日向の自警団体験 1日目 「顔面偏差値が高くないかしら?ここ。」
黒井家地下1階 大浴場
夕食を上機嫌で済ませた芽衣は妹?3人を連れ、大浴場へ来ていた。その後ろからは、ついでに行こうと20歳越えの3人がついてきていた。
「…外であの一団見たら誘拐が心配にならない?」
「ダメね…日頃の様子見てるから誘拐犯が可哀想になるビジョンしか見えないわ…」
「初見殺しの権化だよね〜」
あの一団の最も簡単な人物でも、誘拐しようとするには人の反応速度以上で動く幼女を避け、電撃をいなし、その間襲いかかる不運を避けなければならない。その前に計画を考えず、無心でさらわないと蒸発させられるが…。
「今日はお姉ちゃんがしっかり洗ってあげるのですよー!」
「わーい!」 「お姉ちゃん上機嫌だねぇ」 「よろしく…」
キャッキャウフフとはしゃぐロリっ子達を後ろから眺めるお姉様達は、
「ガワだけ見れば癒されるのだけどね」
「あそこだけ多分メルヘン世界じゃない?」
「綺麗な薔薇にはトゲがあるってあるけどさー。多分そのトゲに猛毒塗って花から嗅ぎたくなるいい匂い漂わせたらあれだよね?」
そう言いつつ小梅は1冊の雑誌を取り出す。表紙には【広報室長イチオシ!日向ちゃんと謎の美幼女の世直しパトロール!】と大きく書かれ、細い路地の先へ六花はアサルトカービンを、日向は開いた手のひらを向けている写真が掲載されていた。
「能力使うと不味いとはいえさー。普通の小学一年生はアサルトカービンを携帯してないんだよねー…」
「日向ちゃんはバリバリ使ってるのがあの子らしいというか…」
内容は、①女性をしつこくナンパしていた男を注意したが、激昂し暴力に訴えた為叩きのめして逮捕した②ひったくりを捕まえて改心させた③横流し品や盗品を取り扱う違法営業の雑貨店を急襲し、用心棒は逃がしてしまうも店主一家とその店員を逮捕等と中々とんでもない事が書かれていた。
「ミソなのが犯人がどんな状態になったかは書かれていないのよね…」
「逮捕だから生きてはいるだろうけどねー」
「あぁ…芽衣ちゃんが忙しそうにしていたのはそういう…」
遥は職場にて妹が『自警団の誰なのですー!容疑者の腕の関節を外して、肩を砕いて逮捕したおバカさんはぁー!』と珍しく荒れていたのを見ていた。そんな荒れた心を癒したのはその犯人なのだが、3人は本人が良いならいっかと諦めムードを醸し出していた。
「りっちゃんの頭を洗うなんて久しぶりなのです」
「何時もは僕の方が背が高いからね」
「お客さーん!おかゆいところございませんかー?」
「…良きにはからえ…」
小学生組が世間話を交えるやけにリアルな美容院ごっこをしている隣で芽衣は六花の頭を洗っていた。
「むしろメイちゃんの髪の毛、中学生の時まで背中まであったから洗ってあげていた気がする」
「今は横で結ってるのを解いても肩くらいしかないのです」
右手で栗色の毛先を摘み、目元に持ってきて言った後、芽衣は六花のシャンプーが絡んだ濡羽色の髪をシャワーで流す。
「今日は私のコンディショナーを使ってあげるのです!」
「おー…あの流通元不明ないい匂いのヤツだー」
流通元は秘密なのですよー♪と芽衣は言うが、横の日向は現場を実は見ていた。
『コンディショナーくださいなのですー!』
『あら?そんなに時間が経ってたのね。やわちゃーんお仕事中断するよー』
『だからやわちゃんはやめてくださいと…。まぁ芽衣ちゃんなら中断も仕方ないですが』
芽衣はとある司令部施設の1部屋へ入ると、中の女性に声をかける。女性は後ろの棚をゴソゴソ探りながらどこかへ声をかける。すると、右手の扉より背の高いスーツ姿の女性が入室する。
『うーんと…これか!』
『だからなぜ!司令室の書類棚にコンディショナーのボトルがあるんですか!?』
『だってー取りに行くのめんどくさいし、家に芽衣ちゃん呼ぶとゲンメツされちゃうじゃーん…』
『私があれほど整理整頓とごみ捨てはしてくださいと言ってましたのに?!もう汚れてるのですか?!』
