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平凡な僕と天才の君達  作者: 勇気堂悠那
第一章 発端
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第4話 友達

今回の話を書いていて、舞台がどこかを明記していなかった事に気付きました。申し訳ございません。


伊集院、美木多、初芝が所属している基地は大阪の某所にあり、また彼らが出会った中学も大阪にあります。彼らにとっては地元というわけです。

敵の襲撃から数時間後。僕達は基地の中庭に集結していた。基地の司令が即席の朝礼台に乗って、こちらを見ていた。


「今回の未曾有の襲撃に於いて、殉職した2人の若い命に。敬礼!!」


今回の襲撃で出た実機の被害は甚大だったが、人的被害は、最初の襲撃で無人機に襲撃され、破壊された見張り塔から転落した2名だけだったらしい。


今皆で黙祷を捧げている。


しかし、何故だろう。何故か刺すような視線を感じる。


「なんだ、お前ら」


聞き覚えのある声に目を開けると、伊集院君が他の小隊の人達にガンくれていた。


「裏切り者!」

「なんだと?」


伊集院君が食って掛かる。


「お前と、お前らの隊長が付き合ってたのは、この基地じゃ知らない奴は居ない! お前も裏切り者だろう!」


周りからそうだそうだと同調する声が上がる。

朝礼台の司令も、それを咎めることなく、ただ状況を眺めていた。


あ、これ四面楚歌っていうやつか。

周りに味方は居ないらしい。司令も止めないという事は、そういう事だろう。


「美木多、これ、どうにかなさいよ」


愛華ちゃんが無茶振りしてくる。まぁでも、そろそろ止めないと伊集院君が暴れ出しそうだしな。


「ちょっといいかな?」

とりあえず猛獣を引き止める。愛華ちゃんが、すかさず後ろに回って、2人で前後から挟むようにして、猛獣の動きを妨害する。


「裏切り者の仲間が、なんだ! どうせ、貴様も裏切り者なんだろう!」


この人もたいがいしつこいな。まぁ身内(・・)が死んでいるのだから仕方ないかも知れないが。

まぁ、だからと言って言われるがままで居るつもりもないけれど。


「僕達の隊長が裏切り者だったことと、彼が隊長の恋人であったことは、覆しようの無い事実だけど、君がお兄さんの死で冷静さを失っているのも、また事実だろう」


言ってる途中で後ろの猛獣が、言い切った所で正面の隊員が、それぞれ僕に掴みかかってきた。

「なんだと?!」

「ほら」

「あ?」

その手を掴み返しながら続ける。

「職業軍人たるものが、単純な挑発で我を失い、掴みかかってきた。この行為が、君が冷静でない何よりの証拠だろう」

「·····」

冷静さを取り戻したようで、力を入れずに外す事が出来た。


「伊集院君」


後ろを振り返らずとも、僕にはわかる。この手は振りほどく必要も無かった。


「行こうか?」

少し間があってから、後ろの手が外れた。普段は僕より背が高い彼が、小さく見えた。

「ご一緒するわ」

愛華ちゃんが、そう言って付いてくる。

「いいの?」

「私だけここに残っても居場所なんて無いでしょ」

「それは、そうか」


裏切り者のレッテルを貼られていたのは、伊集院君だけでなく、僕達全員だったのは視線でわかっていたことだしね。


「とりあえず、祐介の所にでも行きましょう」

中庭から出た所で愛華ちゃんから提案が出た。

この基地以外の状況がわからない状態で、恋人の安否を確認したい愛華ちゃんの乙女心はわかるけど、橋本君は・・・・・・。

「待て」

後ろから誰かが追ってきていた。

「·····司令」

先程の暴徒を止めようともしなかった人が何の用だろう。

「お前らの機体の整備は終わってる。持って行け」

「えっ?」

伊集院君の機体は脚部切断されていたのに、もう整備が終わっている?いつの間に?

よく見ると司令の軍服はところどころ整備油で汚れていた。まさか、1人で僕達の機体を?

「あいつらを止められなかったのは、すまなかった。出ていくにしろ、せめて戦力は持って行け。他基地からの連絡も途絶え、送り出した偵察部隊は帰還しない。恐らく外はあのGという連中に支配されていると見て間違いないだろう」

それだけ言うと、司令はまた中庭に戻って行った。


「あの人、よく私達にキレなかったわね」


愛華ちゃんが言って、思い出す。

亡くなった2名の隊員の内、片方は司令のたった1人の息子さんであったことを。

本当なら、先程の隊員と一緒に僕達を糾弾する立場に居てもおかしくない。


格納庫に行くと、僕達の3機の実機は確かにきっちりと整備が済んでいて、すぐにでも発進可能になっていた。


「んで、橋本ってあいつ何処だっけ? 近い?」

1年留年が決まった橋本君は、別の訓練校に飛ばされていた。

「いやいや、寧ろ1番遠いでしょ。彼は札幌だよ」

「あー、そうだった。そうだった。んー?」


何やら考えている伊集院君。


「初芝、お前1人で北海道行けるか?」

「へっ?」

いきなりどうしたんだろう?


「なんでよ」

「いや、今この状況で知り合い探しする意味あんま無いなぁって思って」

いや、そうだとしても、なんで1人で行かせる必要があるの!

「昨日ちょうど一人乗りのステルス輸送機を開発したんだよ」

「へっ?」

いきなりの発言に間の抜けた返事をしてしまう。


「実機が一機積めて、しかも自動運転で目的地まで飛んでくれるオート運転機能付き。流石に目視されたら見つかっちまうが、初芝ならマニュアル操作で何とかできそうかと」

なんてものをなんてタイミングで作ってるんだよ、この人は。

「普通の飛行機くらいのスピードも出るから、あいつらの飛行する実機の追跡からでも余裕で逃れられるはずだ。どうだ?」

「いいわね」

即答だった。

「んじゃ、私はその輸送機で祐介探しに札幌行くわね。あんた達はどうするの?」

「んー? ミスター次第かなぁ 」

「僕?」

どういうことだろう?

「·····まぁ、いいわ、さっさと輸送機持って来てよ」

「んー。イエス、マム」

全く敬意を感じられない返事をしながら伊集院君は格納庫の奥の方に消えて行った。


「愛華ちゃん」

「どうしたの?」

2人になって、僕は感じていた疑問をぶつけてみた。

「君も、伊集院君を信用できない?」

「·····」

「なんとなく、壁を感じた気がしたんだ。そして、決定的だったのは、この状況での別行動の事」

「別行動言い出したのは伊集院じゃん」

「でも、そういう風に持って行こうとしてたよね」

「·····」

橋本君に会いに行くのは恋人である愛華ちゃんからしたら、なんら不自然な発言ではなさそうだが、ここ大阪から、いきなり札幌は遠すぎる。隣の京都に居る河野さんならともかく。

それに気付いたから、伊集院君も別行動を提案したのだ。


「逆に聞くけど·····あんたはあいつを信じられるの? 美木多」

「うん」

即答した。そんなもの愚問だ。

「どうして?」

答えはひとつしかない。

「友達だから」

いつも拙作を読んで頂きありがとうございます!

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