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日向の自警団体験 外伝 おちたのはりっちゃんの所為なのです

描きたかった。それだけである

「おーい、メイちゃーん?」


返答の帰ってこない芽衣の部屋にまた眠ってしまったのかと六花は困り顔で入る。室内は照明が消えていて暗く、手探りで天井灯をつける。そして少し光に目を眩ませた後、室内を見るとそこには芽衣の姿は無い。


「日向!メイちゃん見てない?!」


「んー?お風呂にもトイレにもいないよ?」


後から浴室を出た日向は、その道中でどちらも人が居ないことを知っていた。慌てている姉にその事実を伝えると更に動揺し始めた。


「…メイちゃんの足音が無い」


「もしかして家出しちゃった!?」


六花は日向と手分けして家の敷地内で芽衣の痕跡を探すことにした。六花は玄関や室内を、日向は庭を見ていた。


「…靴が無くなってる。外に行ったのかも」


そして外に出るが、足跡が複数残されており追跡は困難を極めていた。その為、日向に合流して外出しているという情報を伝える事とした。


「日向ー!何かあった?」


「なーんにも!…?これなんだろう?」


日向は自分の身長程度の高さに結ばれた赤い紐が短い感覚で結ばれているのを見つける。六花が追いつくとその紐を渡し、続いている方向に指を指す。


「もしかしたらこれ…芽衣お姉ちゃんの手がかりかも」


蔵の横から伸びる山道に赤い紐が点々と結ばれた木が並んでおり、地面には足跡がついていた。


「山に続いてるみたいだね…日向はここで待機してて!メイちゃんが戻ってきたら部屋に連れてってくれる?」


「まっかせてー!」


六花は懐中電灯やロープ等の山登り用装備を玄関から取ると、山道に入る。その先は緩やかな傾斜が続いており、その脇にある座れそうな切り株や石組み等の周りが草を抜かれて整備されていた。そしてそこにペンキか何かで【休憩ポイント】と丸文字で書かれていた。


「…メイちゃんはこの先だね」


きっと芽衣が貧弱な身体能力をフル活用してこの先に足繁く通っていると考えた六花は、赤い紐と100メートル感覚で書かれている応援の言葉を辿り、駆け上がった。




「…神社の社かなぁ?これ」


進んだ先には古びた社があり、その横にはブルーシートがかけられた廃材置き場らしき山があった。社は廃材を使って穴が塞がれており、ペンキで壁が赤に塗られていた。社の下にペンキでカラフルになった脚立がしまい込まれており、階段はカラフルに色がついていた。


「とりあえずこの中にいたらいいけど…。メイちゃん」


六花が階段を上がり、中に入るとそこは六花と芽衣の写真が多数壁に貼られていた。壁面は正面以外白く塗られており、正面は綺麗に手入れをされてお供え物なのかお菓子や果物を置かれた神床があった。


「いないけど…多分メイちゃんが向かっていたのはここかな…」


六花が外に出ようとすると、床にノートと幾つかの雑誌が落ちているのを見つけた。ノートを拾い上げると、表紙には【研究ノート!】と油性ペンで書かれており、少し膨らんでいることからかなり開いて書き込まれたものと思われた。


「研究って…なんの研究だろう?」


六花が開いて書かれている文章を読む。


【りっちゃんに迷惑をかけない様に独り立ちする為、試しに反応しないようにしてみる⇒風邪と思われて寝かせられた。失敗】


そういえば、メイちゃんが一言も話さない日があったようなと六花は思い出し、その次のページに書かれている行動は全てここ最近の芽衣の様子と同じであった。ある時は反応をしなくて早めに寝かされたり、家事をして失敗したなどが書かれていた。そして最後の記述は

【最終手段として酷いことを言ってみる⇒続けているけれど苦しい。りっちゃんには嫌われちゃったと思う。でもりっちゃんの隣を歩ける大人な女性になる為に頑張らなきゃ!!】

とシワシワなページに書かれていた。


「…はぁ…。メイちゃんらしいといえばらしい…」


六花は芽衣の大人なレディになるという目標に対してアプローチが変な研究ノートを背中にあるカバンにしまいながら困った様に笑う。そして開けたままの扉の方を向き、笑みを浮かべて、お馬鹿だなぁと呟くと、楽しそうに仕方がないなぁと言いながら境内の外に捜索に出る。そして、山道を少し足元を照らしながら戻って行く。


