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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

With you

作者: Kognak

初投稿なので誤字脱字、文章構成等、多々至らぬ点があると思いますが、少しでも読んでいただけたなら。

ふと我に返って手を放す。長いこと手に力を込め続けたせいか、私の指の感覚は薄れて冷たくなっていたが自信を支配する別の感情がそのことに気付くまでの時を余計に稼いでいるように感じられた。

見ると、一人のヒトが力なくソファーへ身を投げ出している。表情に生気は無く、首元には大きなとの跡が残っていて、足元には異臭のする液体が広がっている。

しかし私の脳裏を占める感情は『焦燥』。とにかく焦っているのだ。一人で生を絶つ方法について。


「やってしまった」


当初の目的では、この女と共に死ぬつもりだったのだ。平和的に。ソファーの前に散らばる袋の中に入っている約5ミリの『方法』で、争いなく静かに眠る筈だったというのに。これを手に入れるのにどれだけの手間をかけたと思っているのだこの女は。気道を圧迫され体内の酸素が減少し、白目をむいて……もがき苦しみながら息絶えることに何の意味があるのだろうか。死という事実には変わらないがこの方法よりは平和的な方法を提示してやったというのに、何故頑なに拒み、抵抗を試みたのだろうか。その後に孤独に死んで行く人間の身にもなってくれと文句の一つでも言ってやりたいところだが、あいにくその相手はもう話すことはおろか、命の灯さえも消えているので、地獄の苦しみを強要してしまったことに対し謝罪をする。


「ごめんな。でも私たちが死ぬことには意味があるんだ」


その言葉も音のないこの部屋ではむなしく消える。しかし感傷に浸っている場合ではない。この女に懺悔する暇もない。私には時間がないのだ。若干出てきた罪悪感を押しつぶし、思考する。

この部屋でただ一つ音を刻む時計に目をやると、針は22時を刻んでいた。今日は残り二時間程で終わってしまう。そのに時間の中で眼前の遺体を人目につかない場所へ運びつつ、自らをも殺す必要があるのだ。早く移動するためには荷物を減らし、手間もかからないようにするべきだろう。取り敢えず女の四肢を切り落とすことに決めた。それだけで大分重量を落とせるだろうし、何より行動の邪魔になる。レインコートでも着れば血は着かないだろう


「手足は……細かく刻んでから、トイレにでも流すか」


遺体の処理を終えたのは僅か三十分後のことだった。私は着ていたていた大きめのレインコートとゴム手袋を脱ぎ捨て、あらかじめ部屋の隅に掛けてあったコートを羽織り、ポケットを確認する。車のキーは無くなってはいないようだ。勿論、脱いだ後も心配性の私は確認を怠らなかったが、キーを利用することは元々頭の中に無かった。所謂、不測の事態というやつだ。だが絞殺というのは良い判断だったかもしれない。多少のひっかき傷が自身の顔や首元に見受けられるものの、血痕等が付着することはなく外に出るという点で問題はない。もし、鋭利な刃物で済ませていたものなら暴れまわる相手とこの窮屈なアパートの一室だ。皮膚に付着する分ならまだいいが、身体に付こうものならどうしていただろうか。まあ結局は血を流してはいるが、的が動くわけではないので幾らでも対策のしようはある。悪手ではあるが満身創痍ではないのではなかろうか。自分を奨励しながらも部屋にガソリンを撒き終える。薬を服用してこのアパートごと焼失させるという計画が五分五分の形で遂行した。このアパートは曰く付きとして他に居住者がいなく、大家もここで住んでいるわけではないということを契約時に承知しているので、無益な被害はないだろう。


部屋に立ち込める死臭と耽美な石油の臭いに思わず顔をしかめながらも、床下収納で埃を被っていた寝袋へダルマを詰め、担ぐ。コートのもう片方のポケットからライターを取り出し布団のシーツごと燃やす。十分に燃え始めたことを確認すると急いで部屋を出る。彼女だったものはそこまで重くはないのだが、玄関までの距離が短いことは救いだった。やはりというか、外は寒い。まるで外気までもが私を急かしているような、そんな気さえする突き刺さるような冷気を肌で感じながら、玄関を出て時間をかけて施錠をする。一目の少ない場所に位置する幽霊アパートだが、念には念を入れておきたい。だが、そんなものは建前で本当は、いつもの癖なのかもしれない。こんな重いものも担いでいる中、立て付けの悪い扉を、さらに冷たくなりつつある手を用いて、手間を要す扉の鍵を閉めるなんていうのは…………短い間だったが、私の帰る場所として毎日存在し続けてくれたことに対する礼儀から来た行動なのだろうか。こんなことに無駄に時を浪費してしまった自分に苦笑しつつ、ポケットから取り出したキーで玄関前に止めていた車のロックを解除する軽自動車の後部座席に寝袋を置いて運転席に移る。わざわざ、車内で全席へと移ったのは単純に寒いからだ。吐息も白煙になるような気温なのである。コート一枚あった所で、ほとんど意味をなさないだろう。


