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日向の自警団体験 1日目 思わぬ拾い物

「さて、こいつらだが…何で食料品店なんかに押し入ったんだ?」


「…それが答えじゃないかなー?理解はしてるでしょ、栗原お兄ちゃん?」


彼らが背負っていた薄汚れた袋には缶詰や小麦粉や 米、その他食料品が詰め込まれていた。ドローンを背中に付けた日向はそれに加えるように彼らの武装を持ってきた。


「…酷い粗雑品だね〜…東南アジア諸国連合からの流入品かな?」


所々汚れており、各部がガタガタな銃器に質の悪いサビかけた弾薬。それらが彼等の素性を明らかにしていた。


「吉継さん…多分この子達…孤児だと思う…」


「…隊長、孤児院には補助金とかを支給している筈っすよ!」


明らかに痩せていて、汚れているため分かりにくいがおよそ兵学校卒でない限りレジスタンスに志願できる歳ではない年齢であった。


「…所詮は人間だからな、おおよそ予想はつくだろ?田中」


「どうしようも無いのかよ…」


落ち込む第4偵察班達に日向はニコニコしながら答える。


「ん〜?まぁ救うからこそ生かしている訳でねー?」


「…闇は闇の住人におまかせするよ」


起きてんでしょそこのリーダー?と六花が簀巻きにされた青年に声をかける。


「さっきから上から目線で偉そうにしやがって…」


「さっきの連携は見事だった。是非とも4人揃ってうちの部隊に欲しい位に」


リーダーを褒めるように日向が言うと、リーダーは唾液を飛ばし、『自警団には辞めさせられたぜ、素行が悪いってな』と嘲笑混じりに答える。それに日向が何を勘違いしてるの?と返し、続ける。


「私からの仕事はこいつを売ってるクズと使ってるクズを掃除するだけ、そいつがどうなろうと誰も気にしない」


日向が摘んで持っているのは錠剤や粉、植物片等の違法薬物であった。


「…鉄砲玉ってか?」


「受けてくれれば当面の命は保証するよ〜?君達と孤児院の12人もね」


日向の手元には子供達の写真がクリップで止まった報告書があった。それをリーダーへ放る。


「…頼む…」


リーダーが縛られて腹ばいに転がっている状態で顔を地面に付けて力んで言葉を紡ぐ。


「俺はどうだっていい…!…アイツらを助けてくれ…!俺なら何でもする!!だから…!!」


日向はため息をつくと、4人組に近づいて呆れたように零す。


「はーぁ…今日から皆纏めてハンターオブシチリアの大事な子供達に決まってるでしょーが…。リーダー、あなたもその1人って訳」


唖然とし、顔を上げたリーダーの額を指で弾き、全く…命を何だと思ってるんだろ…と呟く。そしてそこの3人も聞いてるでしょ?と横に並べられたその他に言うと、3人はビクッと動く。


「これでも自分の所持品は大事にする質なんだから!そう簡単に殺してあげないからね!安心してこき使われてね!」


3人は仰向けになり、空を眺めたと思ったらいきなり吹き出す。一通り笑い終わると、


「横暴だぜ…ボス」


「あの子達悲しませたら許しませんからね…」


「しっかたねぇ…よろしく、ボス」


と、それぞれが言い始める。


「はぁ…馬鹿どもが…。…つーわけでよろしく頼むぜ、ボス!」


「よろしくねぇ〜?…ルチェ・ソラーレスクワット諸君!」


「…なんですって?」


何をこいつは言ってるんだ?と目を細める4人組に目の前にいる日向は演説を始める。


「私ドン・ソーレ…太陽の名を持つ私の私兵集団なら太陽の名前をつけるのがマスト!ならばイタリア語で日光を意味するルチェ・ソラーレが適任ではないかー!」


「お、おぉ…」


「うぉー!カッケーぜ!」


「ショータは単純過ぎ…」


「まぁ…クソガキ共よりは聞こえはいいのではないでしょうか?」


ある者は呆気に取られ、ある者は目を輝かせ、ある者はそれに苦言を呈し、ある者は2人が睨み合ってるのを宥める。それを眺めた日向はニッコリと微笑み、いつの間にか来ていた黒塗りのトラックから出てきた屈強な男達に簀巻き共を運ばせる。


「それじゃマリア。訓練マシマシ知力多め情け無しでお願いね?」


「おまかせくださいドン・ソーレ。きちーんと使える手駒にして差し上げるわ♪」


「はーいよろしくねぇ〜」


「「「「そんなラーメンの注文みたいにぃー!!」」」」


強盗犯4人がしれっと誘拐されたのを呆気に取られて見ていた第4偵察班と六花達だが、涼花がポツリと言う。


「いい話だから黙ってたけど…強盗と誘拐と犯人隠秘と銃器不法所持と恐らくこれから殺人まで起こって来る…と思うけど私達…いいの?」


「涼花ちゃん…世の中には黙っていた方が平和な事もあるってもんだよ…犯人は逃走し、行方不明。その際、銃器を落としていくが指紋照合一致無し。指紋データのみ保存し、操作継続…これで問題なしだ」


