第3話 女神像との別れ
旅立って早々、アウェーの洗礼を受けた、勇者ミキオ。
ようやく街にたどり着きます。
東の空が明るくなる頃、ミキオは涸れ井戸の廃村をたった。
廃屋にベッドを見つけ、寄せ集めの寝具で夜を明かしたのだが、体力は全快とは言えず全身が重く頭痛が残っている。
あと、パンツの中の縫い針(大切なアイテム設定のため捨てられない!)がチクチクする。
日が登れば強力なモンスターの出現率は下がる。
装備がパンツだけのミキオはどうしても戦闘は避けたかった。
もっとも、平和なこのグレートピジョン大陸には雑種の弱いモンスターしか存在しない。
モンスターに必要な瘴気が少ないためだ。
一方、世界の勇者の情報が集まる都市『ライブラ』や魔王の住む城がある、ケルベロス大陸は瘴気が濃く、強力なモンスターがうようよしている。
噂ではこのケルベロス大陸のどこかから、瘴気やモンスターが溢れ出しているとか。
ともかく、今は装備だ、とミキオは思った。
この先を進めば、街がある。
そこでなんとか防具と武器を手に入れよう。
村を出て早々丸裸にされました、じゃあ、よろず屋のババアや他の勇者たちにどれだけ笑われるか、分かったもんじゃない。
「高っ、もう少し安くならないですか?」
たどり着いた街の武器屋で、ミキオはひたすら値切っていた。
武器屋のオヤジはもうウンザリという顔だ。
「あのなあ、あんちゃん。そんなパンツ一丁で値切られてもなぁ。そもそも金持ってねぇんだろ」
ミキオはパンツの中から何かを取り出した。
「金はないけど、これがある!ほら、コーラ草!」
武器屋の鬼の形相になった。
「てめぇ、武器屋を舐めてるだろ。帰れぃ!」
「そこをなんとか!この店に来るまでコーラ草しか食ってないし、街に入っただけで衛兵呼ばれるわ、大変だったんだよぉ」
まあ、当たり前だが、追い出されてしまった。
モンスターを倒せばお金は手に入る。
しかし、武器や防具がなければモンスターを倒せない。
トボトボと歩くパンイチのミキオは、質屋の看板を見つけた。
「ごめんな、親父。金が手に入ったら取り戻しに行くから…」
「…安っ、もうちょっと高くならないですか?」
ミキオは質屋に入ると、女神像を差し出した。
が、提示された金額は1000ペーター。
質流れ品コーナーにある、武器と防具がセットになった『初心者パック(中古品ほぼ未使用)』は2000ペーターとなっている。
ん?この初心者パックという中身、見覚えが…
「あっ!これ、俺のだよ!昨日山賊みたいなやつらに強奪されたの!これ返してよ」
ミキオは質屋のジジイに食ってかかったが、
「そんなこと、ワシは知らん。この石像で渡せるのは1000ペーターまで。だいたい、そこにコーラ草を加えて金額上乗せしろとか、質屋舐めてるじゃろ」
質屋はゆずらない。
ミキオは仕方ない、と呟くように言った。
「この女神像ノーパンなんだよなぁ。まあ、値段上げてくれないなら持って帰るけどな」
「な、な、なんじゃと!」
で、まぁ、ともあれ、結果的に『初心者パック(中古品ほぼ未使用)』のうちの武器以外は買い戻す事ができたのであった。