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プロローグ 『あっ!?』

ファンタジー物書きます。

重厚なものは性格的に無理なんで、ライトファンタジーより。

プロローグ 『あっ!?』




 そこは不可思議な場所であった。

 天と地にどこまでも広がる雲海があり、その間には数多の銀河や星々が煌めく星海が存在していた。

 その情景を例えるとするならば、宇宙を雲でサンドイッチ状態である。


 そんな雲海に挟まれた宇宙の一角。

 地球に似た惑星から1つの光が零れ落ちた。

 広大な宇宙の中、その光はとても小さく、今にも消えさりそうなとても頼りない光である。

 その弱々しい光はフラフラしながら当て所もなく宇宙を漂った。


 どこへ向うのだろうか?

 人である我らには判らない。

 光は風に流されるかのようにただ飛んで行くのみだ。


 時間が過ぎる程その光の輝きは徐々に失われていく。

 光が消滅するのは時間であろう。




 その光の正体。

 光は、ある男の“魂”であった。




 男の死因は無差別爆弾テロによる爆死である。

 それも運の悪い事に、仕掛けられた爆弾のすぐ側を偶々通り掛かっただけ。

 爆弾の威力が凄まじかっため、遺体は原型を留めない程バラバラとなり、その“魂”は爆風に吹き飛ばされるかの如く、地球担当である“魂の管理者”の目に捕らわれるより早く、人が知覚出来ぬ超絶空間へと放り出されてしまった。

 ついでに“転生の輪”から外れてしまうという不幸っぷりである。


 果たして男の運命は如何に?




