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平凡な僕と天才の君達  作者: 勇気堂悠那
プロローグ
4/17

プロローグ④ 整備班のアイドル

プロローグは全5話の予定でしたが、次で終われるか、自信無くなってきました

「よっしゃあ!再試験通ったぜ!!」


初めて実機に乗ってから2週間が経った。橋本君はようやく座学の試験にパスして、今日から実技の授業にようやく参戦出来る。

まぁ、再試験どころか、再々々々試験だったのだけれど……。

この2週間で2人の天才は既に実機の動かし方をほぼマスターしていた。

「教えること無いよな、こいつらには」

とは、教官の言葉だ。


そして、この2週間で、もう1人以外な才能を見せた人物が居た。

河野さんだ。

彼女の才能は実機の整備中に、その片鱗を見せた。

実機は動かした後、自分達で整備も行うのだが、素人にはメーターの目視で確認できる燃料の消費や、明らかな破損しか見つけられないのが、普通だった。

ところが、河野さんは意外なモノで内部の異常を見抜いたのだ。


「愛華の機体、右足駆動部の音が変」

「ほへ?」

初回実技の翌日、第2回実技の授業終わりに河野さんが突然そんな事を言い出したのだ。言われた愛華ちゃんは実機を降りようとした所で硬直した。

「音?」

「ええ、前と違うわ」

「……」

お前わかるか? いや、わからん。こんな会話がクラスメイトに広がっていた。

「がぁはははは!」

突然の怒号に皆が、その音のした方を振り返る。整備士のおっちゃん達だった。

「嬢ちゃん、この音がわかんのかい?」

「は、はい」

河野さんもびっくりしてどもった声で返していた。

「すげーな、この音の違いに気付くとは! お嬢ちゃんの家は工場かなんかやってんのかい?」

先頭のおっちゃんは軽い感じで地雷を踏んだ。

「いいえ、私に両親は居ません。施設で育ちましたから」

河野さんは気にする風もなく返したが、事情を知らないクラスメイトやおっちゃん達は凍りついていた。

「そ、そうかい。そりゃすまねーな」

「いいえ、大丈夫です。慣れてますので」

おっちゃんはひとつ咳払いをしてから

「んじゃ、嬢ちゃん、右足駆動部がどう悪いかはわかるか?」

と話を強引に戻した。

「……それは……」

「それは?」

河野さんは目を閉じて、音に集中し始めた。でも、流石に音だけで、そんなことが分かるはずがないだろう。だって僕達は素人なんだから。

「引っかかる音。外装が歪んで、内装を傷付けてる?」

は?

「おいおい、マジかよ」

え? 嘘でしょう?

「おい、すぐ調べろ!」

「は、はい!」

おっちゃんが若い人に指示を飛ばして、若い人はダッシュで愛華ちゃんの機体の右足駆動部に飛び付いて確認、そして……。

「おやっさん! 間違いありません!」

と、言った。

「マジかよ、俺らでも音の違いを見極めるなんて未だに出来ないんだぞ」

「え?」

出来ないのかよ!? さっきまでの感じじゃまるで出来るように聞こえていたぞ!

「嬢ちゃん、他には!」

言われて、河野さんは再び目をつぶった。

「……雅の機体の左足駆動部、同じく外装の歪み。原因は相撲ね」

「相撲?」

あぁ、なるほど。今日も勝手に相撲をして遊んでいた2人の機体だけが、破損してたんだ。

「愛華の機体の右足と、雅の機体の左足が接触して、外装が歪んだんでしょう」

「雅ってのは、どいつだ?」

『俺だな』

まだ実機から降りていなかった伊集院君は音声と挙手で自己申告した。

「14番機だな、調べろ。坊主、少し動くなよ?」

『ああ』

さっきとは別の若い人が調べに行く。そして、やっぱり

「間違いありません!」

と、言ったのだった。


と、まぁそれから2週間が経ち今では河野さんは、整備班のおっちゃん達のアイドルと化していた。

「嬢ちゃん、さっさと卒業して、うちに就職しろよ、な?」

「何回もお断りしているじゃないですか」

「そう言わずに、な!!」

ちなみに伊集院君と愛華ちゃんの機体の損傷は大した事はなく、その場ですぐ修復されたが、相撲は禁止されたのだった。なので、最近、あの天才達はどこから見つけて来たのか、大きなピコハンとヘルメットを使って、『叩いてかぶってジャンケンポン』をしている。実機2体が、正座でひたすらじゃんけんしている様子はシュールでしかない。

「うぉー! すぐ追いついてやるからなぁ!」

雄叫びを上げて走り去る橋本君だが、今日の初回実技では機体を走らせる事すら出来ていなかった。

「あいつ放課後居残りだな」

教官の『地獄』の居残り特訓の甲斐もあり、橋本君が遅れた2週間分を取り戻すのに要した時間はたったの2日だった。

最後まで読んでくれてありがとうございます!

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