プロローグ⑥ 卒業
これでプロローグ完結です!
IRC━━international robot college
『国際ロボット学特殊専門学校』
その歴史は古くおよそ100年前から存在していたと言われるが、その実態が明らかになったのは2年前の事である。
とある大事故が起きてその存在が隠し通せなくなり、世界的にその存在が公になるまで、この学校は完全極秘を貫いていたのだ。入学条件、入学者数、在校生、卒業生、場所、教師、内容に至っても何もかも秘匿されていたのだ。
それまでロボット学で有名だった博士号をもつ人達や各国の軍隊のエリート士官達が軒並みIRCの卒業生であると明らかになったのも、この後のことだ。
IRCを卒業しただけで、エリートコースが用意されると言われているが、入学条件がスカウトのみという狭き門どころか選ばれし者しかその敷居をまたげないのだ。
さて、ではここで疑問が生まれる。
「伊集院君は3年間IRCに通っていたんだね」
「そうだよ」
「なら、なんでエリート街道外れてるの?」
そう、本来IRCを卒業したなら、エリート士官の道か研究者の道に入っているはずである。こんな軍学校に通う必要など無いのだ。
しかし、その疑問はあっさり解かれることになった。
「卒業してないんだよ」
「え?」
「1年通って1年休学して復学したんだけど、色々あって辞めたの」
中退したのか。いや、そもそも休学とか何があったのか。ただ、そこら辺は触れていいのかわからずに、迷っているうちに話が変わった。
「因みにシルヴィーはエリートコースな。IRCをちゃんと卒業して去年ドイツ軍入隊。上級大尉で、今年からこっちに出向してきてるわけだが、こいつまだ20歳な」
「は?」
衝撃の事実が明らかになった。
「え? 1つ上なだけ?」
「そうだぞ?」
外国人の女性の年齢ってわからなすぎない?!
「まぁ、そんなわけで、卒業まではミスター知らんていで頼むな?」
「あ、うん。わかったよ」
僕は食堂に残って、流石にどこに誰の目があるかわからないから、少し距離を置いて出て行った2人を見送った。
「……だ、そうだよ?」
2人が出て行ったのとは別、女子寮側の扉に声を掛ける。その扉は、掃除の際に換気のために開けたまま閉めるのを忘れていた。
「……」
声こそしなかったが、そこに彼女が居た事は実は気付いていた。
「……あいつにとったら、さ」
嗚咽が聞こえても、僕には返事はできなかった。
「私は所詮口うるさいだけの姉か妹なんだよね」
伊集院君と河野さんは生まれた時からずっと一緒だった。僕は中学で出会ったばっかりの人間で、2人の今までをほとんど知らない。知っているのは、再会してからを含めても5年も満たない。そんな僕には河野さんに掛ける言葉を持ち合わせていなかった。
そして、それから間もなくして、卒業式の翌日、河野さんはいつの間にか僕達の前から姿を消していた。
うまく要約出来ずプロローグだけで6話も使ってしまいました。
ようやくですが、別主人公サイドの幕間を1話挟んで本編に入ります!