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5億の勇者と1人の魔王  作者: エモニー・レモニー
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第2話 女神像の秘密

30年間暮らした村を離れ、真の勇者となるべく旅立ったミキオ。

早速、最初の試練が襲いかかります。

草の生い茂った地面にミキオはパンイチで横たわっていた。

傍らには父から託された女神像も一緒だ。

(ええと、なんでこんなことになってるんだっけか…)

これまでの記憶がぼんやりしている。なんだか頭がズキズキする。

(確か…山を降りて近くの村に…)

ミキオはゆっくりと身体を起こした。

視界に古びた井戸が入ってきた。

しばらく使用された形跡がない。

(そうだ、思い出した!)

次第に記憶が戻ってきた。


〈半日前〉

山の下り坂から見えた街を目指すミキオは、途中にある村で少し休もうと思った。

(み、みずを…)

ミキオの村からとなり村にあたるそこは、何度か訪れたことのある、馴染みのある場所だった。

異変を察知したのは村が目前に迫ってきた時だ。

やらたと草が多い気がする。

家々が草に埋まっているように見える。

村の入り口に差し掛かった時に、気のせいではないことが分かった。

村は荒れ果て、棄てられた跡だったのだ。

あたりに人の姿はない。

(と、とりあえず…みず)

記憶と大きく異なる景色の中、まるで糸たどるように井戸にたどり着いた。

「み、水がない…」

井戸は涸れ果てていた。

周囲の気配に気づいたのはその時だった。

ミキオが井戸に気を取られていた間に、5人の男に取り囲まれていたのだ。

男たちは鎖帷子や鎧、熊の毛皮などあり合わせの装備を組み合わせたような格好をしている。手には斧や鋸が握られている。

山賊と言った風貌だ。

最初に喋ったのは鎖帷子の男だった。

「はい、あなたが村に来てからこの井戸に気付くまで5分32秒かかりました…」

続いて中でも1番屈強に見える男が声を発した。

「勇者さんよ、今さら何しにきた!この井戸を見てなんにも思わねぇのか!」

ミキオはその剣幕にビックリして、今にも腰を地面に付きそうになった。

「み、水を分けてもらおうと…水は出ないんですね…」

恐る恐る声を絞り出したミキオに熊の毛皮を被った男が反応した。

「そこになければもうないですね」

コンビニ店員みたいなコメントだ。

屈強な男は毛皮の男をチラッと見てからミキオの方を睨みつけ言った。

「そうじゃねぇ、お前、俺たちがどういう想いで待っていたのか、分らねえのかって聞いてんだよ」

無論分かるはずもないが、ミキオは、恐怖に反論もできず黙っていた。


屈強な男は語り始めた。

かつてここは水に恵まれた美しい村だった。

しかしある時突然井戸が枯れてしまった。

すると村を訪れた旅の占い師が、まもなく石像を抱えた勇者が現れ井戸を蘇らせると告げたという。

しかし待っても待っても勇者は来ない。

村民たちは水を求めて去っていった。

村長だけが勇者を信じて待ち続けた。

コーラ草というコーラの味のする草の汁をすすりながら勇者を待つと。

「…しかし勇者は来なかった。俺たちが村長の様子を見に行ったとき…すでに村長は…」

屈強な男は目に涙を浮かべている。

「村長はコーラ草を食べ過ぎて…コーラを掛けないと何も食べられない身体になってしまった…」


なんだそりゃ、とミキオは思ったが顔に出さないようにした。

鎖帷子の男が足を一歩踏み出して言う。

「はい、占い師のお告げからあなたがここに来るまで、4年2ヶ月と5分32秒かかりました…」

屈強な男はそうだそうだと頷いた。

「お前は遅すぎたんだ。PTSDでそこの鎖帷子のやつは教師風の喋り方に、

熊の毛皮のやつはコンビニ店員風の喋り方しかできなくなってしまった。これは償ってもらわなければならねぇ。そこでだ」

屈強な男がそう言い終えたと同時に、ミキオの頭に激痛が走った。

背後の鎧の男がミキオに鉄パイプを振り下ろしたのだ。

倒れるミキオ。意識がぼんやりする中で、屈強な男がミキオの荷物を漁り始めた。

「金めのもの全部頂いていくぞ。こいつの装備品も外せぃ!」

「アニキ、ロックがかかってるのものがあります」

「なんだぁ縫い針なんか『大切なものアイテム』設定されてんのか。こんなもん売れんだろ、置いておけ」

「アニキ、この石像は?」

「ばかやろう、こんな荷物になるもの担いでいけるか!置いておけ」

PTSDで喋り方がどうのこうの言われてた奴も普通に喋っていた気がするが、なんかもうどうでもいい。

その一人がミキオの旅人カバンからなにかを見つけたようだ。

「…巻物があります」

薄れゆく意識の中で、ミキオは巻物には女神像秘密が記されているという父の言葉を思い出した。

その秘密は一国の軍隊をも動かすという。

「そ、その巻物は…ダメだ…」

「うるせい、黙ってろ」

ミキオが伸ばした手は屈強な男に蹴飛ばされた。

屈強な男は巻物を開き、読み上げ始めた。

「へっへっへ、なになに…この書は女神像の秘密を記したものである。その秘密、それは…ノーパン」

そこまで読んで屈強な男は女神像のスカートを覗いた。

そして、激怒した。

「てめぇ、ふざけんなこら!!!」

他の男たちも同じように中を覗いては、怒り狂っている。

「…チン○ンついてやがる」

男たちはミキオをボコボコにし、去っていった。



〈現在〉

思い出しただけでも腹ただしい。

ミキオは怒りに震えた。

占いで勝手に悪人にしやがって。

そして、女神と信じていた石像。

なんだこれ。

ミキオは怒りのまま、目の前にあるコーラ草だという草を千切って口に入れた。

「マズっ」

すぐに吐き出した。

「…言うほどコーラ味でもないし」


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