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友達になろう

作者: 希凛

君の笑顔があったから、俺は失恋を断ち切ることができた。



それだけのはずだったのに。


小学校の同級生。

20歳の同窓会で再会した俺と君。



ケラケラとよく笑う君に、懐かしさを感じた。年に数回、会って飲んで、それだけの仲だった。



それがいつからだろう。


月に1度か2度はお酒を飲みに行くようになり、バーベキュー、花火大会、旅行やディズニーリゾートにも行くようになった。



6,7人の男女でつるんで、馬鹿みたいにはしゃいだ。





ちょうど大学を卒業して、社会人になったころ。

それは同時に、一目惚れをした彼女に振られたころだ。




失恋の傷は生乾きだったけど、みんなといるとそれを忘れることができた。


中でも、君の笑顔に何度助けられたかわからない。




いつでも、楽しそうに自分の思いに正直に生きているようなヒマワリのような君。


近くにいるだけで、ホッとして心が温かくなった。





そんな君が、彼氏をつくった。

一つ年下の優しそうな彼氏。





”遅かった”


チクリと胸に痛みが走る。






いつも隣で一番近くで当たり前のように笑っていた君が、手の届かないところに行ってしまう。



何度もなんども告白され、その根気に負けて付き合ったらしいその彼氏は、君の隣で幸せそうに笑っていた。







失恋を断ち切ることができたのは、君のおかげなのに。




君のその無邪気な笑顔に、新たな失恋を知った。





気付かなかった。


ずっと、一番近くで笑っていてくれるような気がしていた。





「おめでとう」


そう笑う俺に、


「おめでたくはないよ、なんか」




そう、いつもの調子で返してくる君。


つかみどころのない調子で、周りを翻弄させる。







彼氏はできたけど、みんなとの集まりを何より最優先する君。


旅行も、花火大会も、いつも一番近くに君がいる。無邪気に笑ってる。




お酒が好きなくせに、すぐ酔っ払う君の介抱係はいつも俺。


旅行先の夜、そっと君の横顔を携帯のカメラに収めたのは、小さな悪あがき。

キスしなかっただけ、ありがたく思ってほしい。





会える日を待つよりも、会えない日々を数えてしまう自分に嫌気がさして、何年かぶりの合コンに出向いた。


いくつかの合コンに行くけど、結局は君の代わりを探している自分がいる。





伝えることは許されない気持ち。


伝えた先は、誰も幸せになれないこの感情。






いくつめかの合コンで、君にそっくりな人を見つけた。


ケラケラとよく笑って、たまに不思議なことを言う。





「今度、ふたりで会いませんか?」



自然と口が動く。










その出会いから数週間後、君は俺の変化に気付いた。


「なんか、いいことあった?」




顔を覗き込むように、聞いてくる君。

心臓の鼓動を気のせいにして、そっけなく答える。




「べつに、なにも」





そう、と少し寂しそうに君は答える。




そんな君の表情に傷つきそうになるけど、俺はもう揺るがない。

揺るがずに、君への思いを静かに押し殺し、封印する。





それがどんなに、過酷なことなのなを薄々と感じながらも、君の淋しげな目の色を感じなかったふりをして。



君の口癖は自然と俺にうつっていた。


君と俺の好きなガムが同じ銘柄の同じ色だった。


同じ血液型で、気付いたら声を重ねて同じことを口走っている。


テンパると主語がなくなるくせまで同じ。



小さな共通点が、俺のちょっとした日常生活に紛れ込んでいる。




けれど、新しい出会いを胸に、心の中のきみにサヨナラを告げる。




友達に戻らなければ。





愛してるが故に、この想いは身体の奥の奥の奥へ飲み込んでもう吐き出さない。













君が彼氏と別れたことを知ったのは、俺に君そっくりの彼女ができてから3日後のことだった。


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