 ……




 どこまでも広がる雲海の一角に、光の巨人達が居た。

 巨人達は1つの星を囲むように佇み、時折会話をしては星になんらかの干渉を行っていた。


「やれやれ、2608年掛かって漸く人口が10億か」

「我らの元に至れる存在に進化する処か一部退化していますね」

「大地が変わる程の戦の後じゃ。建物は兎も角、社会や文化まで復興させるのも難しかろうて」


 光の巨人達は、神々であった。

 通常の科学力では観測出来ない超絶空間に暮らし、皆で産み育んだ星を見守っているのである。

 何故見守っているのかは神のみぞ知るであり、追求は避けよう。

 先程の会話から察するに、その星では過去に大戦が起こったらしく、人口が激減したようだ。

 そして、高度に成長した文明社会が壊れたのであろう。

 神々の発する言葉の中に落胆の響きが含まれるのは仕方ない事であった。


「さて、地上の者が我らの元に至れるまで後何千年かかるか……」


 ある神がそう問いかけた時、消えそうな光がフラリフラリと流れてやって来た。


「おや?」


 神の一柱が、羽虫を捕らえるかのようにそれを捕まえる。


「どうした?」

「珍しい。人間の魂だ」


 光を捕まえた神の手の中に、辛うじて人型を保っている魂があった。

 先程の男の魂である。


「どこの“世界”から流れて来たのかしらぁ~?」

「あそこでしょう? 確か“地球”だったと思うわ」


 吊り天秤を片手に持つ女神が、魂の流れて来た場所を指差し答えた。


「我らの管理する“世界”の外から来た者よ。汝の名は?」

「……」


 槍を携えた力の強そうな神が男へと問う。

 しかし、男は答える事が出来ない程弱っており、無言で無反応である。

 神が住まうような超常の世界に放り出されたためか、男の魂はただ存在するだけで消耗してしまうらしく、今にも消え去りそうであった。


「ふむ。言葉処か己が姿も思い出せぬ程傷ついておるの」

「哀れな」

「放っておけ」


 話し掛けても消えそうな存在に対し、哀れむ神とそうでない神の言葉が出る。


「我らの世界に落としてはどうでしょう?」


 分厚い書を脇に抱えた知的そうな神が、星を指差しそう言った。


「しかし、こう傷ついていては“転生の輪”にも加われぬわ」

「確かに……。あら?」


 おぼろげな男の魂が何かを所持している事に、一柱の神が気付く。


「思い出の品か。どれ」


 男の魂から白い何かが離れ、神々はそれを覗き込んだ。

 神々の大きさに対し、それは塵にも等しいサイズであったが、神々の目に物の大きさは関係なかった。


「紙だわ」

「綺麗に加工されてる紙ねぇ。真っ白だわぁ」

「うむ、紙だ。何か書いてあるぞ」

「絵姿と文字のようですね」


 男の持ち物は二つ折りにされた1枚の紙であった。

 魂だけになっても忘れまいとしたのであろうか。

 その紙に強い思い入れがあり、おそらく消えずに残ったのだろう。

 