まるでしっかり者の母とだらしない娘の様に話しているが、同じ年である。
『…明日ならお手伝いしに行くのです。八幡さん…』
『ほらー!芽衣ちゃんもこっちの味方ですよ!明日掃除しに行きますからね!』
『お掃除やだー!』
子供のように駄々をこねる妙齢の女性に芽衣は仕方ないと、横の本棚から1枚の写真を取る。
『毎日真面目にお掃除して、1ヶ月綺麗ならこれを着て1日一緒にお仕事手伝うのです』
『それは…ヴィクトリアンメイドだと…!お掃除毎日頑張ったらクラシカル見習い美少女メイドさんがお仕事のお手伝い…うっひょー!!』
『司令は単純で助かります…』
『…毎日調査員を派遣するので、サボって汚れてたらお仕置きなのです』
『お仕置き…ですって!?ほ、ほほぉ…どんな事を…』
身を乗り出し。ワクワクとする女性に対し、芽衣は冷たく言い放つ。
『間宮先輩にお願いして持久走プランとヒナちゃんにおまかせプラン。好きな方を選ぶのです』
『ひぃん!!』
日向はその数日後に取引相手を脅し、精神崩壊1歩手前にした。盗み聞きした内容から恐喝用にアルバムを盗んだ事を姉に言ったらそれはもう酷い目に会う為、心の奥にしまっておく。ちなみに昨日訪れた時はとても綺麗どころか生活に最低限必要な物しか置いてない様にも見えた。雰囲気は独房みたいな部屋だったが、アルバムが詰め込まれている本棚やポスターが部屋の過半数を占めていた。
日向がこちらを向いていると確認した芽衣より「どうしたのです?お姉ちゃんのナイスバディに惚れ惚れしたのです?」と発言があるも、姉妹で乾いた笑いをして返し、芽衣が反論してナイスバディになる説を唱えるも、冬華からは「そういうのを解釈違いっていうらしい…スズねーの教えてくれた言葉…」と言われた為大人しくなる。
「むー…流すのです」
「僕も若返らせるだけで老化はしないから本来の姿までしか歳を取れないけどね…」
能力の影響で将来性のない身体を持ち、ある意味羨ましいと言う人もいる位のアンチエイジングを行っている2人は落ち込みつつ、身体を流し、互いの位置を交換する。
「まぁ…かなり長いこと病める時も健やかなる時もりっちゃんと一緒にいられるのは確実なのです」
「相当な不運が重なってコンマ1秒とか即死級の怪我するとかで無いとほぼ芽衣ちゃんも不老不死みたいなものだしね」
危険からは絶対に守るけどねと六花が言うと、芽衣と日向は苦笑いをして何も言わなかった。
「…流石にあれは予想外だったけど」
「ヒナちゃんどうしたの…?」
芽衣はそんな日向をニコリと微笑みながらウィンクし、人差し指を口元に持ってきて合図する。日向はまた苦笑いをすると何事も無いように浴槽へ向かう。
「ほふぅ〜…気持ちいいのです〜…」
「…多分芽衣ちゃんのせいよね?紙で切ったキズが塞がっていくの」
「いいじゃない、あたしなんか古傷とその中に埋まってた残骸を引き抜かれたのよ?」
「悪いものでないならいいんじゃな〜い?」
お姉様達が薬浴ならぬ芽衣浴をして身体の不調を直している付近では芽衣が幼女ズを侍らせて緑色のオーラをかたどった治癒力らしきものを振りまいていた。
「…構図は成金のおじさんなんだけどなー」
「弥生さん辺りが発狂しそうな光景だよね〜?」
「芽衣ちゃんをおじさんにして3人をもう10歳位歳を取らせれば事案ね…今はただの入浴中の幼女カルテットだけど…。ちなみにさっき謎の小型ドローンを日向ちゃんが回収してたわよ」
何故か日向のおもちゃ箱に小型ドローンが増えたが、遊び方は不定期に姉達のラブラブシーンを撮影してからいい所でやたらセクシーな音楽と共に【せくしーぼでぃですまない】とテロップが下に書かれたマイクロビキニ姿のムキムキのおじさんがポージングする映像を流すという方法だった。遊び始めて数日経った頃に弥生が日向に返してもらおうと土下座しに来たのはまた別の話…。
『ドローン返すか映像流すのやめてください!!お願いいたします!!あの罠、餌が強すぎるんです!!』
『や!』
『うわ゛あ゛ぁん!!いじわ゛る゛!!』