「行きでは紐を辿ってきたから見落としてたけど…ここから落ちたのかな」


良く見ると1箇所路面が崩れており、その下の坂を照らすとコンクリート製の庇があった。六花は庇に降りると、その2〜3メートル下の枯葉の残る地面へ飛び降りる。そして、後ろを向いて深呼吸をした後、ぼんやりと明るい防空壕の中へ入っていく。


「…メイちゃん帰るよ。日向が心配してる」


「りっちゃん…?」


奥でうずくまっていたものは、顔を上げると六花に飛び込んでくる。六花はそれを抱きしめると、背中をポンポンと叩く。


「りっちゃんごめんなさい!ごめんなさーい!!」


「…そんな顔されたら怒れないよ」


そして安心したのか力を緩めた芽衣は小さく声を漏らし、顔を顰める。


「…そういえば足を捻っていたんだった」


「…いつも通り背負って帰るよ」



その後、うっすらと残っていた道から社に戻って来れた2人は家への帰路についた。六花は虫の音と確かに感じる体温に久しぶりの安心を覚えつつ、歩を進める。ふと背中にいる芽衣が呟く。


「私をよく見つけてくれたね…」


「メイちゃんの秘密基地からチカチカ光るのが見えて来てみたんだよ。メイちゃん暗い場所が嫌いだからライトつけたままかなって」


それを聞いたのか芽衣が六花に回してる手に力を入れる。


「りっちゃんには敵わないなぁー…」


「メイちゃんの事なら大体分かるよ〜」


芽衣は六花の背中に顔を埋めると、


「りっちゃんには酷い事ばかりしちゃってる…私」


「…はぁ〜、…1度だってそんな事思ったこと無かったんだからね。最近のあの行動に対する理由の仮説にあったのに、なんで…」


芽衣はクエスチョンマークを浮かべたようにポカンとすると、六花は続けて言った。


「メイちゃん。今回の行動で迷惑かけた相手は日向なんだからね?珍しくメイちゃんのご機嫌を取る計画立てて頭を悩ませてたんだから。しっかり謝っておくんだよ?」


「うぅ〜…本末転倒なのぉ…?」


芽衣は顔を埋めたまま、うーんうーんと唸る。六花は悪意でやった訳でなく、あくまで大人に近づこうと空回ってしまった可愛い妹が自罰的な思考をするだろうと察し、諭すことにした。


「メイちゃん。僕だってまだ大人らしくはできないんだよ?メイちゃんが今から焦ってやる必要はないよ」


「でも…今りっちゃんにおんぶにだっこで…いっぱい迷惑かけちゃってるし…」


弱々しく言う芽衣に、六花はため息をつきながら、あのねぇと前置きして話す。。


「嫌な事があってもメイちゃんがニコニコしてればその日は良い日になるし、日向は…お姉ちゃんは存在するだけで良しとか言うだろうけど…うーんと…なんて言えばいいのかな…とりあえずメイちゃんはもっと僕達に可愛く甘えて困らせないとダメ!!」


「ふぇ?」


呆気にとられる芽衣を背負いながら、六花は得意げに微笑を浮かべる。


「上手く甘えるのも大人なレディの嗜みじゃない?」


「え?…そうかもしれない…」


混乱する芽衣を後目に、六花は更に得意げに話し続ける。


「メイちゃんは僕を見くびりすぎだよ!これでも愛する娘の1人位守ってみせるんだからね?」


「はぅ?!」


六花からは見えないが、芽衣は赤面した事を隠す為に六花の背中に顔をつける。六花はそれを知らず、畳み掛ける。


「だから、必要で無くなるまでメイちゃんのとなりでいさせて?」


「…一生でもいいの?」


芽衣が弱々しく返すと、六花は勿論と嬉しそうに言う。芽衣は先程の不安混じりの顔から清々しい笑顔になり、


「嘘ついたら針千本だからね♪」


「喜んで〜!」


その日から、芽衣は前ほとんど同じに戻った。しかし、変わってしまったものがあった。それまでは遠慮がちに甘えていた芽衣でもかなり火力が高かったが…


「ただいまー。メイちゃーん、これ食べなーい?」


「わぁー!!プリンみっつもくれるのー?りっちゃん大好きー!!」


ちょっと図々しくなった芽衣を2人はやれやれと嬉しそうに見るのであった。


オドオド期⇒葛藤期⇒素直期⇒理性で我慢期⇒現在と推移している芽衣ちゃん。右に進む事に愛が主くなってくる予定です。

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