「…日向ちゃん関係は本人が割と正義のアウトローしてるから考えるだけ無駄っす」


「…悪さはするけど罪なき犠牲者は出さないから、いいかなって。あの店も横流し品と盗品を取り扱いしてるしね…」


涼花以外が遠い目をしてトラックを眺める。その後ろではせっせと日向が西寺を使い縛られた店主親子を大通りの方へ運んでいた。




「えっと…ナンパしてた人と…ひったくり逮捕と…違法営業の店の摘発…よ、よく出来ましたぁ〜…」


「ナンパ男叩きのめして、ひったくり病院送りにして、アクション映画ばりの銃撃戦よ!紗奈姉!もうこの子達捕まえれば私凄い報奨金貰えるわよ!」


目を回して首のスタンプカードにスタンプを押す紗奈と横でギャーギャー騒ぐ凛を2人は苦笑いで見ていた。


「今日も平和!よし!」


「楽しかったね!ヒナちゃん!」


そして知らんぷりして、わざとらしくいえーいとハイタッチする幼女ズ。


「わっ…わぁ…治安良くなるなぁ…」


「この子達の保護者はどういう教育してるのよー!!」


『へくちゅ!』


「あら?芽衣ちゃん風邪かしら?」


「…嫌な予感するのです」




「ただいまー!」


「お邪魔しまーす!」


「あらあら…自警団でお友達作ってきたのね」


「おー、これはこれは…タフな子だねぇ。しかも可愛い」


日穂と小梅は日向の後ろの幼女を撫でながらリビングへ向かう。中に入ると芽衣と遥と亜希がおやつを囲んで談笑しており、その横でお菓子を居候2人も頂戴していた。


「見てー?ヒナちゃんの新しい友達だってー?」


「…タフな子だわ」


それらを見て、居候2人は可愛いー!と撫でに行くが、亜希はあらあらと微笑み、他2人は呆れた顔をする。


「あらあら…懐かしいわね〜」


「理屈は知らないけどなにやってんのよ…」


「あー!おかえり…なのです?」


何かおかしい反応に日穂は戸惑うが、芽衣はそれを気にしないように見覚えのある幼女に近づいた。そして抱きしめるとニコニコしだす。


「…やっぱりなのです。お名前を聞いてもいいのです?」


「六道織音です!ヒナちゃんのクラスメイトで今日は誘われたので一緒に自警団のお仕事を体験してきました!」


芽衣はニコニコと聞き終えると、「ならこれから略してりっちゃんと呼ぶのです」と言うと、


「りっちゃん聞きたいことが有るのです」


「なぁに?可愛いお姉ちゃん」


「ひったくり今日捕まえたのです?」


「うん!」


すると芽衣は少しお話なのです!と声を張り上げる。それに六花は素早く正座をする。そのままお説教が始まるのを見た日穂はとりあえず遥に話を聞くこととした。


「あの子知り合いかしら?」


「…私の元祖妹なのよ」


説教を終えて息も絶え絶えな芽衣は正座して小さくなっている人物を指さし、日穂に問いかける。


「はぁ…はぁ…これをしそうな知り合いを間宮さんなら知ってるはずなのですよ…」


日穂はとある人物を脳裏に浮かべ、無いでしょそんな…と切り捨てる。


「間宮先輩僕ですよ…僕…芽衣ちゃんのスイートダーリン六花です」


「だよねー」


「…ホントじゃない!何よその姿!」


幼女から聞き覚えのある声が聞こえ、スキャン後、日穂は抱き上げ、小梅は面白そうに頬をつつく。


「小梅ぇ?!知ってるなら言いなさいよ!」


「そっちの方が面白くなーい?」


亜希が心配そうに近づき、「元に戻れるの?」と聞くと、六花は首を縦に振る。


「でも日向の自警団体験が終わるまではこの姿でいるけどね。おかーさん」


日穂から下ろしてもらい、亜希に撫でられてる六花を自分の元へ引っ張った芽衣はなにかに疑問を覚えたのか首を傾げる。


「よく見たら有害物質反応が消えてるのです」


「葉月さんの所に捨てさせて貰ったからね」


非殺傷弾の開発費を先払いでどんぶり勘定気味に謎物質を葉月博士に渡した六花は、葉月より【皮膚組織を貫通しそうで貫通しない少しめり込む弾】を作ってもらった。試験結果は「いっその事殺してあげた方が人道的じゃない?」との事だったが。当たりどころにより植物状態となるが一応非殺傷である。


「まぁそれより…おかえり♪」


「なんという幸福感…これが天国か…」


いつもとは逆に足を広げて床に座り、おいでおいでと手招きをする芽衣の足の間に座った六花は芽衣の胸元に頭を預けていた。それを芽衣が愛おしそうに撫でながら耳元で囁き、六花はとろんとした目をしていた。


「…いつもの仕返しかしら?」


「?」


「あー…あの反応は…日穂さん、あれ純粋に労ってるだけだね〜」


困惑しつつ、微笑ましい姉妹の様子を見ていると、芽衣が不思議そうに尋ねる。


「何かあったのです?」


「いやぁ…なんと言うか…」


芽衣は目を伏せ、六花の髪を優しく掬うと呟く。


どんな言葉より、こうやって包み込むような愛情を感じれば疲れなんてへっちゃらだから…なんて♪


「小梅…コーヒーくれる?砂糖もミルクも要らないわ」


「これは…砂糖吐きそう超えて練乳吐きそう」


「「「ぅっ…供給過多!」」」


「あらあら♪若いっていいわね♪」


それぞれが発現した空間に反応する中、姉妹2人は芽衣を撫でていた。


「お姉ちゃん可愛い過ぎ!」


「メイちゃんは可愛いなぁ…」


「悪い気はしないけど何で褒められてるのです?!」


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