「なるほど、私には判りました」


 知的そうな神が、紙を指差し自信満々で口を開く。


「履歴書ですね」


「「「おぉ~っ。流石知識を司るだけはある」」」


 知識を司る神を皆が賞賛した。


「履歴書があるのならば、これに記された事柄を“言霊”へと変え、それを用いて消耗した魂を補えば解決です」

「素晴らしい」

「流石だわ」


「「「では早速行おう」」」


 知識を司る神の案を受け、神々が1枚の紙に神力を送る。

 すると、紙に書かれていたものから光の粒子が次々と浮かび上がり、それぞれが絡み、纏まり、やがて1つ光の玉となった。

 生まれた光の玉は、消えかかった男の魂へと飛び、融合する。

 おぼろげで靄のような男の魂に変化が表れた。

 色が浮かび上がり、生前の姿であろう姿形がはっきりと浮かび上がったのだ。


「「「成功だ」」」


 人間らしい姿を取り戻した魂を見て、神々は喜んだ。

 しかし、神々の領域に存在するだけで魂に負担が掛かるのであろう。

 爪や髪の毛等の末端から光の粒子になり“無”へとなっていくのである。

 このままでは、先程の状態より保つであろうが何れ消滅は免れない。


「いかんいかん。このままでは消滅してしまう」

「ならば、すぐにでも送りましょう」

「それがよかろう」

「さあ、外から来た者よ。我らの“世界”で新たな生を過ごすがいい」

「徳を積み、己を高めよ」

「何時か我らの元に至れるよう努める事を願います」


 復活した男の魂がまた消耗する前に、神々は自らが管理する“世界”へ男の魂を流した。

 “世界”を満たす命の流れに、男の魂は溶け込んだ。


「“転生の輪”に上手く組み込まれたようです」


 流れを読む事に長けた神がそう発言すると、多くの神はうむと頷いて答え、“世界”を見守る仕事に戻ろうとした。


 ある女神が、好奇心からふと呟く。


「履歴書には何と書かれたのでしょう?」




「ふふふっ、任せたまえ。うりゃっ!!」


 えいやっと神力を使い異世界の履歴書の解読をする知識を司る神。

 人類が知覚できるとしたら凄いドヤ顔をしているに違いない。


 “世界”を見守る仕事をしながら、他の神々も好奇心が刺激されたのか、翻訳された内容を覗き見しだす。


「「「どれどれ」」」


「えっと……。ザ・シャドウソード・ファンタジーRPG用ボスデータ?」


「「「…………」」」


「まっ、待て。もう一度確認しよう」


「「「レベル3~5対応シナリオ『堕ちた導師』。ボスキャラ用キャラクターシートぉぉぉっ!!!?」」」



 その内容に神々は絶叫した。

 翻訳した知識を司る神は口元が引きつって脂汗ダラダラ状態となった。


 異世界の履歴書は、履歴書ではなかったのだ。


 それはテーブルトークRPGのキャラクターシートであった。

 しかも、気合の入ったイラスト付きの敵キャラのデータが記載されたキャラクターシートである。


 まあ、ゲームキャラの履歴書であり、一応履歴書であってはいるのだが……。




「「「なにやってんだ、お前っ!」」」


「ちょっ! しかもこれ、魔法使えるキャラじゃねぇか!?」

「本当の魔法使いがほとんどいない“世界”の住人に、魔法の力を与えるとか大失態よっ!!」

「しかもボスキャラのデータを普通の人間に上書きするとか、アホかっ!?」

「威力は判断つかないけど、魔法力消費無しの射撃タイプ攻撃魔法を1つ装備してますよ、これっ!」


「2608年前の大災厄に匹敵する能力じゃないだろうな? もし、そんな強大な力を一個人に与えたとなると……」


「「「大問題だっ!」」」


「どうすんだ、この馬鹿っ!!」

「内に篭って研究ばっかしてるから常識が抜けてるのよ知識を司る神(自称)っ!」

「格好つけてドヤ顔してんじゃねぇぞカスッ!」

「このウッカリ野郎がっ!」

「あらあら~、お馬鹿さんったらお馬鹿さんっ」


 神々は一斉に知識を司る神にツッコんだ。

 知識を司る神はタジタジになった。

 そして、なんとか誤魔化そうと翻訳された内容を急いで確認する。


「だ、大丈夫です皆さん」


「「「あんっ!?」」」


「ここです。ここ。ここを見て下さい」


 キャラクターシートのデータに記載されているレベルを指差す知識を司る神。


「レベル7って書いてあります」


「「「それがどうした?」」」


「ほっ、ほらっ。え~っとアレです。天秤の女神が今やってるRPGの自キャラってレベルいくつですか?」

「えっ? 最近カンストしてレベル300だけど……」

「戦神が先月終らせたシュミレーションRPGの主人公のレベルは?」

「は? 38だったかな? 確か50が最高レベルだが……」

「大地母神がやってる牧場経営ネットゲームの自キャラはどうです?」

「ん~っ、251でぇ~、後4つ上げたらぁ成長ストップしちゃうかしらぁ~」


「レベル一桁のキャラが、最強生物である“竜”や多くの人材に支えられた“国”をどうこう出来ると思いますか?」


 知識を司る神は誤魔化しにかかった。

 コンピュータゲームなら、レベル3桁超えはよくあるため、一桁なら多少強いだけの駆け出しレベルでしかないと、印象操作しているのである。

 まあ、古いテーブルトークRPGのシステムだとMAXレベルが10とかあるので、誤魔化し難いのだが……。


「「「なぁ~んだ」」」

「運が悪いと雑魚キャラに倒されるレベルなら問題ないか」

「そうね。ちょっと強い村人レベルよね」


 誤魔化される神々。

 それよりも神々がどんなゲームを普段遊んでいるか凄く気になるのだが、ツッコンではいけない。

 きっと人類では想像出来ない凄いものであろう。

 神の領域に踏み込んではいけないのだ。


「大丈夫です。問題ありませんよ、皆さん」


 見守る“世界”を指差し、知識を司る神は言葉を続ける。


「第一、“転生”する時に前世なんて普通忘れてるでしょう?」


「「「そういや、そうだ」」」


 よし、誤魔化せた。

 知識を司る神はこれ以上ボロが出ないうちに、証拠隠滅とばかりに翻訳された内容を消去し、最後に一つ発言して締めくくりにかかる。


「些細な事でしたね」


「「「確かに」」」


 一応納得した様子で“世界”を見守る仕事に戻る神々。

 こうして知識を司る神はホッと胸を撫で下ろしたのであった。




 ……




 しかし、知識を司る神はキャラクターシートの隅々まで確認しなかった所為で、ちょっとしたミスを犯していたようだ。


 キャラクターシートには、こんな事も記載されていた。


『前世の記憶を所持し転生する』


 と。


 きっと、使いまわす予定で作成された敵キャラだったのだろう。


ありがちですが、神様転生にしました。

一応、少しひねってみました。

誤字脱字等ありましたら報告戴けるとありがたいです。

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