適正武器判定当日の朝
「う、うぅ……ふぁ〜あ」
いつもより早く目が覚めた。というのも、今日は待ちに待った適正武器判定の日なのだ。適正武器判定とは15歳になった王国民であれば誰しもが受けるものであり、個々人の扱える武器を判定する検査のようなものである。
もちろんどの武器に適正が出ようとやることが制限されることはないが、王国軍だけは例外だ。俺はその軍に入ることを目標に今日まで努力してきた。
「軍に入るには剣、弓、もしくは杖の系統が適正だと判定されることが絶対条件……か」
剣系統は近距離での殺傷能力を、弓系統は遠距離からの援護を、杖系統は魔法による補助および殲滅を得意とし、それで完結するため他の武器適正は不要と判断されたらしい。
うーん、個人的には剣系統がいいかな。やっぱり物語の英雄は剣系統の武器を使ってるし。
「あー楽しみだなー。まだ時間あるのに準備終わっちゃったよ。……しょうがない、外で体でも動かすか」
判定の時間まであと2時間はある。判定会場である教会まで歩いて行っても30分とかからない距離だ。
1時間で軽いストレッチ、筋トレ、ランニングをこなし家に戻ってきた。出迎えてくれたのは出勤前の父だった。
「おはよう父さん」
「おはようラムシロ。今日の判定が楽しみで起きてしまったのか?」
「あはは、バレてたか。なんというか落ち着かなくてね」
「お前は幼い頃からこの日を楽しみにしていたからな。」
「うん、父さんや兄さん達みたいに軍に入りたいからね。魔物をバッタバッタと薙ぎ倒す剣士になりたいんだ」
父はそうかそうかと笑いながら家を後にした。父の名前はアンブロワーズ・ルナール、我がルナール家の家長であり軍人だ。適正武器は片手剣。この前見せてもらったけれど無駄な装飾が無くシンプルでとてもかっこよかった。父の性格を反映しているようだった。
「俺の武器はどんなものだろうか。父さんのようにシンプルだろうか、カイト兄さんの弓ように派手なつくりをしているだろうか」
カイトはルナール家の長男であり、父同様カイトもまた軍人である。適正武器は弓でとても煌びやかな装いをしていた。カイトの女好きという性格が強く出ているのかもしれないと思ってはいるが口にはしない。
剣系統も捨てがたいが杖系統の適正が出て親子3人で各武器でのトップに立つというのも面白いかもしれない。などと考えながら汗を洗い流し、教会へ向かった。
「あ! ラムシロー! おはよー!」
「おはよう、ラムシロ君」
「おう、おはようリリィ、トーマス」
教会へ向かう途中で俺を待っていたのは幼馴染のリリィ・エメットとトーマス・リーランドの2人だった。
リリィは茶色の短い髪に同じ色の瞳でとても明るい性格をしている。可愛い。
トーマスは銀の髪に切れ長の目で落ち着いた性格だ。悔しいけれど俺より数段イケメンである。
2人とも物心ついた頃から一緒に遊んでる気のおけない親友だ。そして皆で一緒に軍に入ろうと何度も語り合った仲である。
「判定楽しみだね。どんな武器になるかな〜。杖だといいなあ」
「僕は弓がいいな。カイトさんみたいにかっこいい弓使いになりたい」
「カイト兄さんの弓みたいに派手なの出すなよな。俺は剣がいい。それもロングソードがいいな」
「あはは、バラバラだね。でもバラバラだからこそ3人で力を合わせて魔物を倒せるわけだから良いことなのかもね」
「まあまだ何も決まってないけどね」
もう何回目、いや何十回目になるかわからない話をしているうちに教会の象徴である『神の翼のレリーフ』が見えてきた。
これまでこの瞬間を夢見てはいたけれど、いざ見えてくると泥の中を歩いているかのように足は重くなり、高高度にいるかのように息苦しくなった。
それもそうだ、もし剣系統でなかったら、弓や杖でさえなかったらこの先の人生を軍に関わることなく過ごしていかなければならないのだから。
「さあ、行くか」