神秘の行き先 信仰されるモノの箱庭
「もう離さないのですー!!」
「とてもポカポカ…。お日様…ここがおうち…学校行きたくないかも…」
翌日、大切そうに抱き抱えて離さない芽衣と心地よさそうに抱き抱えられ、芽衣の豊富な神秘でダメにされた冬華VS心配なのは分かるけどいい加減離しなさい!と叱る日穂と芽衣お姉ちゃん!私がいるから大丈夫でしょ!?と姉を諭す妹が繰り広げられていた。
結局は見かねた小梅と遥によって芽衣ちゃん特攻の存在が自警団に混じってやっていた通学路の警備とその盗撮から連れてこられ、芽衣をあぐらの上に乗せて特盛プリンアラモードを食べさせることで無力化が図られた。
「変わったわね…芽衣ちゃん…」
「お姉ちゃんは割と本来あんなものだけど…?」
「妹が出来てから少し大人になったなーとは思ってました。たまに漏れてましたけど」
良く六花お姉ちゃんの独占を我慢してたよねー、まさか恋人という立ち位置にされるとは思わなかったねと和やかに談笑する姉妹に芽衣ちゃんはそんな扱いされているのね…と日穂はつぶやくと、
「まぁー芽衣お姉ちゃんはアイドルというかねー」
「貢がれるのに抵抗は無いけど当たり前とは思ってない様ですし、甘やかされる分ネガティブに自分を評価するし、何より欲張りの癖に臆病ですからね。中学生時代は信頼出来る人間が褒めたり肯定しないと良くない妄想のドツボにハマってメンタルブレイクしましたし…」
「全てが受け身な芽衣お姉ちゃんが積極的に動く様になったのは成長したから?」
「誰かさんへの愛じゃないかしら…?」
あの子めんどくさいのね…と日穂が言うと、あくまで信頼してないとそんな姿は見せないから間宮先輩はもう手遅れですと仲間を見るように言う。
「全く困った妹達だわ…」
日穂は目を伏せしょうがないわね…と微笑んだ。
夕方、芽衣は冬華を伸ばした足の間に入れて座り、ニコニコと音読の宿題を聞いていた。
「はなまるなのですー♪」
「えへへ…」
「「くっ!可愛い…!!」」
ほわほわ空間に実姉2人は悶え床に崩れる。メイちゃんが待ち焦がれた庇護すべき存在に姉らしさが芽生え出してる…!と床に倒れる姉と、芽衣ちゃんのほわほわオーラに堕ちてるうちの妹可愛い!と陰から見てる姉。日穂・小梅コンビはドア前で幸せそうに「とうとしゅぎ」等と寝言を言っていた居候共を結局本邸で間に合ったので2人の家となった離れの居候部屋に投げ込んでから、キッチンで1人じゃ厳しいよねー、そうじゃの…本当に…亜希が来てくれんかったらどうなっておったか…と会話しながら調理器具を片付けている主婦2人を労うと、遥の肩を小梅が叩いて夕食を取ろうと誘い、日穂は六花を蹴る。そして年少の妹達の宿題を中断させ、席に付かせる。
「…妹分への扱いですか?これ」
「バカをしているのを正すのも姉の仕事よね?」
「「いつの間にかご飯ができてる…」」
割と強く蹴られた事でぶーたれる六花と何を言ってるのかしらと呆れ顔の日穂、離れの部屋に投げ込まれていた2人が席に着くと、全員で手を合わせて『いただきます』と言う。それまでは椿の手伝いを持ち回りでやっていたが、芽衣と小梅は戦力外な為割と忙しく動き回っている3人が手伝っていない日は燃え尽きていた椿は今や生き生きとしている。
夕食を食べ終わり、リビングにて今度は芽衣が何かを読み聞かせしていた。日向も冬華も眠気に負け、寝息を立てており、芽衣もうつらうつらしていた。
「…わぁ。綺麗な所なのです…」
「…むにゃむにゃ」
「何で…入ってこれたの…」
『ところでこの娘は?冬華ちゃん知ってる?』
「おねーちゃん…」
『神格ではなく?』
「人間だと思う…。とんでもなく神秘を持ってるけど…」
「はっ…!ここは何処なのです?」
芽衣が本格的に目を覚ますと、白い古風な服を着た朱色の髪の小梅位の女性と、冬華が寝ていた自分を覗き込んでいた。
「神域…?」
『正しくは神秘によって夢を基盤に作られた異空間?』
「夢と考えておくのです…」
キョロキョロと周囲を確認する芽衣を後目に2人はコソコソ話す。
『何でここに来れたんだろう?』
「…最近はお姉ちゃんから採った神秘も�����様に流し込んでるから身体が接触して夢を見たのをきっかけに入り込んだのかも…」
『…通りで最近庭の花が咲き乱れてると思ったよ』
「わあー!花畑なのですー!」
芽衣が歩くと花は全て開花し、果樹は実を付け、芳しい香りが辺りを包む。
『ひぃー!やっぱり強力な神格じゃん!』
「数十万人以上の信奉者がいるから…神というよりアイドルだけど…」
情けなく障子の裏に隠れる女性とため息をつく冬華は果樹が傅き、絨毯の様に芽衣の周囲に咲き乱れる花を眺めていた。