「横着とも、言えなくはないが……」


何事もなく車を発進させて数十分。永遠なのではないかと、錯覚すら覚える田園が続いている。私が選んだ土地なのに、だ。


「なあ、私はこれ以上はないってくらい良い条件下で君を殺したんじゃないか」


帰って来るのはただ、沈黙。それもそのはずだ。ただ一人の同乗者は亡骸と化しているのだから。遥か遠くに見える光が人が住んでいることを知らしめてくれる。この辺りは街頭さえも少なく、暗黒に満ちた、そういう道なのだ。それでも答えのない彼女に話しかけてしまうのは、アルコールが回っているからなのかもしれない。


暗さからか、はたまた一つの目的を終えたからか、まだ私の任務は終了していないのにも関わらず眠気が襲ってきた。睡魔に負けぬよう、必死にハンドルを握りしめるがなかなか手ごわい。昨夜の睡眠が足りていなかったのか、それともここに来る前に嗜んでしまったブランデーの影響か……


この後私は深く後悔することになる。


夢の世界との行き来をしていた私は愚かにも、対向車線から来る大型トラックに注意を払うことが出来なかった。こんな時間から居眠り運転をするなんて如何にも低能な輩だと悪態をついたがもう手遅れ。大きく車線を外れたトラックに対応することもできず、衝突。


「ああ」


死に間際に私は深く、深く後悔した。


どうして、玄関の鍵を閉めたのだと。何故、飲酒をしたのだと。殺人なんて上手く行きはしないじゃないか、と


最後にバックミラーに映ったのは満面の笑みを浮かべる男の顔だった。


_____________________________________


昨晩の午後11時頃、某所で乗用車と大型トラックの交通事故が発生しました。事故の原因はトラック運転手の過失によるものだと思われます。


救急車が到着して間もなく、乗車していた三名の死亡が確認されました。


追記


事故に遭ったうち一人の女性は、四肢を亡くした状態で確認されたため、更なる事件性が考えられます。現在、同乗していた男性の身元を調べていますが、女性と何らかのトラブルがあったと考えられます……


_____________________________________


私は最近、変な男に付け回されている。いい迷惑だ。あの男曰く、君とやり遂げなくてはならないことがある。らしいのだが、何の事だか身に覚えもない。


今日も町で歩いていると話しかけられた。思い出した。この男、私が勤めている店でやたらと注文を繰り返してきた奴だ。これ以上付きまとうと警察に連絡するときっぱり言ってやったので、少しは収まるだろう。


怖い。あの男が怖い。今日、あいつが私の部屋へやってきた。恐怖で動けない私にこう言い放って満足げに帰って行ったのだ


「何も危害を加えないから、着いて来てくれないか」


「それっきりにするよ」


と言ったのだ。急いで通報をして、警官に事情を話しても一週間程度で警護さえもやめられてしまった。私は恐怖で家を出ることさえ出来なかった。


案の定私の警護が無くなってから、男は毎日訪問してきた。何もせず、ただ何もしないというあの台詞を言いに来るのだ。


友達というものから無縁だった私にはもう頼れる人間はいない。両親の反対を押し切って上京しているため、こんな相談をしようものなら帰らなくてはならなくなってしまう。それは不味いのだ。小さい頃からの夢を叶える為にここにいるのに、あんな奴に邪魔をされたくない。


けれども流石に精神的な疲労感が蓄積して、とうとう話をしてしまった。


「何もしないという言葉が信用できると思っているの?」


玄関越しで男はしばしば考え込んだ内、こう言った。


「ナイフを渡すから、何か不審な動きがあれば刺せば良い」


その時の私はおかしかった。ナイフがあるなら平気だと錯覚してしまったのだ。


のこのこと男に言われるがまま乗車することになってしまったのだ………


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

未熟者故、お見苦しい部分があったと思いますが、読んで下さったことに深く感謝いたします。

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