第7話 仲間
伝説の剣に吸い込まれた少女剣士がミキオの仲間になります。
果たして、その実力は?
煉瓦造りの広間の真ん中に、大理石のテーブルが置かれている。
それを囲むように重厚な造りの椅子が並ぶ。
「…でありまして、観測班によりますと現在、魔王城には特に目立った動きは見られません。特調隊からの報告は以上です。」
話し終えた男は椅子に腰掛けた。
それを鋭い眼光でチラリと見てから、周りを見回すように老人が声を発した。
「質問は特にないかの?…では、次は勇者管理局。」
今度は黒髪のマッシュルームヘアにメガネの男が立ち上がった。
「はい。まずは『世界を救う勇者』の動向ですが、先月から2名消失し、現在7名となっております。」
室内がざわめいた。
「もうそんな数か」
「半年前には20名いたのにか」
「育成はどうなっているんだ、仕事しろ!」
ドンッ
机を叩く音ともに、先程の眼光の鋭い老人が周りに睨みを効かせた。
ざわめきが一気に静かになる。
マッシュルームのヘアの男は話を続けた。
「2名のうち1人は、死亡が確認されており、最近動きが確認されている魔王軍の傘下の組織『バイタービット』によるものだと考えます。もう1人は、『世界を救うかもしれない勇者』と戦い、負けて勇者としての心が折れた状態だということです。」
室内が再びざわめいた。
「『世界を救うかもしれない勇者』というと、最後まで登用を決めかねていた補欠じゃないか」
「補欠がレギュラーを上回ったというのか?」
「レギュラーと補欠の人選どうなっているんだ!仕事しろ!」
マッシュルームヘアの男はメガネをくいっと上げた。
「あまり期待されていなかったこの補欠ですが、この頃なかなか面白い動きをしておりまして…」
場面は変わって洞窟。
戦闘が開始される様子。
敵は十匹はいる、吸血コウモリ。
対するミキオは、伝説の剣を繰り出した。
「いけっ!アオイ!」
伝説の剣は一歩前に出ると、横一文字に刃をはらった。
すると、斬撃が現れて吸血コウモリを全匹残らず斬り裂いた。
吸血コウモリたちとの戦いに勝った。
「つ、強すぎる…」
ミキオは冷や汗をかいた。
ゲジゲ寺院の一件のあと、ミキオは伝説の剣と一緒に旅をすることになった。
魔大陸にいるという、どんな呪いをも解く魔女を訪ねるまでだ。
伝説の剣の中の人はアオイと名乗った。
騎士を目指す修行の旅の途中、伝説の剣を知ったという。
もともと剣の心得があるということだが、この女の子、
…強すぎる。
気がつくと、この威風堂洞窟を牛耳るボスモンスターを膝まづかせていた。
「す、ずいまぜんでじだぁ。もう悪さはしません。」
巨大なコウモリ男が土下座をしている。
「最初から大人しく従っていればいいのよ」
凶暴な見た目のモンスターが宙に浮く剣に土下座とは、なんとも不思議な光景だ。
「…さあ、行こうか。そろそろ鞘にもどって!」
ミキオは伝説の剣の鞘をアオイに向けた。
「いや!」
アオイはグルングルンと回った。
たぶん首を振る動作のつもりだろう。
「なんであたしがそんなとこ入らないといけないのよ」
「剣が一人で宙に浮いていたらみんなビックリするだろ、それに抜刀状態だと周りを刺激することになるし」
アオイはグルングルンと回った。
「ぜったいいや!向かってきたやつは全員斬りすてればいいのよ」
この脳筋め!とミキオは思ったが黙っていた。
「…ったく、お前はピ◯チュウか!街に着いたらちゃんと入れよ?」
ここ威風堂洞窟はゲジゲ寺院とは反対に位置する洞窟。
この洞窟を抜けてさらに進むと大きな街があり、そこにアオイの知り合いの情報屋がいるという。
その情報屋は地理に詳しいとか。
ミキオ一人では入ることを躊躇った洞窟だったが、正解だった。
洞窟の中はモンスターだらけ。
そんな中アオイはバッサバッサと倒していく。
戦闘においては非常に頼りになる仲間だ。
というか、ミキオはさっきから何もしていない事に気付いた。
(俺はポ◯モントレーナーか!)
自分で心の中でツッコミを入れながら歩いていると、前方に眩しい光が見えてくるのが分かった。
「…で、出口だ!!」