端末に持ち替えると、顎を掴んで顔写真を撮る。


「ふーん…歩兵第25連隊所属の藤田お兄ちゃんかー…。はい決定!かくれんぼ参加けってーい!!」


「そ、それだけは…勘弁していただけませんか…日向様…!」


「やだー!悪い子はダメ!お仕置きだよ!満足するまでやるからね!」


さっきまで怖かった隊員の人が可哀想になる位に酷い顔をして地に頭を擦り付けるのを見て、流石におかしいと感じ始める。


その後、強面な隊員は近くの隊員に担がれて何処かに運ばれて行った。その隊員が花ちゃんを見て敬礼をし、花ちゃんもお勤めご苦労さまです!と答礼していたので確信した。私もしかしてとんでもない子達連れてる?先程から道行く隊員に何時もの緩い敬礼ではなく、しっかりと端々まで完璧な敬礼をされているけど気にしないフリをしてメインストリートに出る。すると、歩いていた明らかに階級の高そうな方がこちらに気がついたのかにこやかに話しかけてくる。


「おやおや…自警団の生活安全課課長の猿島さん。…そのメンツはこの市内を制圧するおつもりで?」


「あー!制服着てるから分からなかったけど、スケコマシのコスプレド変態だー!」


「ヒナちゃん!いくら森永さんが女の人をナメクジみたいな気持ち悪い視線で見ている下半身直結型のナンパ師のどうしようもないド屑でもそれは言っちゃダメ!」


「りっ…六道ちゃんもそれなりに言ってるよ?確かに不審者だけど…」


「ん…森永…。お菓子よこせ…さもないと防犯ブザー鳴らす…」


ちょっとぉー!何でそんなにこんな偉そうな人に暴言を吐くの!?花ちゃんもフォロー出来てないし、何なら何で冬華ちゃんはお菓子を強請ってるの?!当の偉い人は困ったように微笑むと、


「うーん…小学校低学年の子にここまで言われると流石に傷つきますね。先ずは弁明すると…日向ちゃん。これはコスプレではありません。そして変態でもないですし、今は嫁に一途です。さて、そこの正体を明かすべきで無さそうなレディ。貴方は妹達に混ざって何しているのですか…。貴方そう言えば芽衣ちゃんに何を吹き込んだのですか?冷めた目で傷口にヨードチンキだけ塗ったと思ったら、塩まいて追い出されました。そして花ちゃん。君はそのままでいいです。父親の血を引かずに可愛らしく真面目に育ってください。あぁ…強いて言うならお父さんに対して、習った技の復習という名目でボコボコにするのは可哀想ですので辞めてあげてください。そして…冬華ちゃん。もう少し穏当にお菓子をおねだりできませんか?…クッキーならありますけど」


と4人に対応していた。結果は花ちゃん以外の3人に脛を蹴り続けられているけれど。そしてその人はこちらに向き直ると、にこやかに話しかけてくる。


「申し遅れました。私日本レジスタンス情報局局長、森永です。部下より大災害トリオにとんでもない新規メンバーが入った大災害カルテットを引き連れた人物がいると通報を受けまして。軽犯罪者を撲滅しに行くのかとけんぶ…監視しに来たのですよ」


「ご存知だと思いますが、自警団所属生活安全課課長の猿島桃香です!今日は三田司令からお願いされてこの子達を体験入団させています!」


森永局長はにこやかに、「えぇ、よく知っていますよ」と頷くと、胸ポケットからメモを取り出す。


「1年程前の伊豆大島近海での戦闘まで摩耶の哨戒ヘリコプターパイロットをしていた猿島桃香元兵曹長、年齢は25歳で除隊理由は…左大腿部に金属片が貫通した大怪我が元になって歩行に難がある為ですね。経緯も見ますと大変素晴らしい事をなさった様です」


私が海軍部を辞める事になったのは伊豆大島近海での戦闘で墜落した時の怪我が原因。…まぁ二人は何とか助かったから良かったけど。あの時、陸地まで気合いで飛ばしたから、現地に展開中の歩兵部隊に3人とも助けられた。良くは覚えていないけど、この部隊に助けられたから足が動きにくい位で済んでいるとお医者さんは言っていた。でも、うっすらと必死の応急処置をしてくれた事は覚えている。


『…先輩!ヘリの乗員全員息が…。…ちゃん!止血できる?!』


『危険な…ね…。先ずは…から!…にローターの…が…』


『…のです。…ちゃん、腹部の…を…』


『うへぇ…。…さーん。この…は軽傷…。すごいねぇ…なんて』


あの時死んでしまうのかなと思ったら、誰かの励ます声と身体中の筋肉や内臓の近くを何かが動く感覚とそれに伴う激痛でこの世に戻された。助けて貰った身としては文句は言えないけれど…もっと痛くない方法はなかったのかな…。モルヒネ打つとか。


「この不自由さが勲章みたいなものです。この前もあの時の仲間と会って感謝されましたし」


「そうですか…。それを完全に治せる人を知っていますが、どうします?」


確かに治せるなら治した方が楽ではあるけど…お金も少ないし、長く治療に入る余裕も無いしね。


「あはは…そんな治療出来る様な時間も余裕も無いですよ」


「ふむ…いえ、三田司令から言伝を預かっておりまして。『今回のお詫びに芽衣ちゃんの予定空けておいたよ!桃香ちゃんの事は伝えてあるから、しっかり足を治療してもらってね?』との事で…。私は三田司令に…というか芽衣ちゃんに迷惑をかけると、脛を蹴られるだけでは済まない大怪我になりかねませんので。ほら、日向ちゃん達。こちらの人を中央病院に運び込んでください」


「ラジャー…!」


「わかったー!」


日向と冬華が背中を押して、


「猿島さん!芽衣お姉ちゃんの力はすごいんですよ!なんせ調子が良いと腕の無い人から無くなったはずの腕がニュっと生えてくるんです!」


「…何で知ってるの?…あぁ、東城さんを院長室に投げ込む時に見たんだね…」


不穏な事を言い出す2人が横を歩く。これは逃げられないなと、私は少し笑みを浮かべて連行されて行った。


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